第116話 ハリス王子の最期
ハリス 「リュージーン……生きていたか」(ギルは何をしているのだっ! うまく“処理”しておくと大見得切っておったくせに!)
リュー 「俺を捕らえるために王宮騎士を派遣したり、冒険者を雇って襲わせたりしたのはお前の差し金か。くだらん裁判も」
ハリス 「ふん、貴様の幻術などもはや効かぬ、状態異常を防ぐ魔道具は装着済みだ!」
リュー 「まだ幻術だと思いこんでいたのか……」
その時、ハリスの私設騎士団の中で、後退っていく者が居た。
リュー 「見た顔が居るな。次に敵対したら殺すと言ったが?」
アイガ 「あ、アンタと敵対するつもりはない」
アイガはガルテオとマシュウに目配せする。次の瞬間、三人は脱兎のごとく部屋から逃げ出して行った。
あっけに取られるハリス。
リュージーンの攻撃が幻術などではない事を、アイガ達はもう理解していた。そして、リュージーンが出てきた事で、ハリス王子と私設騎士団に勝ち目がないと判断し、見捨てて逃げる事を選択したのだ。
もともとハリスの騎士団は金と権力で縛られている者の集まりである。命を掛けてハリスに奉仕するような忠誠心を持つ者は居ない。家の事を案じてハリスに従っていたアイガ達も、ハリスが失脚するとなれば、泥舟に一緒に乗っている理由はないのである。
ギリギリのタイミングであったが、ハリスに見切りをつけたその判断は、ハリスとアイガ達の運命を分けることになった。アイガ達は生き延び、ハリスは破滅へと続く
リューの実力を正しく認識したアイガ達に比して、ハリスはあくまでリューを認められなかった。リュージーンの実力を幻だと思わなければ、精神の安定を保てなかったのである。ハリスにとって心臓を貫かれて殺された経験は非常に重いトラウマとなっていたのだ。
本当はハリスとてリューの実力を無意識下では理解していたのである。だからこそ、リュージーンが自分の野望にとって脅威になると思い、多少無理矢理であってもリューを始末しようとギルに相談したのだから。
逃げ出していったアイガ達を見てハリスが呟く。
ハリス 「あいつら……幻術ごときにビビりおって。俺が王に即位したら指名手配して捕らえて処刑してやる」
リュー 「お前が王になる未来なんて来ないだろ?」
ハリス 「お前が阻止するというのか? 言っただろう、俺にはもう幻術は効かぬ」
おそらく状態異常を回避できる魔道具を複数装着しているのだろう、よほど、リューの幻術を警戒しているようである。
リュー 「馬鹿は身体で理解するしかないか」
その瞬間、ハリスの腕が床に落ちた。
一瞬遅れて来た痛みにハリスは慌てて腕を押さえるが、そこにはもう腕はなく、大量の血が吹き出していた。
リュー 「今回は治してはやらん、存分に痛みを味わうがいい」
ハリス 「ば・・・かな! 幻術ではなかったのか?! 腕が、腕がぁ……! お前達、何をしている!」
ハリスの私設騎士団がリューを取り囲む。ハリスは自分の治療をして欲しかったのだが通じていないようであった。
騎士達が一斉にリューに襲いかかる…
…ことはなく、取り囲んだ時点で全員首を斬り飛ばされており、残った騎士達の身体はゆっくりと倒れていった。ハリスの騎士団は一瞬にして全滅となってしまったのだ。
騎士達の頸の断面から大量の血が吹き出し、玉座の間が血の海になっていく。その光景に、その場に居た貴族達が狼狽える。
その間に、ハリスは切断された腕を
だが、治療を終えたハリスは自分の周囲に味方が誰も居ない事に気づいた。
「馬鹿なぁぁぁくそぉぉぉ覚えていろおぉぉぉ」
ハリスは突然、リューに背を向け、部屋の出口に向かって走り始めた。
だが、それを許すリューではない。リューが転移を発動する。だが、転移の対象はリュー自身ではなく、ハリスに対してであった。
ハリスは扉を抜けたつもりであったが、転移で部屋の中に戻されてしまった。部屋の中に180度逆向きに出現したハリスは、リューに向かって走っていく格好になっている。
それに気づいたハリスはリューの前で慌てて止り、再び踵を返して逃げ出す。だが、逃げても逃げてもリューの前に戻されてしまうのであった。
「ちくしょぉぉぉ」
ついに逃亡を諦めたハリスは、破れかぶれでリューに斬りかかったが、次の瞬間には、リューに再び両腕を斬り飛ばされ、剣で胸を貫かれていた。
以前はリューの魔法ですぐに生き返らせてもらったが、今回は治しては貰えない。
「どうしてこうなった……」
小さな呟きを残し、ハリスの人生は終りを迎えた。
・
・
・
この国の王子を殺してしまった事になるリューであるが、王もソフィもそれを咎めはしなかった。クーデターを起こし王を殺そうとしたのだ、当然である。
ソフィ 「馬鹿な兄上……」
その時、その場に居た貴族たちが慌てて逃げ出そうと、部屋の出口に向かって走り出した。
しかし、リューが転移で部屋の扉の前に移動し立ち塞がる。
リュー 「コイツらはどうする? 全員殺してしまうか?」
「ひいぃぃっ」
貴族達が悲鳴を上げる。
「王よ、どうかお許しください!」
「私は騙されていたのです!」
「私は反対したのです!でも脅されて!」
慌てて王に向かって跪き、言い訳と命乞いを始める貴族たち。
それに対し王の下した判決は……
― ― ― ― ― ― ― ―
次回予告
そういえばギルはどこに……?
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます