第3話 雫
まるで弓矢のように、言葉が私の体を貫くのです。
とても早くて正確で、おまけに先が、酷く鋭い。
ずぶりずぶりと、身体に入っていくのです。
柔い皮膚に食い込んで、その先の心臓を目指すのです。
確実に、その心臓の真ん中を突き刺せるように。
だからあんな眼をしているのです。
どろりと濁っているくせに、なぜかぎらぎら輝いて、獰猛に狡猾に光っている。
あんなに人工的な野性の眼は、きっと狼もしないでしょう。
その眼を持ったあなたは、大きく口を開けながら、息を吸って、もう一度。
私を深々と貫いた弓矢を。あと何度放つ気でしょうか。
その弓矢が刺さるたび、私の身体は黒く染まっていくというのに。
弓矢の毒が侵食し、その部分から黒く染まって腐食し壊死して。
最後に私のこの眼も溶かすのでしょうか。私の口も黒い毒を吐くのでしょうか。
どろりと、あなたの眼がとけ白く透明な雫が垂れる。
そんな綺麗なものが、あなたの眼からも出るのですね。
ぎりぎりと引き絞られる弓矢の前。私はそんなことを思ったのです。
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