第415話 予期せぬ再会

リュー 「ほう、脅すのか?」 (ニヤリ)


ランスロット 「たかがギルドマスター程度の立場で王族ですら頭を垂れるリューサマに対して喧嘩を売るなど、随分と勇気がある方ですねぇ?」


G 「え? 王族が…?」


ランスロット「どうなるか分かっているのでしょうか…?」


権力を笠に着て理不尽なことを強要してくる奴が何より嫌いなリューである。それを感じ取っているのか、ランスロットが禍々しい威圧感をちょっと解放してGに圧を掛け始めた。


G 「…ふぐっ!」


圧を受けて硬直し脂汗がドッと出始めるG。


リズ 「ちょ、まずいですよマスター! 相手はSランクですよ?! 飛ばされるくらいで済めばいいほうで、下手したら命がなくなるかも知れませんよ?!」


G 「う、む…無理言ってスマンカッタ! 謝る! この通り、どうか許してくれ!」


いきなり腰を90度曲げて頭を下げたGに、顔を見合わせるリューとランスロット。


リュー 「アッサリ折れたな」


リズ 「そういう人なんです…、自分の身が危うくなりそうな事には敏感で変わり身が速い」


G 「本気じゃなかったんです、ちょっと言ってみただけ、Sランクだって事、ちょっと忘れチャッテたダケデシテ…」


ギルマスごときが偉そうにしてスンマセンと卑屈に揉み手しながら上目遣いで後退っていくGにジト目嘆息のリュー。


さすがにこう卑屈に謝られると、たったひとこと言われたくらいでちのめすのは、リューのほうが気が短過ぎると言われてしまいかねない。なるほど、この男はこうやって生き残ってきたんだろうなぁと思うリューであった。


リュー 「はぁ…。まぁいいだろう。ノーマルのマンドラゴラは買い取ってもらえるか?」


リューはディスマンに向かってそう言うと、既に並べてあったマンドラゴラを指し示した。


ディスマン 「ああ…って、普通種もこんなにか。一体見つけるだけでも超レアなのに…しかし “モドキ” にも見えないな」


リュー 「モドキなんてあるのか?」


ディスマン 「ああ、根菜で似た形状になるやつがあるんだよ。それも栄養価は高いから、野菜としてはそこそこ高値で取引されるんだがな…」


そう言いながら、ディスマンはマンドラゴラを鑑定し始めた。


ディスマン 「…全部本物だ。どうやってこんなに見つけたんだ?」


リュー 「ああ、周囲の植物に擬態してたが、それを見破れるようになれば、結構あちこちに生えてたぞ?」


ディスマン 「擬態だと?! そんな話も初耳だぞ? 王都の研究者が聞いたら目を白黒させて驚きそうだな。しかし、二十三本か、ギルドに今ある現金で足りるかな…」


リュー 「悪いができるだけ現金で頼むぞ。ギルドの口座は信用できん」


リズ 「冒険者ギルドは世界規模の組織なので、預金口座は全世界共通で使える、潰れる事のない安心なシステムですよ?」


リュー 「ギルドが潰れなくても、ギルドから嫌がらせされる事はあるだろう、やたらと威張りたがる奴が多いしな?」


リズ 「う、それは…」


リューとリズに目を向けられてさらに小さくなるGであった。


ヴェラ 「あまり一気に多く出回ると値が下がるんじゃ?」


ディスマン 「いや、マンドラゴラはあらゆる街で欲しがる素材だからな、加工してしまえば腐りにくいし、このくらいなら大丈夫だろう。これが毎月だとさすがに値崩れしてくるかもしれんが」


リュー 「その気になれば毎月どころか毎日でも……って、マンドラゴラってどのくらいで生えるんだ?」


ヴェラ 「さぁ? 一応ダンジョンの魔物だから、時間が経てばリポップするんじゃない? …成長するのに少しは時間が掛かるのかしらね?」


リュー 「そのへんは、ダンジョンの “設定” にもよるのかもな…


…あれ、もしかして、自分の管理ダンジョンでマンドラゴラを作るようにすれば、いくらでも収穫できるんじゃ?」


ディスマン 「自分のダンジョン?」


リュー 「ああ、俺は過去に3つほどダンジョンを踏破している。うち二つは俺の管理ダンジョンになっている」


(※リューが踏破したダンジョンは、ミムルの街の近くにあった「地竜巣窟」、バイマークの街の近くにあった「ワイラゴ」、ロンダリアにあった「不死王城」。ただし、不死王城の管理者は不死王のままなので、リューが所有しているのは二箇所だけである。)


G (三つも……Sランク、化け物なんだな、やっぱり…)


ヴェラ 「そう言えば、自分のダンジョンでもないのに、狩り尽くしてしまって大丈夫なの?」


リュー 「最初に確認したよな、ルール的にはどれだけ狩ろうと制限はないはずだろう? だが、他の冒険者がダンジョンに入った時、獲物が居ないと困るか。まぁ、二日も待てば、また魔物は出てくるだろ」


G 「ああ、それは大丈夫だ。スタンピードの兆候という事で、ダンジョンは立入禁止にしてあるからな」


隅に行って小さくなっていたGであったが、スタンピードの事を思い出した事で、急にギルドマスターとしての責任感が湧き上がって復活してきたのだった。


ジト目のランスロットを意識しながらも、Gが続ける。


G 「しばらくは様子を見る必要があるだろう、魔物が下の階層から上がってくるかも知れないしな……スタンピードの時に浅層階の魔物だけを狩り尽くしてしまったなんて記録は過去にないはずだからな、その後どうなるかは、正直、分からんのだ」


その時、受付の職員ポリーがやってきてGに声を掛けた。


ポリー 「あの、お客様が見えているのですが…」


G 「誰だ?」


『マスター、スタンピードだって?!』


ポリーが答える前に、勝手に入ってきたその “客” は……


G 「ハンスじゃないか」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


生きてたのかミィ?!


乞うご期待!



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