第14話 毒を盛られたリュー

ヨルマ達をダンジョンに置き去りにした数日後の夕方、街の食堂で食事をしようとしていたリューは、食事に毒が盛られている事に気付いた。


おそらく、正面から戦っても、不意を突いて闇討ちしても、どうしても敵わない事を悟り、最後の手段として毒殺を考えたのだろう。


どんな強い武芸者も、殺した相手の遺族に恨まれ、最後は毒殺されて終わったという事例は多い。


だが、リューには近未来の危険を察知する予知能力がある。毒も察知できるのである。これは、リューの持っている「神眼」のスキルの一部であり、常時パッシブで発動している。


色々なモノを高度に鑑定できる「魔眼」というスキルがあるが、「神眼」はその上位スキルである。魔力を使わず「神力」を使って行使されるスキルであり、魔力しか知らない者にはその能力の存在すら知る事はない。


だがそれを知っていたリューは、あらゆる毒に対する耐性と治癒能力を授かっていた。だが、だからといってわざわざ毒を食べる気にはなれない。


リューは神眼をフルパワーで発動させた。神眼がフルに発動するとリューの瞳が金色に代わる。この状態では、周囲の人間の心の中まで見通せるのだ。


すぐに毒を盛った人間とその協力者は特定された。やはり、ヨルマ達の遺族だったようだ。殺されて当然の連中ではあったが、遺族はやはり、恨みを抱く。リューを殺そうとして返り討ちにあったのだから自業自得なのだから、逆恨みでしかないのだが。


遺族にまで恨みはないが、暗殺という手段を用いるような相手を、恨みを買ったまま生かしておくと、後々問題が起きる可能性が高い。自分は大丈夫でも、自分の周囲の人間に被害が及ぶ可能性がある。


リューは銀貨をテーブルの上に乗せ、黙って席を立った。店の奥では少し騒ぎが起きているようだ。厨房の料理人の一人が倒れたためである。だが、リューは気にせずそのまま店を出た。


リューに出された料理は空になっていた。毒を盛った店員とそれを依頼した遺族の胃の中に直接料理を転移したのだ。


店員のほうは金を積まれて無理やり頼まれただけだったようなので、毒料理の転移は少量だけにしておいた。苦しむだろうが命は助かるだろう。


もしかしたら、毒の苦しみを身を持って体験した事がトラウマとなって料理人を続ける事ができないかも知れないが……乗り越えられるなら、また続けられるかも知れない。


反省して、今後、二度とそのような事はしないでくれる事を祈るが。次に見つけたときは容赦はしない。本来、毒を客に出す料理人などあってはならないのである。


とは言え、冷静に考えれば、今後、あの店にその料理人が復帰したとしても、毒を盛った料理人の出す料理を食べる気には正直なれない。もし生き残ったら、やっぱり、後で訪ねていって“お話”をしようかな、とも思うリューであったが。


結局、その後その店でその者の姿を見る事はなかった。命は助かったらしいが、その後、店を辞め故郷に帰ったという噂であった。



― ― ― ― ― ― ― ―


次回予告


衰退していく冒険者ギルド?!


乞うご期待!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る