追放宣告

「やりましたよレンさん! わたし……初めて皆さんのお役に立てました!」


「お、おう……良くやったな」


 抱きついてきそうな勢いの彼女から俺は思わず目をそらし、そう答えた。

 お年頃の女の子に、魔獣の体液をべっとりと浴びせてしまったことについては、本当に申し訳ない。


 その直後、我らが大将・ロベルトがシェルターの中へと飛び込んできた。

 彼は辺り一面に飛び散った魔獣の肉片をみて、眉をピクリと動かす。


「これ、キミがやったのか?」


「いいえ、私とレンさんで倒しました!」 


「レンが……?」


 ロベルトは何か言いたげな表情をうかべ、俺とセシルを見比べるように視線を動かした。


「レン、回復薬をよこせ!」

「レン、俺の方が先だ!」

「くそっ、腕が使い物にならなくなっちまった! すぐに手当を頼む!」


 消耗した戦士たちが続々とシェルターに駆け込んできたので、あっという間に回復薬は最後の一滴まで使い切ってしまった。


 ちょうどいい。

 この現場をロベルトに見せられたのなら話が早い。  


「ここは見ての通りの状況だ。ロベルト、今すぐ撤退命令を出してくれ!」


 俺はロベルトに進言した。

 だが、肩に置いた俺の手は、パシッと弾かれてしまう。


「だからあんたはその年になっても荷物持ちのままなんだ! 俺たちの力は、まだまだこんなもんじゃない! みんな、そうだろう?」


 ロベルトがシェルターに集まった仲間たちに呼びかけると、一気に士気が高まっていく。

 みんなロベルトの強さと男気に惚れ込んでパーティに加わった仲間たちだから、死なば諸共という気構えをもっている。それはこの俺も同じだ。


 でも、今回の戦いは無謀だ。

 このパーティには、単独で魔女を討伐することなど無理だったのだ。


「なあロベルト……悔しいのは分かる。でも、今回は失敗だったとしても、また装備を整えてリベンジすれば良いじゃないか! 場合によっては、他のパーティと合同チームを組んでさ……。どうだ?」 

 

 シェルター内にはすでに12人の仲間たちがいた。

 みんな装備はボロボロで、仲間にもたれかかることでようやく立っていられるぐらいに傷付いた者もいる。

 これ以上決断が遅れると手遅れになってしまう。


 俺はこんな所で終わりたくはない。

 せっかくできた仲間を失いたくもない。



 早く決断してくれ――




 ロベルトはゆっくりと口を開いた。


「レン=コンファルト、お前を我がパーティから追放する!」  


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