第73話 王女を溺愛する迷惑な兄王子がリューを狙う
とりあえず、ゴブリンの討伐証明部位と採集した薬草を持ってギルドに戻ってきたリューとソフィ達。
依頼達成報告とゴブリン討伐報告、報酬の受け取りと、冒険者らしい経験ができてソフィは嬉しそうであった。
新人研修はこれで終わりと言う事になるが、ソフィがどうしてもダンジョンに潜ってみたいと言うので、もう一度クエストに行く事になった。ただ、さすがに今日の今日では準備ができていない。
準備などなくても、リューなら転移を使って短時間の弾丸見学ツアーのような真似も可能だと提案したが、王女はあくまで普通の冒険者と同じように冒険がしてみたいと言う。
リュー 「じゃぁ、明日はダンジョンアタックのための準備に当てる事にし、明後日ダンジョンに行くとしよう。何を準備すればいいかは分かるか?」
ソフィ 「おお、もちろんじゃ、研修で教わったぞ。明日は買い物じゃな、楽しみじゃ」
リュー 「そうか、もしかして王女様ともなると、街で買い物などしたこともないのか?」
マリー 「ソフィ様に買い出しなどさせられません。準備は私達がいたしますので」
ソフィ 「ならぬ、買い出しも自分でやるぞ。妾の楽しみを取り上げるでない。」
リュー 「そうだな、自分でやらないと意味がないだろう、冒険者なんだからな」
ソフィ 「そうじゃ、冒険者じゃからの! 自分のことは自分でするのじゃ」
ソフィは冒険者という言葉に気を良くしたようであった。
だが、そんなやり取りをしていたリューに、後ろから突然声を掛けるものが居た。
「おい、貴様、平民ごときが王女相手に態度が無礼であろう、不敬罪で処分してやる。」
声を掛けてきた男を見て、ソフィは驚き、そして呆れたような顔をした。
ソフィ 「兄上……」
男はハリス、この国の第三王子だとの事であった。そして、末の妹のソフィをことさら溺愛している人物らしい。
だが、ソフィによるリューの紹介が終わらぬうちに、ハリスの形相が変わっていく。リューの態度が気に入らないのである。
ハリス 「無礼者、
その言葉で、ハリス王子の後ろに控えていた騎士達がリューを取り囲む。
ソフィ 「兄上!! やめるのじゃ!! 冒険者として、対等な立場として付き合ってくれるよう頼んだのは妾じゃ!」
ハリス 「おおおおお、ソフィよ、大丈夫か? 下賎な平民など、話をするだけで体が穢れるのだぞ? 病気になっていないか?」
ソフィ 「相変わらずの酷い差別意識じゃのう、兄上。その下賎な街の中に、一体何しに来たのじゃ?」
ハリス 「お前の事が心配で迎えに来たんだよ。お前が新人冒険者の研修を受けに行ったと聞いて、慌てて飛んできたのだ。冒険者ごっこなど、王族のする事ではない。いい加減わがままを言わず、城へ帰っておいで」
ソフィ 「嫌じゃ。まだダンジョンに潜っておらぬしな」
ハリス 「ダンジョンだと?! そんな危ないところへ行ってはいかん。そんな事は下賎な者共に任せておけばよいのだ。大体、その格好はどうしたんだ、随分汚れているではないか」
ソフィ 「ゴブリンを退治したのじゃ、凄いであろう?! その時の返り血じゃ」
ハリス 「ゴブリンの血ぃぃぃ!? 汚い、病気になる、すぐに屋敷に戻って着替えなさい! マリー、お前たちが居ながら何をしておったのだ!?」
マリー 「も、申し訳ございません、王子」
思い出したように慌てて跪いて謝罪するマリー達。
ハリス 「ええいもういい、ソフィ、帰るぞ!」
ハリスは未だリューを取り囲んだままの騎士たちに声を掛ける。
ハリス 「おいお前ら、何をしておる、さっさとその無礼な平民をひっ捕らえて処分しておけ」
ソフィ 「やめろと言うておる!」
ソフィがリューを庇うように騎士たちの前に割って入る。
ソフィ 「お前達、妾の言うことがきけんのか?!」
騎士 「殿下、申しわけありません。我々はハリス王子の私設騎士団でございますので……」
ハリス 「ソフィがいいと言うのならもうよい。それより着替えだ、帰るぞ」
マリー達もさっさと帰って汚れを落としたかったので、ソフィを促し宿泊先である領主の迎賓用の屋敷に向かった。
ソフィ 「で、では、明日! 朝またここで」
リュー 「ん? 俺も買い出しに行くのか?」
ソフィ 「当然じゃ! パーティの仲間じゃろ?」
リュー 「そ、そうか」
ソフィは去り際にリューに声を掛けて行ったが、その様子を見たハリスは、ソフィに聞こえないよう、騎士団に命じた。
ハリス 「あの平民を“処分”しておけ、ソフィに見えないところでな」
騎士 「御意」
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リュー 「やれやれ、俺も帰って飯食って寝るか」
王女達を見送ったリューも帰路についた。
だが、その後を、ハリス王子の近衛騎士が3人、後を
人目に付きにくいところでリューを始末するためである。
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次回予告
リューを襲った王子の近衛騎士の末路
乞うご期待!
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