日記

健さん

第1話

俺とあつしは一応大企業といわれている”富士ベロックス”の寮に、一緒に生活している。同期である。今年で同じ30になるのだが、二人共彼女はいない。休みの日は専ら俺は近くのパチンコ屋でほぼ1日そこにいる。あつしはというと、ヤツは1日寮で、ネットゲームに熱中している。よく飽きないものだと思う。一緒の部屋でも、行動は、別々なのである。食事は、ヤツは寮にある食堂で済ませてるらしいが、俺は、たまに利用するが、いつも行く近くの定食屋。よって、ヤツとは、常に同じということはないのである。でも、夜部屋にいる時は、たわいのないことをよく喋る。”気”は合うのである。職場は、別々。俺は第2工場。ヤツは第3工場。昼は会社の食堂だが、たまに顔を見るが、一緒のテーブルで食べることはない。同じ工場内の同僚と食べることがほとんどである。さしずめ、俺がアウトドア派なら、ヤツは、インドア派だろう。顔、スタイルはどちらかと言えば、ヤツの方が、かっこいいかもしれない。自分では、ジェームス デイーンに似てると豪語してるが、、。あと、ヤツの秘密?というか習慣だな。寝る前に必ず日記をつけるのである。しかも毎日かかすことなく。よくまあ、書くことが、あるなあと思う。いつも10分くらいかけて書いている。俺だったら、”今日は疲れた”で、2,3行で終わりだ。しかし、日記なんかつけて一体どうするのだろうか?何かの本に書いてあったのを思い出したが、日記をつけることで、脳の活性化、文章力の向上、ストレス解消に効果があるらしい。_____ ある日曜日 __________________俺たち2人は珍しく一緒にテレビを見ていた。「あつし、今日夜焼肉でも食べに行かないか?」「昨日から焼肉でも食べたいと、思ってたんだ。行こうぜ。」あつしは、少しでた腹をさすりながら言った。_______夕方__________あつしの携帯電話が鳴った。「もしもし。」「あつしか?久しぶりだなあ。俺だよ、高山だよ。」(高山とは、あつしと高校の時の同級生で、よく遊んだ。「高山かあ。久しぶりだなあ。」「車、新車で買ったんだけど、ドライブ行かないか?」あつしは、俺の顔見ながら考えている。「今夜用事があるんだよな。」「実を言うと、昨日会社から、辞令が出て、来週から、韓国に異動になったんだ。」「え!韓国か?」「当分会えるかわからないからさ。それで電話したんだけど。」俺は察してあつしに言った。「どうしたんだ?」あつしは申し訳なさそうに言った。「こいつ、高校の時の友達なんだけど、韓国に仕事で異動になったらしくて、今夜、ドライブでもしないかって言っているんだけど。焼肉食べに行く約束だろう?」「何言ってるんだよ。行ってこいよ。焼肉なんて、いつでも食えるじゃないか。」「そうか悪いな。近いうち行こうな。」そして、あつしは、その友人のところに行った。俺はその夜、行きつけのスナックに飲みに行った。いい気分で飲んでいると携帯電話が鳴った。(誰だろう?寮の電話番号だ。何だろう?)「もしもし。」「小川君大変な事になったわ。」(寮のおばちゃんだ。)「一体どうしたのですか?」「あつし君が、あつし君が、、」「あつしがどうかしたのですか?」「あつし君が交通事故に遭って、、、。」「えっ!!あつしが??病院はどこですか?」電話口では、嗚咽が聞こえる。「即死らしいの。」ほろ酔いだったが、すぐに覚めた。とりあえず、すぐさま寮にもどった。食堂では、みんな集まっていた。会社の上司もいる。そして上司に言った。「あつしが、、あつしが、交通事故で即死したって連絡があったんだけど、嘘でしょう?」すると、顔をこわばらせながら、その上司は言った。「おおまかな事は警察の方から電話で聞いたが、あつしと、もう一人の友人は、山梨の山中湖の近くらしいが、曲がりカーブのところで、スピードをだしすぎたのだろう、対向車のトラックと正面衝突したらしい。」俺は、信じられなかった。と、言うか信じたくなかった。数時間前には、一緒にいた人間が死ぬなんて。俺は、力が抜け”幽霊”のように、部屋に戻った。電気をつけて、部屋の中を見ると、あつしの食べかけのポテトチップスがあり、ジュータンには、食べカスが散乱していた。んん?よく見ると、あいつが日頃使ってる机の2番目の引き出しが開いている。見てくれとばかりに。中には、いつもつけてる日記帳だ。俺は、悪いと思いながら何ページか読んだ。昨日の日付けだ。(たまには、同室の小川君と、焼肉でも食べにいきたいな。今度誘ってみるかな)って書いてあるじゃないか。あいつ、、、。何か涙が出てきた。次のページ?今日の分?じゃないか。何か書いてある。あいつ、いつも寝る前に書いてたのに。(小川君、今日は行けなくなってごめん。焼肉食べたかったなあ。俺は、”旅立つ”から、もう会う事もないけど、一緒に焼肉食べれなかったのは、悔いが残るけど。今まで、ありがとう。元気でね。)涙で最後までよく読めなかった。”気配”で、背筋がゾッとなった。気のせいかもしれないが、今、”ヤツ”が俺の後ろに居た気がした。      (完)

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日記 健さん @87s321n

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