「おう。女子三人で、かしましいことで」


「茶化すなよ」


「戸籍だろ。調べはついてる。あの大学生。だめだったら違法な治療にでも手を染めるつもりだったのかねえ」


「仕方ないだろ。愛は人間を狂わせる」


「まあな」


「戸籍をひとつ。安定したやつを、その病院の患者に」


「いいぜ。この前の盗んだ奴から押収した戸籍で、それっぽい名前をひとつ回してやる」


「よし。これで終わりだ。すべてまとまった」


「おい」


「なに?」


「やっと、殺さないように、なってこれたじゃねえか」


「なんの話よ」


「この前の強盗。ひとりも死んでなかった」


「あなたは戸籍盗んだ人間撃ち殺したじゃない」


「距離的に仕方なかったんだよ。警察マッポ拳銃サクラだと必中一撃必殺ワンショットワンキルしか狙えない。せめてフルオートを寄越せよ」


「殺さないんだよ日本の警察は。弾を散らすこともしない」


「はあ。まあ、いいさ。俺は、おまえが殺さなくなってきたのが、嬉しいよ」


「なんでよ」


「戦場の空気が、抜けてきたんじゃないか?」


「まだ、分からないわ」


「待ってるよ。おまえが、普通の、ちょっと時間をいじくれる時計屋になるまで、な」


「これだけ待たせてるのに。まだ待ってくれるんだ」


「好きだからな。待てるさ。最近は、待つのも楽しくなってきたよ。流れていく時間を、希望をもって、見つめるのさ。おまえのことを考えながらな」


「もう少し、だと、思う。待ってて。必ず、戦場の空気を全部抜いて、一人の女として、あなたに逢いに行くわ」


「いやいや。俺が来るよ。おまえは時計屋で待ってな」


「うん」


「またな。愛してるぜ」


「私も。待たせてごめんね。待ってるから。身体洗って、綺麗な下着つけて。ええと、あとなんだっけか。そうだ。歯磨き。毛の処理も」


「なんの話だよ」


「同性とベッドで寝るために、必要なもの一覧」


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