第477話 ドロテア参戦
「アナタ! いい加減な事言うんじゃないわよ! ドロテア様とは昔会った事があるけど、あの方の魔力量は尋常じゃなかった、私達凡人と比較できるレベルじゃない、神よ神! ドロテア様の全属性対応の “絶対障壁” は難攻不落、“不滅の要塞” とまで呼ばれてるのよ? そのドロテア様の魔法障壁が、破壊できるわけないじゃない!」
「実際にできたんだから仕方がないさ。上には上、この世の中には絶対なんて存在しないだろう?」
「……あなたね。さっきから嘘ばっかり言って。どうやら相当な大ボラ吹きのようね」
「俺がいつ嘘を言った? 魔法だって今、目の前で使ってみせたろう? 全属性だって見せた通りだ。嘘など言ってないと思うが?」
「それは……確かに、そうだけど……でもドロテア様の魔法障壁が破られたなんて、信じられない。手加減してもらったとかじゃないの?」
「じゃぁ本人に確かめてみたらいいじゃないか?」
そう言うと少年は通信用の魔道具を取り出して誰かを呼び出し始めた。
貴重な通信用魔道具を個人で持っているなんて、やはり相当甘やかされた貴族の子供なのだなと思ってみていると、通信が繋がって誰かと話していた少年は、おもむろに通信機を私に向かって差し出してきた。私に直接話せと言うのだ。しかも相手はなんと、ドロテア様だと言うではないか。
……まったく。
宮廷魔道士長であるドロテア様は超絶忙しいと聞く。いちいちこんな事で、簡単に話ができたら苦労はしないというのに……
一体誰を呼び出したのやら。
「もしもし? どちら様? ドロテア様を騙るとか犯罪ですよ? はい…? …え? 本物? そんな馬鹿な……
…でも言われてみれば、その声は確かに……どっどっどっドロテア様!? おっ、お久しぶりです! 私、フウワです!
っていやいやいや。本当にドロテア様ですか? 声だけそっくりさんじゃなくて? いや、でも、声だけでは本物かどうか……
え、リューに代われ? 今からそっちに行く? え、ドロテア様、今どこに……」
通信機の向こうでドロテアと名乗る女性が、今からここに来ると言い出した。もしかして近くに居たのだろうか? 少年に通信を代わると、なにやら話したあと、突然床に魔法陣が浮かび、人影が浮かび上がった。
そして現れた人物を見て、私は驚愕を隠せない。
「久しぶりだな、フウワ」
「ドッどロッてア様!? ほっほっほっ本物~~~~!」
「だからそうだと言ってるだろう…?
…リュー、久しぶりだな!」
「久しぶり、というほどでもない気もするが。わざわざ来てもらって済まなかったな、忙しかったんじゃないのか?」
「いや、ちょうど息抜きしたいと思っていたところだったのでな、仕事はガーメリアに任せて逃げ出してきた」
「はは、目に浮かぶな」
「あの……お二人は、お知り合いなんですか?」
「ああ、リューは私の親友だぞ! な、リュー?」
「親友になった覚えはないが……まぁ知り合いではある」
「冷たいなぁ、なんなら恋人でもいいんだぞ?」
「いやいやないから。そんな事言ってるとエド王が悲しむぞ?」
「エドに聞いているぞ、ユキーデス伯爵の依頼……もとい “
「ああ。だが、試験はなしって聞いてたんだが、来てみたら試験に合格しないと入学させてくれないって言われてな。今受けさせられているところだ」
「リューを試験て、チャレンジャーだなフウワ。訓練場を壊されるぞ」
「え?」
「このリュージーンの実力は私が保証する、試験は不用でよいと思うぞ?」
「そっ……それは……」
「どうした? リューは私でも叶わないほどの魔法を使う。私の魔法障壁も彼の前では紙屑みたいなもんだ」
「そっ、そこまでですか? ……ドロテア様がそう言うのなら……
……いえ、やはり…それはできません!」
「?」
「たとえドロテア様の推薦があっても、貴族のコネで無試験入学を許すという前例を作ってはいけないと思うのです!」
「堅いこと言うなぁ、推薦で入学なんて昔からよくある事だったはずだが?」
「いえ、ですから、今後はそのような事はなくしていこうという、改革の真っ最中なのです。これは私の信念なので、譲れません」
「そうか、まぁそうまで言うなら試してみればいい。リューなら絶対合格するだろうしな。私も見学させてもらおう、というか手伝ってやろう、フウワだけではリューの相手は荷が重すぎるだろう」
「え」
「さて、どうする? 私が作った魔法障壁をリューに壊してみせてもらうか? 私も少しはレベルを上げたんだぞ?」
「いえ、攻撃魔法が使えるのは確認できましたので……。あでも、ドロテア様のレベルアップした絶対防壁を見てみたいので、もう一度やってもらいましょうか。いいわね、リュージーン?」
別に構わんぞと少年が言う。
ドロテア様はニヤッと笑い、的に近づいて、的を覆うように魔法障壁を張った。それも何重にも重ねて。さらに、的の後ろにも何重にも障壁を張っていく。
「あの、ドロテア様、何を……?」
「ああ、リューに壁を壊されないようにと思ってな。的を破壊されたあと、勢い余って背後の壁までぶち壊してしまうんだよ、いつも」
「いつも?」
「いつもじゃないが……まぁ、ご期待に答えて派手にやってみせようか?」
少年はそう言うと、手を的に向けた。
慌ててドロテア様が壁際に退避する。私もついていく。
少年の手に、突然膨大な魔力が溢れ出す。まるで何もない空中から突然大瀑布が流れ出てきたかのように。
そして、手から何かが発射された。一瞬、何だかよく分からなかったが、どうやら火属性の魔法を放ったようである。通常は球状にコントロールするものなのだが、力任せに放射し続けているようだ。その輝きは非常に強く、炎というより光の柱のようにも見えた。
少年が力任せに放った炎の奔流、それは的の前に張ったドロテア様の障壁をあれよあれよと破壊してしまった。
私は目が点になってしまった。(炎が眩しかったのもあるが)
光の奔流はそのままドロテア様が的の背後に何重にも張った魔法障壁をも次々と破壊していく。
「あ、まずい……」
ドロテア様が呟いたのが聞こえた。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
その魔力はまるで、どこまでも続く濃紺の空のようでした
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます