第32話 いなごとりと棒のぼり 嫌いだよ
まりちゃんの袋には、もうずいぶんといなごが入っているみたいだ。
ぼくのには2匹だけ。きょうもたんぼにやってきた。
金色に光る田んぼ。いねにはいなごがたくさんいる。飛び回ってるのを手でえいってすばやくとるんだ。いなごをつかまえようとして追いかけるのは好きだけど、捕まえた時、手のひらでがさっと動く時がいやなんだよ。
「みんなあ!あぜでとるんだよー」しま先生が大声を出したけど、稲の穂をふんづけちゃったりする。
たっくんもわざとたんぼに入りながら、じぐざぐにけらけら笑いながら走ったりしている。
とうとう刈ってある稲のたばのところに飛び込んで、しま先生がものすごく怒っていた。
女の子たちはせっせと袋をいっぱいにしている。せいこの袋も、ようちゃんのももうだいぶ重たそうだ。
「ほれ、けい、がんばってとんなね。ほれそこにとまってるよ。」と先生が指差した。
しょうがないな、袋を落とし、両手でとった。だれか袋開いて!とさけぶとえみちゃんが、
袋を開いてくれた。「けいちゃん、まだこんだけ、がんばんなね」
あ、飛んでる! 思わず片手を出したら握った手にちゃんとはいった。えみちゃんと顔を見合わせて笑っちゃったよ。あー、でも、いなごをつかんだ手が気持ち悪い。
布袋にそのままいてておくと、いなごはふんをするから、それから料理するんだって。
ひなぎくに帰って、こないだから採って干しといたいなごの足と羽をむしる。
さの先生が、「栄養たっぷりなんだよ。岡田さんに美味しく炊いてもらおうね。」
ってせいこたちと話している。
ボールにむしった羽と足がどんどんたまっていく。
。
午後は、来週の運動会の練習で、リズムたいそうとかけっこと登り棒をした。
障害物競走は、平均台のところまでかけていって平均台を渡り、大きな網をくぐりぬけ、それから登り棒を登って降りて、あとはゴールまで走り抜ける。
ぼくは、かけっこは速いのに、登り棒はてっぺんまでなかなか上れない。
手がすべるし、足もすべる。
ようこってどうしてあんなに早く登れるんだ?おさるみたいだ。
もうみんな登って降りて、一周走って戻ってきた。
「けい、手につばつけてのぼってみな。」こないだまでのぼれなくてべそべそ泣いていたこうじが、今日は簡単に登れたので、ぼくにいろいろ言う。
「けい がんばれ! 早くのぼっちゃわないとくたびれちゃうよ、ぶらさがってるうちに。」
だって、手がすべるんだ、片手を離したらおっこっちゃう。
みんながぼくを見ている。
すべって下まで落ちてしまった。またすぐに登ろうとしたけどすべる。
「けい、少し休んだらいいよ。」としま先生が言ったら、涙が出てきた。
先生の手を払った。先生が、ぞうきんを持ってきて足をぬらしてくれた。
てっぺんまでいけた。でも先生が少し足を押したんだ。
先生が「がんばったね。」と笑ったけど、ぼくは黙ってコースを走った。
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