魔法王国編

第225話 魔法王国への入国審査

不死王「そうじゃの、攻撃魔法などのエネルギーに変換されてしまったものは無理じゃろうが、魔力の段階で吸い出してしまうのは可能じゃろう、相手に直接触れるか……いや至近距離に近づくだけで可能にできるな…


……ほれ、できたぞ。この仮面のスキルを使えば、近くに居る者の魔力を吸い出し、空気中に放出拡散してしまう事ができる。吸われた者は魔法が使えなくなるわけじゃ」


リュー「吸い取った魔力を再利用はできないのか? それができれば、装着者は自分の魔力を使わないで済む」


不死王「いや、それは可能ではあるが、あまりおすすめはしないの。


血に型がある事は知っておろうが、魔力もそれぞれの体質にあわせて質が異なっておるのじゃ。癖が違うんじゃな。同じ身体を共有していた母子などはともかく、他人の魔力を身体内部に吸い込んでしまうと違和感を感じたり、長期的には不具合が生じたりする可能性もあるじゃろうからの」


リュー「では、体内に入れずに、魔力を蓄積しておくタンクのようなモノはできないか? 魔力を貯めておいて、それを必要に応じて引き出して使えるような……」


不死王「そういう魔道具は既にある。こんなやつじゃな」


そう言って不死王が出してくれたのは、指輪・ペンダント、腕輪など、いずれも大きな宝石のついた装飾品であった。


不死王「魔力をこの石の中に蓄積できるようになっておる。魔石を動力に使う魔道具は多いが、それらの場合、魔石は魔力を放出し切ってしまうとただの石になってしまう。だがこれは魔力を再充填できるようになっておるのじゃ。


魔力の少ない者が、普段から自分の魔力をコツコツ蓄積しておき、必要になった時に一気に引き出して使ったりする事ができる。今の人間達の文明でもそれほど珍しいものではないが、これを外部から他人の魔力を吸い取る仮面と連携させれば、吸魔仮面のできあがりじゃな」


リュー「人から吸い取るだけでなく、空気中とか森の木々からとか、自然に魔力を集めて蓄積する事はできないか?」


不死王「そういう魔道具も既にある、が……言われてみれば、全部の機能を併せ持った魔道具はなかったかも知れんな。……ここを…こうして……ほれ、できたぞ」


不死王はいとも簡単に術式を改良して魔法陣を書き換えてしまう。


不死王「じゃが、リューには不要なモノではないか?」


リュー「いや、ヴェラが使えるかなと思ってな」


不死王「なるほど、あの娘か」


基本的にはリュー一人でなんでもできてしまうのだが、こういう道具はあればあったで使える局面もあるかも知れない。


それと、リューは普段使い用の仮面も要望して作ってもらった。仮面は二種類。ひとつは銀の仮面、もうひとつは黒い仮面であった。


これらの仮面の能力は【認識阻害】である。


まず銀仮面、これは、仮面を着けていてもその事に違和感を感じさせない、周囲の人間に一切気に留めさせないようにする効果がある。仮面を着けた状態が “素顔” と同じような感覚・認識になり、仮面の下の素顔には関心を抱かなくなるというものである。これを着けておけば、素顔を知られなくて済むというわけである。


黒仮面は、完全なる認識阻害効果である。これを着けると、空気のようにその存在を誰も気にしなくなってしまう。話し掛けたりすれば一時的に認識するが、立ち去れば、そこに居た事すらも覚えていないだろう。言わば姿が見えるまま透明人間になってしまう。


悪用すると非常に危険な仮面である、決して世には出せない仮面ではあるが、目立ちたくない時には役に立つだろう。(これは複数作ってもらい、ヴェラにもひとつ渡して置くことにした。)


ちなみに不死王が作ってくれた仮面は紐のようなものはなく、顔に付けるだけでピタッと貼り付いてくれ、暑い寒いも汗などについても不快を感じないようになっている優れモノである。


魔法の術式を極めた不死王ならばそんなモノを作り出すのは造作も無いのだが、どの仮面ひとつでも、もし世に出せば国家予算級の金額でも足りないような価値の|魔道具―国宝級アーティファクトになってしまうだろう。




   *  *  *  *




さて、フェルマー王都の冒険者ギルドを出たリューとヴェラの二人は数日後、フェルマー王国と魔法王国ガレリアの国境に辿り着いていた。


フェルマー王国側の国境検問所を出て、緩衝地帯を抜けた先。魔法王国ガレリアの国境検問所にリューとヴェラは向かう。両国は緊張状態にあるそうなので国境の検問では厳しく調べられるのだろうと予想していたのだが……


行ってみれば、意外と大したことは無かった。入国審査の列にはたくさんの旅人・商人が並んでいるが、特にトラブルもないようで、着実に列は進んでいく。


過去世の日本での記憶を思い起こせば、日本と近隣の国も、色々と問題は多く抱えていたが、民間レベルで行き来することは意外と問題もなかった。まぁどこの国も隣接する国とは問題を抱えているというのはよくある話なのだろうとリューは解釈した。


やがてリュー達の番が来た。


リューとヴェラの冒険者証を確認した警備兵が言う。


警備兵「冒険者か。フェルマーと違い、この国の冒険者はレベルが高い。尻尾巻いて逃げ出す事になるかも知れんぞ? だがまぁ気にするな、お前たちが弱いわけではない、この国の人間が強すぎるだけだからな」


いやらしい表情でそう言った衛兵は、二人に大きな水晶玉の乗った魔道具に手を乗せるように言った。よく街の入場時の検問で使われる、犯罪歴などの確認のための魔道具である。


実はリューは仮面を着けたままだったのだが、それについては特に何も言われなかった。軽い認識阻害の効果がある銀仮面である。リューはこの国では、常に仮面をつけている事にしたのだ。これなら多少目立っても問題ない。


まずはヴェラから手を乗せる。すると水晶玉が強く光った。


警備兵「ほお! ま、まぁまぁだな。これならこの国でもやっていけるかも知れんな」


ヴェラ「?」


警備兵「ああ、この道具は犯罪歴だけでなく、魔力も測定できるんだ」


警備兵に顎で促され、リューも手を乗せた。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


魔力偏重主義の国

こんな魔力値じゃこの国でやってくのは無理だぞ?


乞うご期待!



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