吉本真央 ⑪

結局、正午を過ぎても彩美は来なかった。

まったく、欠席するなら連絡をくれればよかったのに。

不満に思いつつチャットの入力欄を叩く。


『彩美さーん。今日はもう来ない感じ?』


窓から射し込む陽光に目が眩む。

窓際の生徒にカーテンを閉じてもらいたいけれど…。

光を避けるために頭からブランケットを被った。


私の昼休みは毎日彩美と二人きりだった。

彩美は数週間に一度休むが、彼女がいない日の私は誰とどう過ごしていたのか…。

何故か思い出すことができない。

仕方なくお弁当を広げる。

食べ終わったら午前の授業の復習をしよう。

そう考えていると、


「ねぇねぇ真央ちゃん、ひとり?」


今朝声をかけてくれた女子グループだ。


「よかったらお昼一緒に食べない?」


「太陽、眩しいの?カーテン閉めてきてあげよっか。」


「だ、大丈夫。私も一緒にお弁当、食べたいな。」


勿論、と微笑んだ彼女らを見て自然と頬が綻ぶ。

その時、


「わたくしもご一緒していいかしら、吉本さん。」


玲瓏な声が響き、その場の空気が凍りつくのを肌で感じた。


「ご、ごめんね真央ちゃん。私たち席に戻るね。」


一目見ただけで分かった。

圧倒的な美しさと魔性の視線。

彩美の言っていた転入生はきっと彼女のことだろう。


「ね、こっち。来てちょうだい。」


半ば強引に手を引かれ、教室から出る。

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