第478話 災害級???

ドロテア様の魔法障壁を全て破壊した光の奔流は、そのまま背後の壁に当たるかと思われたが、その直前に、きれいサッパリ消失してしまった。


「おぉ? これは……?」


ドロテア様が少年を見ると、少年が答えた。


「俺も少しは賢くなったのさ」


(※リューは魔法を放つと同時に、壁の手前でその魔力を分解するようにしたのである。)


「なんだ、じゃぁ障壁を張る必要なかったな。しかし、久々に見たな、波動砲」


「覚えてたのか、その名前…」


ドロテア様が楽しそうに言うと、少年もなんだか照れたように少しニヤけていた。なんなのよ、どういう関係なのよこの二人は?


「よし、次は攻守交代だな。今度はリューが魔法障壁を張ってくれ、私が攻撃する」


私は慌てて少年に尋ねた。


「あなた、魔法障壁は張れる?」


「ああ、問題ない」


あっさりそう言うと、少年は自身の前に魔法の壁を作り出した。


「ちょっと! ドロテア様がやったように、的に障壁を張りなさいよ! 自分の前に張って、攻撃魔法を受けて破れてしまったら洒落にならないことになるわよ?」


「問題ない」


「絶対に破られない自信があるというわけか……まぁ、私も残念ながら、破れるとは思っていないんだがな」


「そんな…」


よく見れば、その魔法障壁は不思議な感じがした。魔力が感じられないのだ。いや、しばらく見ていて私はそれが間違いである事に気づいた。魔力が感じられないのは、少ないからじゃない……あまりに巨大過ぎて、感じ取ることができなかったのだ。


それを理解した上でその障壁を見ると、大地を、あるいはまるで、どこまでも続く空を相手にしているかのような錯覚さえ感じた。


「じゃぁやるか」


ドロテア様が、いきなり手加減なしの魔法攻撃をその少年に向かって放ち始めた。


ドロテア様と言えば魔法障壁が有名だが、攻撃魔法だって国内トップクラスである。そんな人物が手加減なしで強力な魔法を打ち込んだら、ただでは済まない…はずなのだが、その攻撃にも少年の魔法障壁は揺らぎもしないのであった。


「フウワ、お前もれ。二人がかりで行くぞ!」


「はっ、はい」


ドロテア様に言われて、私も慌てて攻撃魔法を少年に向かって撃ち始める。


生徒に向かって全力の攻撃魔法など撃つ機会はない。正直、最初はおっかなびっくりであったが、少年の障壁が揺るがないのを見て、私もどんどん魔力を強めていった。


どれくらい時間が経ったろうか……5分か、一時間か、時間の感覚が分からなくなるほど全力で魔法を使ったが、ついに私の魔力は底をついてしまった。


見れば、少年は障壁の向こうで横になってアクビをしているではないか。


ドロテア様はさすが、まだまだ魔力が枯渇する様子はなさそうだったが、私が膝をついて攻撃をやめたのを見て攻撃を止めた。


「ははは、二人がかりでもまったく揺らぎすらしないか。さすが、魔道士ランクSS認定者だな」


※以前、魔道士ランクSをドロテアによって認定されたリューであったが、その後、SSへランクアップ認定されたのだ。


「え? えす?」


「ああそうだぞ。リューは国内で唯一のSSランク認定者だ」


「あの、ドロテア様と同じ、Sランクということですか?」


「違うぞ。私はS、リューはそのもう一つ上のSSだ。“災害級” ってやつだな。本当はSSS(神祟級)じゃないかと疑っているのだが、それ以上は誰も認定できる者が居ないのでな」


「災害級……」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


「次は模擬戦だ! 先手は譲ってやる、掛かってこい!」

「では遠慮なく」


乞うご期待!



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