クロックワーク・アンダーテイカー
私の勝手な思い込みですが、会話のみでお話を展開させるのって物語に躍動感を与えにくくてあんまり多用するのって、どうなんだろうと思ってしまいがちです。
ですがこの作品においては、狭まるどころか会話を一つ、また一つと重ねるごとにキャラ造形や世界観についてどんどん鮮明に描かれていて、どこにそんな情報量がと読み終わってから驚いてしまいました。
実は文と文の間や文字の隙間にサブリミナル効果を果たすなにかが、秘密裏に仕組まれているんじゃないかと疑ったところでした。
読み始めはちょっと不思議な世界の日常系かな、と思ったら一話ごとに別々のキャラクターに切り替わっていって最後は伏線回収というほのぼの日常ものとして高い完成度を楽しませてもらいました。
この作品のすごいと思うところはほかにもありましたが、それはきっと相手も読んでくると思い、別方向からアタックしてみます。
物語を読むうえでその人が作品を評価する点はさまざまだと思います。
読みやすさ、手に汗握る展開や心締め付けるラストなどストーリーを重視する人もいれば、文学として扱われるテーマと作者のメッセージ、そして表現技術の巧さを重視する人もいると思います。
この作品においてはキャラクターの存在感というのがなにより光っていると感じました。具体的な描写を省いた場合、どんな容姿でどんな声をしているのかはすべて読み手に任せることになってしまい、ぼんやりと浮かぶ人物像はどこか曖昧でお昼寝で見た夢みたいです。
ですが、読み終わってみるとどのキャラクターも確かな形を残していることに驚きます。どんな顔立ちなのか、具体的に浮かべようとするとのっぺらぼうか消しゴムでこすって消えたみたいに全然イメージできないのに、確かにそういう人がいたんだと思わせる技量は簡単には真似できないなと感じました。
きっと読み手一人ひとりに異なる人物像が描かれていて、それでまた違う感動的なシーンが脳内再生されているのかと思うと、あえてキャラ造形を細かく設定しないのもありだなと感じます。
最後にこれは作者である春嵐さんへのパンチになりますが、執筆というか想像のスピードにいつも驚かされます。
ネコパンチ♡(←終了の印。この場においてのみやってみる)
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