第86話 誘拐事件解決、犯人は…

宴会に興味がありそうなソフィであったが、マリー達は下品な酒場にソフィが近づかないようにブロックしている。

 

リューも宴会に誘われたが、早めにゴランと打ち合わせをしておきたかったため、宴会には参加せず警備隊詰所に向かう事にした。

 

一人で行くつもりであったので、ソフィ達には帰るように言ったのだが、一緒に行くというので全員で警備隊に向かう。

 

警備隊に着いて名前を言うと、すぐにゴランが居る執務室へ通された。

 

ゴラン 「ゾーンとは話せたのか?」

 

リュー 「いや、ゾーンは今スラム街には居ないようだ」

 

ゴラン 「ますます怪しいな。実は、警備隊の捜査で、拉致誘拐が頻繁に起きる場所が何箇所か判明している。」

 

机に広げられていた地図を指差すゴラン

 

ゴラン 「だが、なかなか尻尾を掴めない。そこで、囮捜査をしてみようと思う」

 

リュー 「なるほど……だが危険はないのか?」

 

ゴラン 「何、ちゃんと隊員が隠れて護衛に着くつもりだ。……だが……」

 

リュー 「……だが?」

 

ゴラン 「あまり近づき過ぎると警戒されて襲ってこないだろうからな。だが、離れ過ぎると囮役の娘が危険になる。そこで、リューに力を貸してほしいのだ。」

 

リュー 「なるほど、俺なら何かあっても転移ですぐに駆けつける事ができるからな」

 

ゴラン 「そういう事だ。ゾーンはなかなか腕が立つというからな。正直、ウチの隊員だけじゃ不安だったんだ」

 

囮捜査は早速、今夜から作戦は実行される事になった。

 

囮役には、警備隊で普段は事務仕事をしている若い女性の隊員が選ばれた。

 

その娘に、夜遅くに事件が頻繁に起きるという通りをいくつか歩いてもらう。

 

遠くからリューと警備隊員が見張っている。かなり離れた場所に居るので護衛の隊員達は不安そうだが、リューなら神眼を発動して様子を察知する事が可能である。

 

しかし結局、初日は何も起きなかった。

 

だが、リューは神眼によってゾーンの気配が通りの近くにある事を感じ取っていた。


やはりゾーンが犯人なのか?

 

いっそゾーンを捕らえて事情聴取をすればいいのではないかとゴランに提案してみたが、証拠がないと逮捕しても有罪にできないのでダメだという。

 

リューならば相手の心が読めるが、それはさすがに秘密にしている事なので言えない。というか、心を読んだとて、それは証拠にはならないのだからどうしようもない。

 

やはり、現行犯で取り押さえるしかない。

 

3日ほど続けたが、動きがない。もしかして、囮捜査がバレているのだろうか?

 

やはりゾーンのいる場所に転移で乗り込んで問いただそうかと思った所、囮の女性が襲われた。

 

神眼で探るとゾーン達が女性の近くに居る。

 

即座に転移で警備隊員達と現地に飛ぶと・・・

 

ゾーン達が別の何者かと交戦中であった。

 

どうやら、ゾーンは襲われた女性を助けようとしている?

 

ゾーン達が交戦している間に、攫った女性を乗せたと思われる馬車が走って逃げようとしていたので、転移でリューとソフィ達が馬車の前に飛び、道を塞いだ。

 

だが、構わず突っ込んでくる馬車。

 

左右に飛び退き馬車を避けるソフィ・マリー・ベティ・アリス

 

リューはまっすぐ馬車に向かってジャンプし、御者台の男を蹴り飛ばすと、手綱を握って馬車を止めた。

 

女性を襲った連中は全員逮捕、馬車に囚われていた女性達も無事救出できた。

 

ゾーン達は、スラム街で女性を拉致している連中が居るため、探っていたらしい。足取りがなかなか掴めないうちに、やがて一般の街にまで被害が及ぶようになったとか。

 

やはり、ゾーン達は誘拐事件に関わっては居なかったのだ。

 

捕らえた誘拐犯達は警備隊に連行されていったが、その前にリューは誰が黒幕なのか尋ねてみた。もちろん答えはしなかったが、リューの金色の瞳が相手の脳裏に浮かぶ者の名前を読み取る。

 

そう、ギット子爵であった。

 

リューが心を読んだところで、証拠にならないのでゴラン達は逮捕できない。これから尋問で締め上げて吐かせることができればよいが、仮に証言が取れても、相手が貴族では手を出すのは難しいかも知れない。

 

ミムルの領主の爵位は伯爵であるので、子爵相手であればなんとかできる可能性はあるが、そこまでするほどの事件ではない。

 

それに、ギット子爵は、公爵家の縁者であるというのは事実のようである。伯爵とは言え、それほど有力な貴族というわけでもないミムルの領主ではどうにもできない可能性は高かった。

 

 

 

 

張り込み中、ソフィがギット子爵を知っている様子であった事を思い出し、リューはソフィにギット子爵について尋ねてみた。

 

ギットは、もともと公爵家の四男で、ソフィの従兄弟にあたるらしい。ただ、子供の頃からかなりヤンチャで手がつけられず、成人する頃には目に余るほど素行が悪くなり、ついに公爵家を追放されたという人物らしい。

 

とは言え、一応貴族としては最有力の公爵家の子弟を無碍に扱うこともできず、公爵家の名は剥奪されたものの、子爵の爵位を与えて地方へ追いやったという事であった。

 

地方の領主に収まったギットは、領地で好き放題の放蕩生活をし、領民を苦しめるようになったという事なのだろう、迷惑な話である。。。

 

 

― ― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

リューはトッポ男爵に捕らえられ連行されてしまう?!

 

乞うご期待!

 

 

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