第19話 幼馴染の婚約者に捨てられたリュー

ケイトはリューが育てられた商家の隣の家の子で、リューと同い年であった事もあり、赤ん坊の頃から交流があった。

 

幼い頃は一緒に遊び、大きくなったら結婚しようねと言いあうほど仲が良かった。

 

学校に通うようになってからも二人の仲は変わらず良かったが、やがてリューが家から追放され奴隷となった事で、そのまま疎遠になってしまったのだった。

 

だが、ここミムルの街で、冒険者としてケイトとリューは再会したのだ。

 

久しぶりに会った二人は、数年間のギャップもなかったようにすぐに打ち解け、昔のように仲良く付き合うようになった。

 

幼い頃、いつも優しくリューを庇ってくれたケイトは、成長しても変わっていなかった。自分の無能を嘆くリューに、頑張って努力すればそのうち強くなれると励ましてくれたのだった。

 

いつか、立派な大人に、強い冒険者になってケイトと結婚したいと思い、リューは必死で頑張った。

 

ケイトの幼い頃に交わした結婚の約束は、幼児期の他愛ない約束に過ぎないが、いつかそれが本当になればよいと願って努力していたのである。

 

だが、努力が実る前に、リューはパーティをクビになってしまった。

 

追放は仕方がない。

 

彼らが上に行くためには、自分が足枷になってしまう。リュー自身もそれは納得している。

 

ただ、それでも、リューはケイトは慰めてくれるだろうと思っていた。

 

ギルド併設の酒場で、パーティ追放宣言を受けたあと、残ったケイトにリューは言った。今はだめでも、自分も頑張って、いつか追いついて見せるから、それまで待っていてほしいと。

 

だが、それを聞いたケイトは呆れたように言った。

 

ケイト 「うーん、そういうの、いいから……」

 

リュー 「え?」

 

ケイト 「悪いけど、私、マークと付き合ってるんだ。」

 

マーク 「そういう事、悪いな、リュー。」

 

いつのまにか現れたマークが、ケイトの肩を抱きながら言った。ケイトもマークに頭を預けて幸せそうな顔をする。

 

リュー 「ご、ごめん、俺、無能だから、しょうがないよね、でも、今はダメでも、頑張って努力して、いつか……」

 

ケイト 「だから、そういうの、もういいって!」

 

ケイトが語気を強めて言った。

 

ケイト 「もしかして、大人になったら結婚しようなんて約束、本気にしてないよね?あんなの、子供の頃の戯言だから。」

 

優しかったケイトの豹変に戸惑うリュー。

 

ケイト 「昔、アンタが奴隷落ちしたときは気の毒とは思ったし、だから冒険者として再会したあとも優しくしたけど、勘違いしないでよね!」

 

ケイト 「あんたが奴隷落ちした時、何もしてあげられなかった事、少し罪悪感もあったから優しくしてあげたけど、アンタのことなんて何とも思ってないから!」

 

ケイト 「はっきり言うけど、あたし、無能な男は嫌いだから。」

 

ケイト 「アンタの無能は子供の頃から知ってたけど、冒険者になってたから、少しは努力して良くなったのかと期待したけど、やっぱり何も変わってなかったじゃない。」

 

ケイト 「リュー、あんた冒険者辞めたほうがいいよ。このままじゃ、いずれ死ぬよ? 今日はアンタにそれ言うために残ってたんだ。じゃあね!」

 

続けざまにズケズケと言い放ち、放心状態のリューを置いてケイトとマークは立ち去った。

 

そのうち、周囲で見ていた野次馬の冒険者達が自分を指差して大爆笑しているのに気づき、真っ赤になって泣きながらギルドを飛び出したのであった。。。

 

― ― ― ― ― ― ― ―

 

次回予告

 

幼馴染パーティの後悔

 

乞うご期待!

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る