第3話 修羅場シーンは回避不可

 パパとピザを食べ終わったら、『撮影の約束があるから』と言って部屋を抜け出した。とりあえず僕のアパートに帰って、これからの対策を練らなければいけない。


「ピンポーン」

「はーい」


 ガチャ


 自分の木造ボロアパート部屋ではあるんだが、何だか違和感が拭えない。


「シム!」

「サラ!」


 それからしばらくの間、僕たちは6畳間のちゃぶ台で向かい合って話し込んでいた。


「なんかさ」

「何よ?」

「さっきから話が堂々巡りしてるよな」

「仕方がないじゃない。こんな体験した事ないんだから」

「それはそうだが」

「にしてもシムの部屋、何でこんなにイカ臭いの?」

「ほっとけっつーの。サラの部屋だって○ン汁臭かったぞ」

「さいってーっ!」


 すかっ


「同じテは二度と食らうかよ」

「ちょっと、避けないでよね」

「無理言うな。それにこれはサラ、お前の身体なんだぞ?」

「う。それもそうね」

「とりあえずさ、何か参考になる映画でも見ようか」

「と言うと、やっぱアレ?」

「まずはアレだろ」


♬ボクら何でもないや〜♬


「まあ、これはあくまでも作り話だしな」

「あまり参考にはならなかったわね」

「次、見るか?」

「そうね」


♬変わらないものを〜♬


「何でタイムスリップ物なのよっ!?」

「いや、これはこれでいいだろ」

「イミわかんない」

「とりあえずチャリで2ケツは鉄板だな」

「ますますイミフ」

「んじゃ、次行くか」


♬フォエバーフレンー♬


「このアニメいいよな」

「私も好き」

「あの後、二人どーなんだろ?」

「きっと、またどこかで巡りあえるわ」

「そうだな」

「・・・・・」


「! 何を僕(私)たちマッタリしてるんだー(のよー)!!」

「日が暮れちまったよ」

「こうなったらセカンドオピニオンね」

「どーすんだ?」

「井上クンと尾方クンに相談するの」

「正気ですか?」

「仕方がないじゃない」

「まあ、そうだが」


 ピンポーン


「失礼しまっす」

「よう、何だよ。大事な相談って」

「うっ、シムさんの部屋、イカ臭いです」

「ほっとけ」

「サラさん?」

「あ、いやー」

「二人ともよく聞いて。これは真面目な話なの」

「お、おう」

「まずはこれを見てもらおう」

「わわっ! サラさん? 一体何を!」

「ちょっと、何私のブラ見せてんのよ、このヘンタイ!」

「いや、この状況を理解してもらうには、目視確認が一番かと」

「見せても何の解決にもならないでしょっ!!」

「あ、あのー。サラさん?」

「何だよ?」

「B地区がハミ出てましたが、もう一度よろしいですか? スマホに保存しとくんで」

「あいよ、ぐいっ」


 バッチーン!

 バッチーン!


「あだっ!」

「でっ!」


「やだもう、信じらんない。オトコってみんなサイテー!!」


「いいの撮れたか?」

「バッチグーです」

「よこしなさいっ! 削除削除、ぴ」

「ああっ! 僕のお宝画像がっ!」

「井上よ、案ずるな。こっちは動画で撮ってクラウドに上げておいた」

「さすが尾形先輩!」

「もーっ! 一千万円よこしなさいっ!」

「高っか!!」


 ***


 結局四人で話し合った上で出た解決策は、


 チリンチリン


「やー、気持ちイイ」

「お、おい。あまり揺らすな」

「だって風があまりにも清々しくて」

「ちょ、立つな!」


♬マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン〜♬


「なんでタイタニックなんだよ?」

「この姿勢と言えばコレしかないでしょ?」

「ちょ、ムネを当てるな!」

「ほ〜ら、ボインボイ〜ン。勃っちゃった?」

「ふざけるな!」

「あやしーんだ、ドーテー君」

「それ、今度言ったらお前のおっぱい、クラウドで晒す」

「やめてって言ってるでしょっ! このスケベっ!!」


 ぐら


「あっ!」

「ああっ!」


 どってーん


「あいたたた」

「もう、何なのよっ!」


「どうだ、戻ったか?」

「何が?」

「やっぱりダメか」

「大体、どーゆープランなんだよ?」

「一応セオリー通りにやってみたつもりだが?」

「これはマンガやアニメとは訳が違うの! もっと現実を見て!」

「そう言われてもなあ」

「そうですよ。ここはありとあらゆる方法を実践するべきです」

「と言う事は、次はアレか」

「アレですね」

「お前らの『アレ』は嫌な予感しかしないんだが」

「ねえ、アレってなんなのよ?」

「河川敷に行って、走りながら川に飛び込むんだよ」

「『時かけ』じゃないのよ」

「結構アレは効くと思うんだけどな」

「しかし夏とは言え、濡れたら風邪を引きそうだ」

「じゃあ、今度にするか」


 ***


 結局その日はいい案も浮かばず、そのままお開きになったわ。私はシムのボロアパートに戻ると、パソコンを開いて何か参考になるサイトがないか検索し始めたの。


 うーん、小説や漫画なら色々とたくさん出てくるんだけど、さすがに実体験の例は見つからないなぁ。へぇー、こう言うのって『トランス・セクシャル』って言うんだ。略して『T S』かぁ。他にシムのフォルダに何か入ってないか見てみよう。


「!」


 ヤダこれ、エッチな動画が一杯じゃない! まあ、年頃の男の子だし、当たり前の事だとは思うけど、このジャンルの広さと量にはさすがにヒいてしまうわ。やはり筋金入りのドーテー君ね。えーっと、一番再生回数が多いのはっと。「失われた楽園」か。何だ、結構マトモなの見てるじゃない。私も見ようっと。


「愛してるのは君だけだよ」

「私もそうよ。ねえ、これから私たちどうなるの?」


 そうそう、これは不倫モノってテレビで宣伝してたわね。まったく、どうしてこの世の男性は不倫なんてしたがるのかしら? まあ、私のパパも奥さんいるけど、パパの場合は完璧に夫婦レスだから、私はただのセックス相手みたいな物よね。セックスと言えば、


「んんん?」


 何だか股間が大きくなって来たわ。やだコレ、パパのより大きい! ちょっとパンツを脱いで確かめちゃお。うわ、カチカチじゃないのよ。それに握るとすごく気持ちがいいわ。パパにしてあげてる時も、パパはこんな気持ちだったんだ。左手で握りながら上下運動していたら、どんどん大きくなって亀頭が赤く膨らんできたわ。ああっ、もうガマンできないっ!


 あー、出ちゃった。すごい量ね。昨日の夢精の量もかなりだったけど、やっぱり若いってこう言う物なのかしら。それにしても何て言う快感なの? 私がイク時とは比べ物にならないくらいの達成感があるわ。えい、気持ちイイからもっかいシちゃお♡


 ***


 あーあ、どうしてこんな事になったんだ? 本当にマンガやアニメじゃあるまいし、今時のラノベだってこんな設定はありふれている。こんな陳腐な設定じゃ、今時の目の肥えた読者は食い付きもしないだろう。お、アイツ、レディコミなんか読んでやがる。ちょっと拝借。


 んんんんん?


 何だコレ? 結構ヤらしいなぁ。今時のオンナはこんなのを読んでいるのかよ。これじゃサラがビッチになるのも無理ねーわ。この僕の100年の恋も覚めそうだ。でも結構面白いモンだな。どれどれ。


 うわー、すげーハードじゃん。あれ、何だか股間が熱くなって来た。どれ、お? なんか濡れてるぞ。びしょびしょじゃんかよ。パンティ脱いで直接っ触って見よう。


 ううううう!


 おー、気持ちいいな。おや、こんな所に電マがあるぞ。よし、ちょっと使ってみるか。


 ぶぶぶぶぶ


 んんっ! すげぇな、クリトリスに当てると身体中がジンジンして来たぞ。まるで電気が駆け巡ってるみたいだ。


 ああっ!

 くたー


 そうか、これが『イク』って言うヤツか。何だか病みつきになりそうだな。ええい、もう一回スルか♡


 ***


 翌日。


「ちょっとシム。何なの、その目の下のクマは?」

「サラこそ。目が真っ赤に充血してるぜ」

「こ、これはっ!」

「お前、まさか?」

「シムこそまさか?」

「シたのか?」

「あなたもなの?」


 %$#@<>54507968sinθ cosθ tanθ・・・


 ぷしゅー

 ぷしゅー


「ま、まあアレだよな」

「そ、そうね。アレよね」

「せ。生理現象っつーの?」

「それそれ」

「出さねーと、健康衛生上よくないし」

「お肌のツヤにも関わるわ」

「サラ、週何くらいであのオヤジとヤってるんだ?」

「そ、そんなの私の勝手でしょ!」

「そうは行かねーよ。これからしばらくは僕が相手するんだし」

「う。ま、毎週土日と水曜日の夜。それに時々ラインに連絡が来るわ」

「あんなオヤジとヤルの、気が進まねーな」

「いいでしょ。イッパイお金もらえるんだし」

「このビッチ」

「ドーテーのくせに」

「おいっ!」

「あ、ごめん。お願いだから私の恥ずかしい画像を撮るのはやめてよね」

「へへへ。これでサラの弱みを握ったぜ」

「シムのアソコを晒してもいいのよ」

「それは困る」

「じゃあ、お互いにナシって事で」

「それしかないな」


 こうして僕たちは、お互いの秘密を共有する事で親密さを増して行った。これは誓って言える事だが、僕は決してこんな関係を望んでいた訳じゃない。出来ればもっと純粋な恋愛がしたかったんだぁっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る