第391話 奴隷ギルドの暗部が子供達を襲う
リュー 「頼りの戦闘奴隷は誰も居なくなったようだが?」
気がつけば、生き残っているのはヒショーと先ほどリューに回復してもらったゼヒロだけであった。ヒショーはゼヒロのほうを見るが、ゼヒロは両手を上げて首を振って拒否。
ヒショー 「いっ……いやぁ、さすがでんなぁ、どうやら勝負はついたようでんな。いやぁ、さすが、さすが。
さすがやが…とは言え、こちらも
リュー 「だが、どうする?」
ヒショー 「こんな手は使いたくなかったんやが……あんさん、宿に残してきたお仲間がおるやろ?」
リュー 「まさか!」
ヴェラ 「レスターとアネットに?!」
ヒショー 「お察しの通り。宿の方にも戦力をむけとります。戦力を全部こっちに連れてきてしまったのは失敗でしたなぁ? 作戦というのは、常に二重三重の安全策をとっとくものでっせぇ」
ミィ 「どこまでも卑怯な奴らね…」
ヒショー 「ああ勘違いしないでおくんなはれ、私はただ、指示に従ってるだけなんで。文句は奴隷ギルドのランドマスター、キロイバ様にどうぞ。
まぁ、奴隷になってしまったら文句も言えんでしょうが。さぁ、この隷属の首輪を着けてもらいまひょか。逆らったら宿の子供の命がどうなるか…?」
ヴェラ 「卑怯よ!」
ヒショー 「すんまへんなぁ。けど、子供もすぐに殺しはしまへんから、安心しておくんなはれ。奴隷ギルド特製の遅効性の毒を盛るよう指示してあります。解毒剤は奴隷ギルドしか持っとらんヤツ。解毒剤が欲しかったら言うことを聞くしか無いっちゅーわけです」
リュー 「くっそー……汚いぞぉ~……」
ヒショー 「なんと言われようと、最後に笑ったもんが勝ちなんでっせぇ? 今頃子供達は毒の影響で苦しんどるかもしれまへんで? 素直にコレ嵌めて早く毒消しを手にいれたほうがえんちゃいますか?」
リューは渋々差し出された隷属の首輪を受け取る……
リュー 「なぁんてな」
リューは受け取った隷属の首輪をバキン!と圧し折って破壊してしまった。
ヒショー 「なんてことを! その首輪、一個作るのにいくらかかる思うてますのん! てか、子供の命が惜しくないんかーい!」
リュー 「子供達に護衛を付けずに来るわけないだろ?」
ヒショー 「…ええっと、ひぃ、ふぅ、みぃ、連絡があった主要なメンバーは全員こっちに来てるようですが……? それに、多少護衛を付けたところで、宿に送ったんは奴隷ギルドの暗部の人間や、暗殺を得意とする、正面から戦う事なく、姿を見せずに暗躍する部隊や。並の護衛程度では相手になりまへんで? 今頃きっと……」
ランスロット 「その暗部の人間達って言うのは、こいつらの事ですかな?」
突然、ヒショーの周囲に数体のスケルトン兵士が現れる。
ヒショー 「ひっ! すっスケルトン?!」
リュー 「慌てるな、言ったろう? スケルトン軍団は俺の従魔だ」
よく見れば、スケルトン達は手に人間の生首を持っている。
ヒショー 「まさか……全員殺られましたんか…」
生首 「ヒショーさまぁ~助けてください~」
ヒショー 「しっ、シャベッタ~!」
生首達は、首だけの状態なのに死んではいなかった。どうやら首から下はスケルトン達の亜空間に入れたままの状態のようだ。
ランスロット 「後で証言してもらう必要がありますので、生かしてありますが。どうやら、奴隷ギルドの人間ではないようですね?」
ヒショー 「そんな……絶対誰にも負けない、暗殺ギルドから借りた最強の暗殺部隊が、生きたまま捕らえられるなんて……」
・
・
・
実は、奴隷ギルドは、王都内の大きい宿にはほぼすべて、隠れ奴隷を従業員として忍び込ませてある。宿を利用する者は多いので、情報を取ったり何か仕掛けをするのに宿は大変都合が良いからである。だが、ゼッタークロス商会は高級宿である。従業員も身元の確かな者しか雇わないし、雇う際に入念な調査も行われるため、なかなか工作員を忍び込ませるのが難しいのであった。
とは言え、まったく不可能というわけでもなかった。
宿というのは、室内での
ゼッタークロス商会の宿にも、なんとしても工作員の隠れ奴隷を従業員として忍び込ませておきたい。
そこで、まずはゼッタークロス商会の経営者の屋敷の使用人に工作員を侵入させた。だがここも身元確認は厳しい。そのために、傀儡にしている貴族を使い、そこからの紹介という形で人間を送り込み、雇われた後に貴族から提供された情報をもとに弱みを握ってその使用人を後から奴隷化するのである。そうしてなんとかゼッタークロスの屋敷に工作員を送り込む事に成功したら、後はうまく手を回し、面接・調査に手を加えさせ、やっと、宿の従業員に工作員を侵入させる事ができるようになったのだった。
宿の工作員の手引で、暗殺部隊は宿の厨房に侵入し、調理人を全員眠らせ入れ替わり、料理に毒を仕込む計画だった。
だが、それらの動きは全て、宿の内部を警戒していたスケルトンに筒抜けであった。亜空間の中から、姿を見せずに宿のどこでも覗き見ることができるスケルトンに隠し事などできるわけがないのである。宿の中で不審な動きをしている者はすべて警備を担当しているエヴァンスに伝えられ、即座に全員捕らえられて終わりであった。
暗殺者達は当然、凄腕の者ばかりであったが、亜空間から直接攻撃を受けた経験はなく、手もなく捻られてしまったのであった……。
そして、亜空間内で “尋問” が行われた後、リュー達のところへ首だけ突き出された状態に至ったわけである。
・
・
・
リュー 「お前も同じ状態にしてやろうか?」
ヒショー 「ひっひゃだなぁ、私は命令されただけでして、あくまで指示に従ってるだけ。全責任はマスターに……」
ヒショー (くそっ、ここまで作戦がすべて通じないとは……)
ヒショー 「だが、まだ最後の奥の手が残っとります」
リュー 「?」
ヒショー 「おい、殺れ!」
いつのまにか、短剣を握ったリリィがリューの背後に回っていた。
リリィはそのまま腰を低くし、リューの背中に向かって体ごとぶつかるように短剣を突き刺す……
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
操り人形
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます