怒る勇者とぽんこつ女神官
「ぷっ……、防御魔法もろくに使えないキミが加わったところで何だと言うんだい? キミがそこまで馬鹿な女だとは知らなかったよ」
肩をすくめて、嫌みったらしい表情を見せつけるロベルト。
そんな彼にセシルは優しく微笑み返す。
「ロベルトさん。たいして役に立たない私を、パーティに加入させていただいた事には感謝しています。たとえそれが下心があってのことだったとしても……」
「――ぐッ」
「……でも、私も貴方に謝らなければならないことがあるんです。私はレンさんと一緒に旅を続けたいと思ったから、パーティに志願したんです。貴方の強さに憧れて……という志願理由は嘘だったんです。だから……私たち、おあいこですね?」
「――ぐッ! 勇者であるこの俺を愚弄するのかーッ!」
とうとうロベルトの怒りが爆発し、剣をその場で振り下ろすと、その衝撃波が俺たちに向かって襲いかかる。
「主よ我らを護りたまえ――」
だが、両手で杖を構えてセシルが呪文を唱えると、衝撃波は俺達の手前で二股に分かれ、戦闘フィールドの結界障壁に吸収されていく。
観衆が騒然となる。
障壁がなかったら進行方向にいた観衆が吹き飛ばされていたところだ。
ロベルトは口をあんぐりと開けて放心状態になっている。
「私、すごくないですか? こんな魔法も使えるようになったんですよッ!」
そんな状況になっても、セシルはまるで親に褒めてもらおうとする幼子のように、目をキラキラさせて俺を見てくる。
「確かにすごいけどよ……。お前、魔法詠唱の省略とか、いつ覚えたんだ?」
「レンさんに教えていただいたんですよ?」
セシルはきょとんとした顔で首を傾げる。
だが、俺には彼女に魔法を教えた覚えはない。そもそも、自発的に魔法が使えない俺が教えられる訳がないし……う~ん……
「あの時……初めてだったんです……私……」
「なっ――!?」
胸に手を当てて、ほんのり頬を赤らめるセシル。
「レン、てめぇぇぇーッ、やはりセシルに――」
「いや俺は手は握ったけれど――」
このやり取り、いったい何度目なんだ?
そして今度こそロベルトの怒りは頂点に達したらしい。
「もういい! 貴様ら、まとめて斬ってやる! そこへ並べぇぇぇーッ!」
などという、無茶苦茶な注文をしてきた。
「嫌です、並びません! レンさんも私もパーティを抜けたのですから、貴方の指示には従いません!」
こんな時でも律儀に言葉を返すセシルは、やはりどこか感覚がズレているよな?
そんな彼女の態度に、ますます怒りを増幅させたロベルトは、剣を頭上に高く構えて――
「ドラゴンを一撃で斬り倒した勇者の技を味わうがいい! いくぜ、月虹龍殲暁刃――ッ」
刀身をバリバリと放電させながら、剣先で弧を描いて剣を振り下ろす。
「主よ我らを護り――」
セシルが両手で杖を構えて呪文を唱える。
だが、これはさすがにヤバい。
杖を握るフレアの指に、俺は手を重ねて――
「
彼女から引き出せる、ありったけの
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