第208話 勇者、冒険者達にボコられて敗走(二回目)
リュー「ネリナ、大丈夫だ」
リューがそう言った瞬間、リューの手の中にはユサークが握っていた聖剣があった。
リュー「うーん、やっぱり、勇者が使わないと、ただの剣になってしまうんだなぁ・・・」
聖剣を振りながらリューが呟く。
ユサーク「…あ? あれ? 俺の聖剣どこいった? あ…貴様ぁ! いつの間にっ! 返せぇ!」
リューが自分の剣を持っているのに気付いたユサークがリューに飛びかかろうとしたが……
…何故か思いとどまった。
ユサーク「あれ? でじゃびゅ? なんか最近同じような事があったような……」
銀仮面「やっと思い出したのか」
皆が聖剣生成に気をとられている間にリューは仮面を装着していた。
ユサーク「うげぇぇぇっ! まっ、魔王! 魔王がこんなところにゲボっ…」
今度はリューが電光石火の踏み込みでユサークを殴り飛ばしていた。ユサークが纏っていた勇者の鎧も既にリューが収納しているのでダメージが通る。
銀仮面「コイツの鉄壁の防御は、鎧を脱ぐと働かないらしいぞ」
それを聞いたタックが倒れているユサークに近づくと顔面を蹴り上げた。なるほど、先程までまったく通じなかったタックの攻撃が、今度は効いているようだ。それを見た周囲の冒険者達もユサークを取り囲む。
ユサーク「ひぃっ、お前たち、僕に手を出したらただではぐぅっ」
冒険者達にタコ殴りにされるユサーク。
ユサーク「ぐぅっ、おまえらっ ぎっ、いっい加減に…へぶっ、しろー!」
ユサークの身体が光を放つ。するとユサークの体に勇者の鎧が生成され、途端に冒険者達の攻撃すべて弾かれる。
ユサーク「おまぇらぁぁぁぁ、覚悟はできてるんだろうなぁぁぁぁ」
鎧を纏い、ゆらりと立ち上がったユサークを見て、冒険者達はさっと距離を取って散っていく。ユサークが冒険者達を追おうとするが、その瞬間、再び鎧は姿を消した。リューが収納したのである。
ユサーク「あれ? …ふぐぅっ!」
警戒して散開していた冒険者達が即座に戻ってきて殴る蹴るを開始する。
もともとユサークは、鎧を着ていなくともAランク冒険者を凌駕するような身体能力があるのだが、タックもAランク冒険者であり、他の冒険者も実力派で有名なバイマークの冒険者である、ユサークごときに負けはしないのであった。
時折勇者の身体が光るが、その度に冒険者達は散開、鎧がリューに収納されて消えると即座に戻って攻撃再開。そんな事が何回か繰り返された。
さすが、バイマークの冒険者である、強力な魔獣を狩る時と同じく、フォーメーションは完璧である。このまま続ければ、さすがのユサークもそのうち力尽きるだろう。
ユサーク「くそっ、なんでコイツラっ、こんなにっ、強いんだ? それになんで勇者の鎧が消えてしまうんだ?
……そうか、このギルドは魔王の手下なんだな?! 全員、魔王の部下の魔族か! なるほど、それで勇者である僕を倒すため、ダンジョンに誘い込んだんだな?」
ネリナ「違うわよ、みんな人間、ただの冒険者よ」
ユサーク「アイツもか?」
ネリナ「そうよ。銀仮面はダンジョンの管理者である冒険者よ」
ユサーク「そうか、人間か……」
急に自身を取り戻し、不敵に笑いだしたユサーク。
ユサーク「…なんか今日は調子悪くて勇者の力がうまく使えないけど、魔王ではなく人間だと言うならやりようはある。
お前たち! 勇者にこんな事して、ただで済むと思ってるのか? 後悔させてやるぞ! え? どうするかって? この街を治めている貴族に命じて勇者に対する不敬罪でお前たちを逮捕させてやるのさ!」
ネリナ「みっともない男ね。力で敵わないとなったら今度は貴族に頼るわけ? まぁ、やってみたらいいわ。伯爵は、たとえ勇者と言えどもきちんと断罪すべきと言っていたわよ?」
ユサーク「ふん、貴族なんて、どうせ王の名前を出せばビビって言うこときく奴ばかりさ。もし言う事聞かないなら、王にその貴族を潰せって直接訴えてやる。王から家の取り潰しをチラつかされたら従うしかないだろうさ!」
そう言うと、なんとユサークはくるりと背を向け、ギルドの扉を抜けて走って逃げていったのだった。実に逃げ足は速い、見事なほどである。ずっと黙って成り行きを見守っていた勇者の仲間たちも慌ててそれを追いかけていく。
ネリナ「シンドラル伯爵をその辺の腰抜け貴族と一緒にしないほうがいいと思うけどねぇ・・・」
リュー「どうする、あれ? 追いかけるか?」
ネリナ「放っといていいでしょう。勇者の犯罪行為の証拠固めの時間が稼げるわ」
リュー「あれ、そう言えば勇者は喧嘩で負けたなんて言えないから黙ってるはずだって言ってなかったか? まずくないか?」
ネリナ「大丈夫、証拠固めが終われば伯爵から勇者の捕縛命令が出る予定だから。その時はよろしくね。その後で、伯爵自身が王に直訴に行くと言っていたわ」
リュー「伯爵の立場が危うくなるのではないか? この国の王がどんな人物なのか知らないが…」
ネリナ「大丈夫でしょう、伯爵を敵に回せば、国が危うくなる事くらい、王様も理解しているはず……多分……」
リュー「多分? 大丈夫なのか……?」
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次回予告
リューに国王から出頭命令?
乞うご期待!
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