第24話 また置き去りにされる!
ビッグは貴族の息子であり、とある街の領主をしている父親の支援を受けているため資金は潤沢であった。
それを使い「赤い流星」はダンジョン攻略のための準備品を大量に買い込んだ。これまでは資金があろうとも、運べる量に限界があるため、多くの物資を持っていく事はできなかった。
だが、リューの収納は限界がないので、驚くほどの量を持っていく事にしたのだ。
食料、回復用のポーション、様々な生活用魔導具、攻撃用魔導具など。普通であれば持てない贅沢な量の準備品は1~2ヶ月ダンジョンに潜っていられる量であった。
2日後、準備が完了したパーティ「赤い流星」with ポーター・リュージーンはダンジョンへ挑んだのであった。
・
・
・
・
・
― ― ― ― ― ― ― ―
リューはあくまでポーターとして雇われたので、荷物運びに徹して戦闘には手を出さない。
ビッグ 「お前、まだFランクなんだって? 俺たちのようなAランク冒険者と一緒に行動できるのは光栄だろう、せいぜい勉強するといい。」
などと言割れるが、リューは適当に相槌を打って煽てておいた。
ビッグは「俺たちAランク冒険者」などと言っていたが、ビッグは実はBランク(実力はDランク)である事をリューも知っていたのであるが、突っ込む事はせず、心の中で嘲笑っておくだけに留めておいたのだった。
だが、さすがはAランクパーティである、ビッグ以外のメンバーの実力は本物であった。特にアミラ・ジョジョのAランク冒険者二人の実力は大したもので、低級~中級のモンスターであれば瞬殺であった。
またBランクのチャチャ(魔法使い)も、その力はAランクに近いBという実力派であった。
出てくるモンスターをアミラ達がどんどん倒して行き、順調に階層を重ねていった。
だが、パーティはそこで一旦、休憩をとる事にするという。
ダンジョン攻略は何日もかかる事が多い。その場合、当然、途中で休憩・睡眠が必要になる。その場合は、比較的安全な場所を選び、魔物を寄せ付けない結界石などを使用するか、結界石がない場合は交代で見張りをしながら休憩をとる事になる。
ビッグ達のパーティは資金が潤沢なので強力な結界石を用意しており、全員同時に眠る事ができたのであった。
・
・
・
・
・
― ― ― ― ― ― ― ―
そして寝静まった後……
リューを残して赤い流星のメンバーはそっと結界の外に出た。
アミラ 「本当にやるのか?」
ビッグ 「別に、たかがFランクの冒険者だ、Aランクのお前がビビる必要はないだろ?」
実は、ビッグは、途中どこかでリューを殺し、マジックバッグを奪うつもりだったのだ。。。
その計画を聞いた時、攻略の途中で人数が減るのは危険じゃないかとアミラ達は反対した。殺るにしてもせめて攻略完了後の帰路にしたほうがよいのではないかと。
だがビッグは、リューはしょせんFランクであり、元から戦力としては数えていない。あのマジックバッグさえあれば、リューなど居なくとも自分たちだけで踏破できる。ただの荷物運びのリューに分け前を与える必要などないと言うのだった。
アミラ 「だが、殺すのはやりすぎじゃないか?」
ビッグ 「お前、奴隷落ちするところを親父に救われたのを忘れたのか?借金はまだ残ってるんだぞ?」
アミラは、過去にダンジョンで大失敗し、多大な借金を負って奴隷落ちしかけた事があったのだ。それをビッグの父親が肩代わりして救った。その時の恩を返すため、アミラはビッグとパーティを組む事を引き受けたのである。
ビッグは、リューに渡した食事に睡眠薬を混ぜておいた。さらに、チャチャに命じて、眠ったリューにスリープの魔法を掛けさせ、より深く眠らせる念の入り様だった。
Fランク相手である、Aランクの自分たちが負ける事はありえないので、直接手を下してもよかったのだが、より自然に見えるように、リューを置き去りにすることにしたのである。
ビッグ 「ダンジョンの奥深くで、冒険者が行方不明になることなんて、よくあることだろう?」
ビッグはいやらしく笑った。
ジョジョ 「やり方が回りくどくないか? たかがFランク冒険者、正面から戦ったってオレたちの相手になるわけがない、サクッと殺して捨てていけばいいだけだろう?」
ビッグ 「簡単に殺してしまってはつまらんだろう? 俺はアイツが絶望して泣き叫ぶのが見たいんだよ。見れないけどな、想像するだけで楽しいんだよ。」
ビッグはチャチャに命じて、眠っているリューにさらにパラライズ(麻痺)を掛けさせた。そして、魔物を呼び寄せる香を置き、リューを置き去りにしたのだった。
実はリューは、ビッグがリューを殺しバッグを奪う計画をしているのを、最初から知っていた。
ビッグの悪意を知った上で、誘いに乗ったのである。
神眼の能力によって、リューは相手の心をある程度読めるのである。ビッグと再会した時、過去の仕打ちについて謝るビッグの言葉が、実は上辺だけのもので、心の中ではリューの事などなんとも思っていない、むしろ憎しみさえ抱いているのを、実はリューは心を読んで知っていたのである。
ビッグにとってはリューは今でも奴隷に過ぎないのだ。
奴隷に対する暴行が父親にバレ、リューは解放されてしまったが、その時父親に酷く叱責されたことを、ビッグはリューのせいだと逆恨みしていたのである。
リューを奴隷にしていたぶっていた時、ビッグの加虐嗜好は満たされ、最高に楽しかった。
ビッグは、自分が父の後を継いで領主になったなら、地下に拷問部屋を作って、なぶり殺しにしても問題ない人間を集めて楽しむつもりだった。
その時は、再びリューを探し出し捕らえて、嬲りものにすることを夢想したりもしていたのだった。
ただ、思いのほか早くリューとの再会はやってきた。
さすがにまだ父親は健在で、自分の趣味を満たすための地下牢も準備できていない。
できるだけ早く領主の座を譲ってもらうためにも、まずは冒険者になって結果を出し、父親に力を認めさせる事が先決である。
そして、冒険者の活動をするに当たって、リューの持っているマジックバッグは非常に魅力的であったのである。
リューを嬲らずに殺してしまうのは少しもったいないが、高性能なマジックバッグを手に入れられるなら、今後の利益は計り知れない。
寝たふりをしていただけのリューは、ビッグ達の会話もすべて聞いていた。バッグもあえて奪いやすいように少し離れた場所に置いておいたのである。
睡眠薬を入れる事は分かっていたので、食事は食べたふりをして亜空間にすべて収納した。胃の入口を亜空間に接続したので、食べたものはすべてそこに入ってしまうのである。(その分腹は減るが。)
また、魔法を使うことも分かっていたので、自分の身体の表面を亜空間に繋げておいた。スリープ・パラライズの魔法は、すべて亜空間の中に放たれ、リューの身体には届かなかったのである。
バッグを持ってビッグ達が去っていくのを確認してから、リューは目を開けた。
しかし……また、ダンジョン内に“置き去り”である。
流行っているのか?
案外、ダンジョンに行って帰らない冒険者は、魔物ではなく人間に殺されている者は思ったより多いのかもしれないとリューは思った。
前世から含めて、一番怖いモンスターは人間なのであると、リューはつくづく思うのであった。
― ― ― ― ― ― ― ―
次回予告
ビッグの最後
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます