第11話 息をした。
生きにくい世界で息するの。
少年は今日も笑ってる。
笑って笑って保ってる。
周りはみんな同じ顔で。
同じように笑うよ。
「馬鹿みたい」
少年の世界の境界線、
誰も入れない。
的確に適度な距離を保ちつつ、
遠くから笑いかける少女。
ねえねえ。
「今日は誰が泣いたの」
傷付けられた、傷だらけ。
痛いのは傷だけ。
傷なんてすぐに消えるよ。本当だよ。
痛い痛いこの傷は、
いつか消えてしまうけど。
忘れてしまえば簡単で、
すぐに違う痛みが生まれるのに。
治そうと思って、足掻いてる。
誰かが伸ばした、その手を。
はねのけたかった、それなのに。
そんな強さ、持ってないでしょう。
「わかってほしいと思ってない」
誰に何て思われたって、言われたって。
別にね、別にね、気にしてないし。
大丈夫だよ。大丈夫だよ。
全然痛くなんてないよ。
選んだのは、結局やっぱりあきらめること。
それは全然、嬉しいことじゃないじゃない。
「本当に?」
嘘ついてるよ。
いっぱいいっぱい、嘘ついてるよ。
それはそれでいいじゃない。
もう、そんなんでいいじゃない。
少年の自己満足、自己完結。
「僕はこれで十分だ」
少女は笑う。笑って笑って笑う笑う。
「優しくないから笑ってあげる」
沈んでくんだ。息、苦しいんだ。
不器用に折り合いをつけながら、
どうやって生きてるの。生きてけてるの。
難しいでしょう、大変でしょう。
「信じてるから、助けないよ」
もう限界かと思ったけど。
それで終わってしまうのは、
あまりに救いがないじゃない。
そうなんじゃない、もう1回。
差し伸べられた小さな手。
またはねのけたいって、思ってそうね。
まだ挑むつもりで戦ってんの。
もう嫌なんでしょう、戦うの。
もう十分なんでしょう、傷つくの。
それでも世界の中で、息していたいの。
「もう十分だ」
笑ったよ。あきらめたよ。
なくしたよ。悲しくなんてないの。
「傷だらけ、でも、笑えるよ」
今日も息して。生きてるよ。
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