佐野良樹 ③

久しぶりに登校してみたが、夜通し起きていたので瞼が重い。

特に話しかけてくる人もいないので、朝のホームルームが始まるまでは机に突っ伏す。


「みんな席に着けー。ホームルームを始めるぞ。」


岩白先生が教室に入ってくる。

そういえば担任だったっけ。


「…っとその前に、転入生を紹介する。おーい、入っていいぞ。」


先生が呼ぶと、女子生徒が初々しく敷居を跨いだ。

色白で体は細く、濡羽色の長いストレートヘアを耳の下で二つに結んでいる。


「それでは自己紹介を頼む。」


彼女は小さく返事をすると、紅梅色の薄い唇を開いた。


「須田川亜也と申します。聖モーリノブ女子学院から転入して参りました。

皆様、よろしくお願いいたします。」


「え、聖モーリノブ!?」

「正真正銘のお嬢様だよね…!」


ざわつく教室。僕は彼女の名前に心当たりがあった。まさか…


「みんな須田川と仲良くするんだぞ。

須田川、佐野の隣が空いているから今日からそこが君の席だ。」


「はい、先生。」


彼女がミステリアスな笑みを浮かべてこちらに向かってくる。

僕は急いで目を逸らした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る