第149話 リュージーンの実力、人間換算

まずはジェロである。ジェロはCランクだと名乗った。だが、一口にCランクと言っても、その実力の幅は色々である。しょせんランクはギルドが勝手に認定しているだけのもの、絶対的な強さの指標とはならない。

 

それに対して【鑑定】で識別する事ができる“レベル”は、ある程度数値と実力が比例している。

 

一般的な冒険者のレベルとランク目安は

 

F:初心者 (Lv3~15)

E:見習い (Lv10~25)

D:一人前 (Lv20~40)

C:ベテラン・凄腕 (Lv30~60)

B:達人 (Lv50~80)

A:人外 (Lv60~100)

S:神級 (Lv100~)

 

という感じである。(もちろん、ランクがギルドによって勝手に認定されるものである以上、これに当てはまらない、レベルが低いのにランクが異様に高い者や、レベルが高いのにランクが低い者もたくさん居るのだが。)

 

あくまで一般論であるが、仮にこの通りであったとしても、Cランクのレベルには30もの幅がある。

 

Cランクでも、レベルが30に近い方であるか60に近いほうであるかで、その実力は天と地ほど違って来てしまう……

 

ちなみに、リューの“竜人レベル”を人間のレベルに換算すると、竜人レベル1=人間レベル30~100という感じとなる。(竜人は幼児であっても人間のDクラス程度の力はあるのである。)

 

リュー自身もかなり成長してきているため、現在、人間のレベルに換算してどれくらいのレベルに居るのかは、リュー自身も分からない。

 

だが、おそらくであるが、リューはCランク程度までは自分の素の実力で勝てると予想している。(ランクと実力が大きく乖離している相手でなければであるが。)

 

果たして、結果は予想通りであった。

 

ジェロと対戦したリュー。

 

ジェロはリューとそこそこ打ち合える実力はあった。冒険者としてはかなり強いほうであろう。

 

だが、徐々にリューが本気を出していくと、ジェロは防戦一方になっていった。そしてついに、リューの小手打ちが決まった。

 

ジェロは剣を落とし、砕かれた親指を苦痛の表情で押さえる。その瞬間、リューの木剣が喉に突きつけられていた。

 

ジェロ 「くっ……参った」

 

力を全てさらけ出す事はできないが、手抜きを見抜かれてしまった以上、あまりわざとらしく負ける事は許されそうにない。仕方なく、リューは勝てる相手ならば勝つ事にしたのだった。

 

 

 

 

次はBランクのサラディである。Bランクというと、レベルは一般的指標では50~80と言ったところ。リューの素の実力が80以下であったなら、負けてしまうかも知れない。

 

次元障壁の鎧は常に纏っているので、仮に負けてもケガはしないだろうから、安心して戦える。

 

その心の余裕もあったのだろうが、結果はやや余裕でリューの勝ちであった。

 

サラディ 「待った、参った! 強いなぁ、君……」

 

 

 

 

いよいよ、Aランクのヴァーレである。Aランクの実力レベルは60~100。リューの竜人レベルは30~100、数値上の上限値なら互角(あくまで一般論としての話であるが)であるが……

 

結果は、最初こそ接戦ではあったが、最終的にはリューの勝利で終わった。

 

リューは【加速】等のバフも使っていない。竜人レベルも1固定のままである。地力だけで勝ってしまった。実は、リューの実力は人間レベル換算で100をかなり越えていたのであった。

 

 

 

 

Aランクのヴァーレ相手では、そこそこ力を出せた、気持ちよく戦えたリュー。だが、それを見ていたイライラの苛々は最高潮に達していた。

 

イライラ 「おい! 次は俺が相手だ!」

 

俺オレおばさんがやっと自ら相手をする気になったらしい。

 

 

 

 

イライラは元Sランクだと言っていた。引退したとは言え、このタイミングで勝負に出てくる以上、Aランクより強い実力は未だ保持している自信があるのだろう。

 

Sランクというのは、実は人間を越えた化け物の領域である。

 

初めてSというランクが制定された時代は、Sランクというのは全世界で3~4人しかおらず、神に近いとまで言われる存在であった。

 

その後、徐々に “大人の事情” でSランクを授与される者が増えていったため、レベルは大分下がったが、それでも怪物である事には変わりない。

 

しかも実は、イライラは衰えたわけでもケガなどで戦えなくなった訳でもない。引退はしたが、今でもその実力は現役時と変わらないのである。

 

ちなみに【剣聖】レイナードのレベルは130前後というところであった。リューは竜人レベル3までギアを上げてやっとレイナードに勝ったが、レベル1のままでは負けていた。

 

それを考えると、レベル1のままではSランクのイライラにはリューは勝てないであろう事が予想される。

 

それでもリューは時空魔法も神眼もレベルアップも使わずに戦うつもりであった。自分の素の力でどこまでやれるのか試してみたかったのだ。(でも次元障壁の鎧は一応着ておいたのだが。)

 

 

 

 

アッシュが連続で戦わされ続けているリューを気遣って休憩を提案したが、

 

「魔物に襲われた時、連続で戦っているから待ってくれと頼むのか?」

 

とイライラに言われて続行となってしまった。

 

 

 

 

研修場の中央の広場でイライラと対峙するリュー。

 

リュー 「二刀流か、宮本武蔵みたいだな」

 

この世界でも両手に剣を持って戦う「双剣使い」は結構多いが、イライラのそれは双剣とはちょっと違った。大小二本の木剣を持ち、小刀を前に出し、大刀は振りかぶり上段の位置である。それは日本の剣道の二刀流の構えに酷似していた。

 

イライラ 「貴様、最後まで全力を出していなかったな?」

 

リュー 「? いや、最後は全力を出し切ったが?」

 

イライラ 「最後は、ね。それまでは手を抜いていたのは認めるわけだ」

 

リュー 「あ」

 

イライラ 「それでも、まだ随分余裕を感じるのだがな、まるで、まだ奥の手を隠し持っているかのような?」

 

鋭い。イライラの元Sランクという肩書は本物のようだ。

 

リュー 「ここは、胸を借りるつもりで全力で行かせてもらおうか」

 

 

― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

VSイライラ

 

乞うご期待!

 

 

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