第412話 シーラです

少女 「……誰?」


ヴェラ 「気がついたようね、私はヴェラ。通りすがりの冒険者よ。あなたはここで気を失って倒れてたのよ?」


少女 「…!」


慌てて周囲を見回す少女。


ヴェラはゆっくりと首を振る。


それを見て、少女はがっくりと肩を落とした。


ヴェラ 「残念だけど、仲間達は間に合わなかったようね」


シーラ 「そう、ですか……」


ヴェラ 「立てる?」


少女を伴い、リュー達は再び帰路につく。


ヴェラ 「あなた、お名前は?」


少女 「シーラです」


ヴェラ 「どうしてあんなところに? って愚問だったわね。冒険者ですものね、ダンジョン攻略に来てたのよね」


少女 「はい。仲間と一緒に。“大空の羽根” というパーティを組んでいたんです……私はお荷物みたいなものだったけど、他の仲間は、それなりに腕の立つパーティだったんですよ。でも、魔物が思った以上に多くて…」


ヴェラ 「お仲間は残念だったわね。けど、あなた一人だけでも生き残れたのは幸運だったわ。仲間のためにも、頑張って生きないとね」


ミィ 「あの……」


ヴェラ 「?」


少女を助け起こした時、少女の顔にミィは見覚えがある気がした。そして、意識を取り戻し目を開けたその印象的な目を見て、ミィは少女が誰に似ているのか、はっきりと思い出した。以前死んだ、仲間だったターラに似ているのだ。


ミィ 「シーラ…といったわね。あなた、ターラという冒険者を知っている?」


シーラ 「どうしてターラを?! ターラは私の姉です! 姉は今どこに?! ずっと連絡が途絶えていて、探していたんです!」


ヴェラ 「そうだったのね……」


ミィ 「ターラは……」


ミィは顔をそむけ黙ってしまったので、ヴェラが代わりに後を続けた。


ヴェラ 「ターラという冒険者は亡くなったそうよ…」


シーラ 「…! それは、いつですか?」


ヴェラ 「二年くらい前?」


ミィが頷く。


シーラ 「そうですか……私が冒険者になったのは一年前なんです。それで、姉を探してロームの街に行ったのですが、姉が見つからなくて……」


ミィ 「ターラが拠点にしてたのはライムラの街よ?」


シーラ 「! 道理で…。ロームの街で、そんな冒険者は居ないって言われて……」


※ロームはライムラの街の次の街である。ダンジョンはライムラの街とロームの街の中間にあり、ダンジョンにはライムラの街のほうが近いのだが、ロームの街からも行けないことはないので、ロームの街を拠点にしている冒険者も多いのであった。


ミィ 「そう言えば、ターラはロームの街から来たって言ってたような気がする…」


シーラ 「あなたは……?」


ミィ 「私はミィ、ターラとはパーティを組んでずっと一緒に活動していたの…」


シーラ 「そうだったんですね。それで……姉は? なんで死んだのですか?」


ミィ 「それは…、ダンジョン三階層の…ボスと戦って……」


シーラ 「ミノタウロスと戦ったんですか?」


ミィ 「ええ、ボスはなんとか斃したんだけど、そこで重症を負ってしまって。ターラは私をダンジョンから連れ出してくれたんだけど……」


ヴェラ 「そこで力尽きてしまったらしいわね。死体は回収されて、ライムラの教会の冒険者の共同墓地に埋葬されたそうよ」


シーラ 「そうだったんですか……」


ミィ 「ごめんなさい、私のせいで……」


シーラ 「……あなたのせいではないでしょう、冒険者だったのだから。自己責任ですよね。姉は、ミィさんを助けられて良かったと思ってると思いますよ…」


ミィ 「……」


その後は全員黙りこくったまま、ダンジョンを歩き続け、ほどなくして、一同はダンジョンの出入口に到達した。


(パーシヴァルとエヴァンスの二人は既に姿を消していた。二人は入場の記録もないので、ダンジョンから一緒に出るわけにもいかない。)


そして門が閉鎖されている事を知ったのであった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


いやなんか多いなとは思ったんだけど…


乞うご期待!



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