第43話 盗賊退治

村の入口に転移したリューとセーラ。

 

突然現れた二人に、村の門番の年寄りが槍を構えたが、一人がセーラである事に気付き、槍を下ろした。

 

門番の老人 「セーラじゃないか、どこに行っておったのだ、マリンが心配しておったぞ? その人は誰だ?」

 

セーラ 「冒険者を呼びに行ってたんだよ! この人はリュー、悪い人をやっつけてくれるって!」

 

門番の老人 「あんた、冒険者なのか? セーラが何を言ったか知らんが、この村には冒険者を雇うような金はない。せっかく来てくれたが、報酬は期待できんから、帰ったほうがいい。」

 

リュー 「問題ない、金は既にセーラから貰っている。」

 

セーラ 「大丈夫だよ!貯めてたお小遣い全部払ったから!」

 

門番の老人 「あんた……ありがとう……」

 

セーラのお小遣いなどたかが知れているはず、そんな金額で仕事を引き受ける冒険者など居るわけがないのだが……すべてを察したのか、老人は礼を言った。

 

門番の老人 「気持ちは嬉しいが、やはり帰ったほうがいい。盗賊は30人は居る。あんたのような少年一人で倒せる相手ではないのじゃ。」

 

リュー 「それも問題ない。」

 

門番の老人 「しかし……」

 

「セーラ!!」

 

そこに、一人の少女が駆け寄ってきてセーラを抱きしめた。おそらくセーラの姉、マリンであろう。

 

マリン 「バカ! あんた、どこ行ってたのよ! 心配したんだから!」

 

セーラ 「お姉ちゃん、もう大丈夫だよ、リュー兄ちゃんが悪い人達をやっつけてくれるって。」

 

マリン 「リュー兄ちゃん?」

 

リュー 「ミムルから来た。冒険者をやっているリュージーンだ。セーラの依頼で盗賊退治にやってきた。」

 

マリン 「そうですか、わざわざありがとうございます。ですが、どうぞお帰り下さい。セーラが何を言ったのか知りませんが、私には冒険者を雇えるようなお金はないのです。それに、あなたのような少年一人で、大勢いる盗賊達に敵うわけがありません。どうぞお引取り下さい、殺されないうちに……」

 

マリンは、リューよりは若く見えるが随分しっかりしている少女であった。

 

リュー 「報酬は既にセーラから貰っている。それに、俺はドラゴンを倒せる冒険者だから、盗賊の100人200人、何も問題はない。……と言われても信じられないだろうから、こうしよう。俺は通りすがりの旅人って事にすればいい。盗賊が来た時にたまたま居合わせてしまっただけだ。それなら問題ないだろう?」

 

マリン 「でも!」

 

リュー 「通りすがりの俺が勝手にやる事だ、俺がもし殺されても別に気にしなくていい。まぁ見ていればいい……」

 

マリン 「ちょ、待って下さい……!」

 

リューは止めるマリンを気にせず村に入っていくリュー。

 

仕方なく、マリンはリューを自宅に案内した。

マリンはリューに、盗賊が来ても家に隠れて絶対出てこないようにと言うと、リューの事を村長に伝えに行った。村に来客があった場合は村長に知らせるのは、小さな村でもよくあることである。村に害をなす者かどうか、村長が見極めて許可を得ないと村に留まることは許されないのは普通である。

 

リューはマリンとセーラの家のキッチンの椅子に座ると、神眼を発動し、村の配置を確認する。さらに範囲を拡大していくと、村に向かっていると思われる集団を発見した。

 

約束の時間より早いが、盗賊達で間違いないだろう。

 

リューは盗賊達の戦力をざっと確認したところ、ほぼ全員、まったく問題ない雑魚ばかりであったが、一人だけ、強い魔力を持っている者が居た。おそらくソレが首領なのであろう。

 

しばらくすると、マリンが村長と一緒に戻ってきた。

 

マリン 「くれぐれも妹の事をお願いします。」

 

村長 「ああ、セーラの事は責任を持って面倒みるから。済まないね……」

 

マリンは村のために、盗賊に自分の身を差し出す覚悟を決めたようであった。村長は玄関を入らずに帰っていった。

 

もちろん、マリンが犠牲になる必要などない。その前に、問題は解決してしまおう。リューは村の入口に転移し、やってくる盗賊を待ち受けた。

 

     ・

     ・

     ・

 

盗賊の首領 「お前は誰だ?」

 

リュー 「通りすがりの冒険者だ。たまたま村に通りかかったら、盗賊が大勢やってくるのが見えたのでな。ちょっと見に来たんだ。」

 

盗賊の首領 「俺たちが盗賊だと分かってて出てきたってのか? 仲間にしてくれ、とでも言うつもりか?」

 

リュー 「いや……賞金首が居るかと思ったんだが、雑魚ばっかりのようだな。」

 

盗賊A 「てめぇ、舐めやがって!」

 

盗賊の首領 「やめろ! ……オマエ賞金稼ぎか? そうさ、俺たちは雑魚ばかりで賞金首などいねぇから稼げねぇよ。無駄骨になるだけだからさっさと行っちまいな。」

 

リュー 「そうか、残念だな。ところで、少女を拐おうとしている変態盗賊が居るって聞いたんだが、お前ら知らないか?」

 

盗賊の首領 「ふん、村に雇われたか。だが、一人でどうする気だ?」

 

盗賊達が一斉に剣を抜いた。

 

その時、馬で囲みに駆け込んでくる者が居た。

 

キャサリン 「間に合った!リュー、無事か?!」

 

ミムルの街から馬を飛ばしてきたキャサリンであった。

 

盗賊の首領 「なんだおめぇ?」

 

キャサリン 「ミムルの街の冒険者ギルドのマスター、キャサリンだ!」

 

名乗ってどうするのか。

 

先程リューの名前も叫んでしまっている。

 

バカなのかとリューは頭を抱えた。

 

リュー 「何しにきたんだ?」

 

キャサリン 「助けに来たんだ!」

 

リュー 「俺の“狩り”を見たかっただけじゃないのか?」

 

キャサリン 「う……いや、何の事かな?」

 

全員次元斬で首を刎ねて終わりにするつもりだったリューだが、せっかくキャサリンが、態々馬を飛ばしてまで見に来たのだ。

 

仕方ないので、サービスでリューは、キャサリンにも分かりやすいように倒してみせる事にした。

 

亜空間から魔剣フラガラッハを取り出して構えるリュー。

 

盗賊の首領 「ふん、死体がひとつ増えるだけだ、やっちまえ!」

 

首領の号令で、盗賊達が一歩踏み出そうとした瞬間、リューが猛スピードで盗賊達の間を走り抜ける。

 

次の瞬間には、盗賊達の首はすべて地面に転がっていた。

 

高速移動しながらの斬撃であったが、この程度の速度であれば、キャサリンなら十分目で追えているだろう。

 

 

 

残るは盗賊の首領ただ一人。

 

首領を残したのは、リューには知りたい事があったためだ。と言っても、あくまで念の為という程度の話であったが。なんとなく、リューは、嫌な予感を感じていたのである。

 

盗賊の首領 「な、何が……どうなってる?」

 

状況が飲み込めていない盗賊の首領にリューが質問する。

 

リュー 「お前には聞きたい事がある。少女を拐ってどうするつもりだったんだ?」

 

盗賊の首領 「う、うるせぇ、お前には関係ねぇ!」

 

剣を抜きリューに襲いかかってくる盗賊の首領。だが、リューはその剣をあっさりと躱し、首を刎ねて終わりにする。

 

答えを聞く必要はないのである。思い浮かべてくれれば、リューは心を読み取る事ができるのであった。

 

ただ、首領の心を読んで判明した事実は、思ったより根深いものであった。リューの嫌な予感が当たってしまったようだ。

 

 

― ― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

盗賊の黒幕は?!

意外…でもない人物デスカネo(_ _)o

 

乞うご期待!

 

 

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