第466話 おや、こんなところに首輪が落ちていましたよ?

転移でマロンを攫った時、当然首輪付きのままの状態であった。


高そうな宝石がついていたので、ジルには首輪を外してマロンを返した。


首輪は後で屋敷の中のどこかに返しておくつもりだったのだが、その場ですぐにやってしまえばよかったものを、後回しにしたために、そのまま忘れてしまったのだ。


まさか「その首輪は自分が持っています」と言い出すわけにもいかない。


そこでリューは一計を案じた。


リュー 「それでは、何か手がかりがあるかも知れませんから、猫を入れていた部屋を見せて頂けませんか?」


そして、猫を閉じ込めていた? 部屋に入ったリューは、部屋の中をあちこち探すフリをしながら、ソファの下に落ちてたのを発見したかのように、首輪を取り出した。


リュー 「おや、こんなところに首輪が落ちていましたよ?」


それを見たライーダは、慌ててリューからそれをひったくるように取り上げる。


ライーダ 「あった! よかった……」


すると、リューのほうを見もせずに、ライーダはしっしっと手を振りながら言った。


ライーダ 「…ああ、やっぱりもういいわ。別に、あの猫じゃなくてもいい気がしてきたから。それに、この、探偵? とかいう奴、なんだか無能そうだから、猫を発見できないと思うわ。やっぱり依頼はやめましょう」


伯爵 「……ライーダ? もしかして、探してほしかったのは猫じゃなくて、その首輪だったのかい?」


ライーダ 「…っ、だって、その、高い宝石がついていたから…伯爵に怒られると思って。まさかソファの下に落ちていたなんて……」


伯爵 「猫が逃げ出す時に落としていったのかもしれないね」


ライーダ 「でも、これでそこの探偵とやらに余計なお金を払わなくて済んだわね」


リュー (タダ働きか。ってまぁすぐ返さなかった俺が悪いのだから仕方ないか…)


伯爵 「それはないだろう。彼だって生活が掛かっているのだ。わざわざ伯爵家の都合で呼び出しておいて、手ぶらで帰すわけにも行かないだろう」


ライーダ 「だって、まだ調査に行ってもいないじゃない。家の中で見つかったのだから、払う必要ないでしょ?」


伯爵 「彼はもう既に仕事を受けて、調査を開始していたのだ。場所がまだ屋敷の中だったからと言って、タダ働きはさせられないよ。


君、済まなかったね。ちゃんと規定の依頼料は払うから安心してくれ」


リュー 「そうして頂ければ助かります。まぁ、最低料金分でいいですよ、調査に掛かった日数で料金が変わるシステムなので。調査は一日で済んでしまいましたから、一日分でいいです」


まだライーダは不満そうだったが、伯爵の指示で執事が持ってきた金を受け取ってリューは帰っていった。




  * * * * *




執事 「旦那様、差し出がましいことを申しますが、あの者、信用しないほうがよろしいかと…。


あの部屋は、当家のメイドが完璧に清掃してありました。椅子の下もです。首輪が落ちているなど、ありえません……」


伯爵 「……分かっている」


執事 「だいたいあの態度! 伯爵が鷹揚な方である事をいいことに、無礼な物言い目に余ります」


伯爵 「それは、呪いだそうだからしょうがないだろう?」


執事 「本当にそんな呪いがあると伯爵はお考えですか?」


伯爵 「さぁな? 私は信じると決めた。そういう事だ」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


伯爵から新たな依頼。

…次は浮気調査?


乞うご期待!



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