第26話 リュージーンの正体
依頼が減り、冒険者の出入りも減り、活気のなくなった冒険者ギルド。
執務室で頭を抱えているマスターのダニエルの所に男が一人尋ねてきた。
Cランク冒険者のジョニーである。
ジョニーは「魔眼」のスキルの持ち主である。
ダニエルも「鑑定」スキルが使えるが、ジョニーの魔眼を使った鑑定は、ダニエルのそれよりずっと詳しい情報が分かるのである。
ジョニーはダニエルの依頼で、リュージーンを影からその魔眼で鑑定したのである。
だが、結果を見たジョニーは、それをダニエルに報告すべきか迷っていた。
魔眼の力で、リューと敵対する事は得策ではない事をジョニーは理解したのである。
だが、何も報告しないと言うわけにもいかない。
迷ったジョニーは、一部伏せて報告することにした。
ジョニーが報告した鑑定結果は
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リュージーン Lv:1
年齢:16歳
性別:雄
種族:竜人
魔力:0
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というものだった。
ジョニー 「マスター、リューは、リュウジンです。」
ダニエル 「? …ああそうだ、リューの名前は確かリュージーンだったよな。それがどうかしたのか?」
ジョニー 「違います、リュウジン、『竜人』です。」
ダニエル 「……まさか……?」
ジョニー 「竜人て……伝説でしか聞いたことがない、幻の種族ですよね?現実に存在しているなんて……」
ダニエル 「だが、おかしいだろう?リューの両親も人間だったと聞いているぞ?」
ジョニー 「捨て子だったとか?」
正解である。
転生時にリューが要求した能力を与えるのに、人間の肉体では無理であったため、女神の力で竜人に種族を変えられてしまったのである。ただ、人間でありたいとリューの希望であったため、外見は普通の人間とまったく変わらないまま竜人となった。
容姿は普通の人間であっても竜人は人間ではない、別の種である、その能力は桁違いであった。人間の筋肉と同じ太さの筋肉で、人間の三十倍以上の力が発揮される。骨や関節、腱などもすべてそのパワーに耐えられる強度を持っており、神経の伝達速度も人間とは桁違いである。
ただ、リュージーンが、この世界の事をちゃんと理解したい、そのために普通の人間として赤ん坊からこの世界で成長したいと希望したため、一時記憶を封印し、捨て子としてとある商家の女に預けられたのであった。
ダニエル 「なるほど……確かにリューは『思い出した』とか言っていたな。自分が竜人であることを思い出したということか? そして竜人としての能力に目覚めた?それならあの突然の変貌も筋は通るな……。」
ジョニー 「竜人って、鱗とか角とかあるイメージでしたが、普通に人間と同じ姿なんですね…
…レベルが "1" というのも、竜人のレベルだとすると、人間のレベルと比較する事はできないってことですかね。」
ダニエル 「クラスやスキルがないこと、魔力がないことも、人間と同じように考えてはいけないということか……? 測定不能というのは?」
ジョニー 「相手のレベルが高すぎて、俺のレベルではそれ以上鑑定できないって事です。」
以前、ジョニーの魔眼でAランク冒険者を鑑定させた事があった。相手のレベルは50を超えていたが、それでも鑑定はできた。ジョニーのレベルは25であるが、その程度のレベル差であれば鑑定は可能と言う事になる。(鑑定スキルでは自分よりレベルの高い相手の情報は見えないのが普通であるが、それを可能にするのが魔眼なのである。魔眼であれば、通常の鑑定では見えないような情報までも見る事ができるのである。リューの種族名は、通常の鑑定では見る事はできないように隠蔽されているのだが、ジョニーの魔眼では見ることができたようだ。)だが、その魔眼でも鑑定不能なほどとなるのは、よほどレベル差が大きい時と言うことになるのだ。
ジョニーは鑑定で知った全てを報告したわけではないが、この報告だけでも、リューと敵対する事が愚かな事であると、さすがのダニエルも理解せざるを得なかったのであった。。。
ジョニーが鑑定で知った、報告しなかった内容とは……
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リュー Lv:1
年齢:16歳
性別:雄
種族:竜人
魔力:測定不能
戦闘力:測定不能
加護:創造神の加護
時空神の加護
称号 「人の法の外にある者」
※この者と敵対するものは神と敵対する者となる
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ジョニーも鑑定結果に「加護」という表示が出たのは初めての経験であった。神の加護を受けている人間など教会の高ランク司祭レベルでもない限り滅多に居ないからである。
しかも、おかしな注意書きまで付いている。神と敵対……?
何はともあれ、敵対はしないほうが良さそうな事は理解したジョニーであった。
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竜人とは、ドラゴンを統べる者でもある。
すべてのドラゴンは眷属として竜人に従う。
知能の低い種類のドラゴンでも、竜人が何なのか理解できないが、逆らってはいけない絶対的上位の相手であると言う事を本能的に理解し、従う。
ダンジョン深層に居たアースドラゴンは、会話ができるほど知能は高くないが、リューを絶対的強者と認め、ある程度指示に従うだけの最低限の知能はあったのであった。
ビッグ達「赤い流星」を始末したリュー。
死体を積み上げると、ドラゴンにブレスを吐かせて灰にした。ドラゴンのブレスなら、一瞬できれいに灰にはってしまうので楽である。
いつもなら転移で街に戻ってしまうのだが……
今回、リューは、ダンジョンを踏破してしまう事にしたのだった。
これまでも狩りには何度も潜っているが、これより深い階層にはまだ行ったことがなかったのである。
だが、この階層をクリアして次の階層に進むには、ボスモンスターを倒す必要がある。倒さなければ次の階層への階段が現れないのである。
この階層のボスは、アース・ドラゴンの上位種、キング・アースドラゴンであった。当然、通常のアースドラゴンより知能は高く、リューに従う事には変わらないので、戦う必要はなかったのだが……それだと先の階層に進むことができないのである。
試しにドラゴンに向かって通してくれるように頼んでみたが、ダメなようである。やはり、先に進むにはドラゴンを殺すしかないようだ。
自分に従う者を殺すのは忍びないが、ダンジョンに生み出されたドラゴンだけあって状況をなんとなく理解しているのか、ドラゴンは素直に首を差し出して来た。
例え殺しても、ダンジョンのモンスターは、一定時間経てばダンジョンの不思議な力でまた生き返るので問題ないといえばないのかも知れないが。とは言え、わざわざ痛い思いをさせる必要もないだろう。
リューは竜の頸動脈の血流を空間制御魔法で遮断する事でドラゴンの意識を失わせた。完全に意識がないのを確認した後、リューはドラゴンの体内から魔石を転移で抜き取る。
魔石を抜き取られる時に痛みがあるのかはリューには分からなかったが―――これまでのモンスターは苦しんだ様子もなく即死していたようなので、おそらく痛みはないのだろうと思うのだが―――念のため、先に気絶させておくことにしたのだ。
痛みを感じさせないためであれば、もしかしたら脳を破壊してやったほうが良いのかもしれない。リューの過去世(地球)の知識では、脳自体は痛みを感じないと言っていた記憶があった。
脳は痛みを感じる主体そのものなのであるから、それが壊れてしまうと痛みは感じようがないと言うことなのだろうが……
殺される本人でなければ、本当に痛みや苦しみがないのか分からないし、死んでしまった後にどうであったか確認しようもないので考えることをやめたリューであった。
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次回予告
ダンジョン踏破
乞うご期待!
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