第416話 再会、ミィとハンス

G 「隣町に視察に行ってたんじゃなかったのか?」


ハンス 「知らせを聞いて、私だけ戻ってきたんだ。代官は緊急の用件だとかで領主様に呼ばれたので王都に向かった。スタンピードの対応に関しては上手く計らえとさ」


ミィ 「……ハンス……」


ハンス 「それで状きょ…うは……


…そんな……信じられない。ミィ? ミィなのか?!


まさか……生きていたのか?!」


ミィ 「え…ええ……ひさしぶりね、ハンス。元気そうで、何より…」


ハンス 「本当にミィなのか?! ダンジョンで、死んだって、聞いたのに…


一体今までどうしていたんだ?!」


ミィ 「まぁ、その…、色々あったのよ…」


ハンス 「色々って……どれだけ心配したと思ってるんだ!」


ミィ 「ハンス……


…デボラと結婚したそうね? 子供もいるとか? あなたが幸せそうでよかった」


ハンス 「いや、それは、その…、君は死んだって聞いてたから……その、そうだ、それよりスタンピードをなんとかしなくちゃ…G、すぐにダンジョンを閉鎖しよう!」


G 「それはとっくにやってる」


ハンス 「じゃぁ、街の防御体制を固めないと!」


G 「ああ、いや、それがな、ハンス……」


ハンス 「騎士団と冒険者達で力を合わせて魔物襲撃に備えを!」


G 「いや、その件は、スタンピードは、すぐに起きる可能性は低くなったんだ」


ハンス 「…何を言ってるんだ? スタンピードの報告は間違いだったとか?」


G 「いや、そうではない。確かに兆候はあった。一階層に入ってすぐに万単位の魔物が居たと多くの冒険者が証言している」


ハンス 「それなのに、危険はなくなったとは?」


G 「たまたま、Sランクの冒険者パーティが街に滞在していてな、たまたま、そのパーティがスタンピードの兆候が報告と入れ違いで、ダンジョンに入ったんだよ。そして、万単位の魔物をすべて屠ってしまったんだ……」


ハンス 「そんな事が……その、まぁ、収まったのなら良かったが……。


その、Sランク冒険者というのは?」


G 「ここに居るのが、そのSランク冒険者パーティ、ホネホネ団だ。リーダーのリュージーンと…ミィと…(なんだっけ?)…その仲間達だ」


ランスロット 「ランスロットです」


ヴェラ 「ヴェラよ」


ハンス 「ミィも? Sランクになったのか?」


ミィ 「私は違うわ。たまたまパーティに縁があって仲間に入れてもらっただけ…」


G 「ミィは違法奴隷にされていたのを、彼らに助けられたんだそうだ」


無神経にも、ミィが奴隷であった事をハンスに話してしまうG。ミィがGを睨むが、後の祭りである。


ハンス 「違法奴隷?!」


驚いてミィを見るハンス。


その視線に、ミィは思わず目を逸らした。


奴隷であっても通常は性的な行為を提供するかどうかは選択できるが、違法奴隷と聞けば、当然ハンスもミィがそのような行為をされていたと想像するだろう。


G 「少し前、王都で騒ぎがあったろう、奴隷ギルドのマスターが逮捕された。その時に、ミィはSランクの冒険者に助けられ解放されたらしい」


ハンス 「そうか……奴隷になっていたのか、道理で連絡もなかったわけだな。しかし、なんで奴隷なんかに……?」


ヴェラ 「あんまり人の事情にズケズケ突っ込むもんじゃないのでは?」


ミィ 「いえ、いいです。ハンスとは、知らない仲じゃ、ないですし…。知っておいてもらったほうが」


ハンス 「……一体何があったんだ?」


慌てて帰ってきたハンスであったが、スタンピードの危険性がなくなったのなら、急ぎの仕事もない。久しぶりに再会したミィとは積もる話もあるだろうという事で、場所を移して食事しながらゆっくり話す事になったのであった。


ハンスはミィと二人だけで話したかったようだが、ミィが嫌がったため、リューとヴェラもなぜか付き合わされる事になってしまった。


実はミィは、既に家庭を築いているハンスの幸せを壊す気はなかったので、ハンスとはもう会わないつもりであった。だが、会ってしまったからには、ハンスのほうが話をちゃんとするまでは引き下がらない。


ハンス 「で、何があったんだ? 一体どうして奴隷なんかに?」


ミィ 「あの日……ダンジョン三階層のボス部屋に入ってね。ボスモンスターと戦って、なんとか斃したんだけど、その時大怪我を負ってしまってね。その怪我の治療費で借金を負って、その返済のために奴隷契約をさせられてしまったのよ」


ハンス 「そうだったのか……。


済まない、俺なんかのために…」


ミィ 「?」


ハンス 「デボラに聞いたよ、俺にプロポーズするために、ダンジョンにある宝石いしを取りに行ったんだろう?」


ミィ 「え? …いや、その、そう、だったかしら、ね…?」


ハンス 「惚けなくてもいいんだよ。そんなものなくても、俺は、ミィさえ居てくれればそれだけで良かったのに…」


ミィ 「そ、そうね……そうよね、馬鹿よね! 失敗して、仲間を死なせて、自分も大怪我をして…大した間抜けっぷりよね」


ハンス 「そうだよミィ…。こんな事は言いたくないが、お前のワガママの巻き添えで、ターラとミリンは死んだ事になる……それは反省すべきだ」


ミィ 「……そうね……」


ハンス 「そうね、じゃないだろう、ターラとミリンの家族に済まないと思わないのか?」


ヴェラ 「ちょっと、そんな言い方ないでしょ? 冒険者は基本、自己責任でしょ。ミィに騙されて連れて行かれたわけじゃなし。自分の判断で同行したはずよ? それに、ミィはずっと死んだ仲間に謝りたいって言ってた。この街に来てからも、仲間の家族を探そうとしてたのよ。…見つからなかったけど、ミィは教会で死んだ仲間のために祈っていたわ」


ハンス 「ああ、すまん、言い過ぎた。俺も原因の一つだ、俺がもっと早く、ちゃんとミィにプロポーズしていれば、そんな事にはならなかったんだからな…」


ミィ 「……」


ヴェラ 「……」


リュー 「……」


リュー 「…いいのか、ミィ? 言いたい事は、全部言ったほうが、後で後悔しないと思うぞ?」


じっとミィの目を見つめるリュー。


ミィ 「……言いたい事は、あります。それは……」


ミィはハンスの顔を見て言った。


ミィ 「…ハンス、結婚したんでしょう?」


ハンス 「え、いや、だからその、スマン。ミィは死んだものと思っていたから…」


ミィ 「いえ、謝らないで、違うの。いいのよそれは。言いたかったのは、ハンスが今幸せかどうか確認したかったの。幸せなのよね?」


微妙に頷くハンス。


ミィ 「…そう。 …ハンスが幸せなら、それで、私はいいの」


ハンス 「ミィ……」


ミィ 「……」


それ以上は何も語らないミィ。


ハンスがリューの顔を見るが、リューは肩を竦め、吐き捨てるように呟いた。


リュー 「本人が、それで十分だと言うのならそうなんだろ。俺から何も言う事はないさ…」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ハンスに真相をしゃべっちゃうリュー


乞うご期待!



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