第135話 リュー、ソフィを拉致する?

外国人の扱いとなったリュー。

 

と言っても、特にこれまでと何かが変わる事もない。

 

これまで通り、街の中で普通に生活できるし、どこへでも自由に行ける。

 

もともと、力によって無理やり人々を従えているのが本質の、極めて封建的な文化が当たり前の世界なのである。

 

北のチャガムガ共和国が封建的な軍事国家であると批判する意見があったが、根底の部分ではガリーザ王国だってあまり変わりはないのである。

 

   *  *  *  *

 

王宮を去る時、ソフィには非常に残念がられた。

 

一緒にまた冒険者をやろうと誘われ頷いたリューであったが、ソフィには王族としての仕事が山積している。

 

ソフィの上に兄王子がたくさん居て仕事をしていたからこそ、ソフィは自由にさせてもらえていたのである。

 

王子たちが居なくなった今、ソフィにも王族としての責務が重く伸し掛かってくるのだ。ソフィは、自分もリューと一緒に追放してもらいたいと呟いていたが、それが許される立場でない事も理解していた。

 

 

 

 

いずれ、国が落ち着いたらまた、たまに冒険に付き合ってやってもいいとリューは言い、旅立っていった。

 

ソフィは通信用の魔導具をリュ-に持たせた。国民でなくなったとは言え、リューとソフィは友達である事に変わりはないのだから。何か力を貸して欲しい事があったらいつでも連絡しあおうとお互いに約束したのだ。

 

赤魔大国の件もある。リューのような強力な戦力が居るから引いただけなのだ。完全にリューが国を見放してしまえば、また魔族が攻めてくる事になるかも知れない。

 

赤魔大国については、決着がついていない気持ちもあった。やり残した事とはそれである。だが、王がしっかりと対応すると約束したので任せる事にしたのだった。

 

そうして、リューは世界を見て回り見聞を広げるため、風の向くまま気の向くまま、宛もない旅に出発したのであった。

 

    ・

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    ・

 

だが、思いのほか早く、リューに助けを求める連絡が来た。

 

連絡してきたのはベティであった。

 

曰く、王と王子が暗殺されてしまったと言うのだ。

 

おそらく犯人は公爵とその息子たちであろうと言う。

 

公爵は王座に就こうとしたが、序列的にはソフィのほうが王位継承権が上位になる。そこで、公爵はソフィがまだ若い事を理由に摂政の地位につき、ソフィを軟禁してしまったらしい。

 

公爵がソフィを生かしておいたのは、ソフィと息子のローダンを結婚させ、息子に王位を継がせようと考えたためであった。それはソフィに惚れていたローダンの強い希望でもあり、親馬鹿の公爵はそれを聞き入れたのであった。

 

ソフィは軟禁される前、通信用の魔道具をベティに託し、リューに助けを求めるように言ったのだ。

 

だが、リューの反応はあまり良いものではなかった。

 

リューは、この国の国民ではなくなった。そして、リューは自分の自由を奪おうとしない限りはリューからも関わらないと約束してしまったのだ。

 

約束は守らなければならない。何故なら、リューが約束を破れば、国も約束を守らなくて良くなってしまうからである。

 

そもそも、リューは、基本的には、自分の事しか考えていない。「正義感」や「人々のため」というような高尚な思いはないのである。自身に直接関わりのある事でない限りは、「正義の味方」などするつもりはないのだ。仮に、どこかに悪人が居ようとも、それを正したり懲らしめたりする気はない。

 

リューは、価値観というものは100人居れば100通りあると思っているからである。立場が変われば正しさも変わる。絶対の正義などないのだ。

 

特に、この世界は封建的で人権意識などもほとんどなく、法律も支配者の都合に合わせただけの稚拙な内容が多い。法を守る事が正しいとは言えないケースが多すぎる。

 

仮に、どこかの国で王を暗殺して王位につこうとした人間が居たとしても、それをどうこう言うつもりはリューにはないのである。

 

ただ、ソフィは友人である。友人として、力にはなってやりたいと思う。

 

例えば、ソフィを王宮から拉致して、外国に逃してやる事はリューならば簡単である。ソフィが望むなら、二人で冒険者をしながら外国を旅してもいい。

 

そこで、リューは軟禁されているソフィに会いに行き、本人がどうしたいのかを尋ねたのだった。

 

 

― ― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

ソフィの選択

 

乞うご期待!

 

 

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