第131話 出現、秘密の何か!

プスプスと全身から黒煙を立ち昇らせて倒れている暗黒騎士と女神を取り敢えず中へと運び込む勇者達。

安全圏なのを確認して二人に魔法使いが回復魔法を施している。


「いやぁ~、対魔族で難易度変わるとか想定外だったね」

「暢気かッ!? え、いきなり二人も死にかけてましたよね、今!?」

「大丈夫大丈夫、二人とも頑丈だからこの程度じゃ死なない死なない」


あっけらかんとした様子で二人の様子を眺めている勇者にドン引きする学者。

案外、この娘が一番まともじゃないかもしれないと今更気づく。


「ウッ…くぅ…いきなり酷い目にあった…」

「何で私まで巻き込むんですかこの魔族め…」


そんなやり取りをしている間に回復魔法の効果で目を覚ました暗黒騎士と女神の二人が身体を起こしている。

ちなみに女神は電撃の影響か、金髪のウェーブがかった髪が見る影もない程の爆発ヘアーと化していたりする。


「のぁー!? 私の自慢の清楚がかった神聖な髪が! えぇい、女神パワー!!」

「そいうとこだぞ、お主」


自分の髪形に気づいて奇跡の力で元に戻す女神、信仰力の無駄遣い。


「よし、やっぱり二人とも元気そうだね。 じゃあ探索再開!」

「鬼か…」


二人共意識もしっかりしているのを確認するとさっさと探索再開し始める勇者に、

いつもの事なので額を押さえつつ着いていく魔族娘達。

魔法使いに支えられて立ち上がった暗黒騎士達もしょんぼりしつつも勇者の後を追いかける。


「え、いや、えっ? いや、扱いが雑過ぎませんか!?」

「いつもこんなもんであります!」


1人だけ置いてけぼりになっている学者の腰(肩にまで手が届かないので)を叩いてコボルトコーギーが学者を促すのだった。


………。


「あ、よいしょぉっ!」


勇者が起動した金属製の小型ゴーレムを両断する。

大広間らしき場所へと出た勇者一行の前に進路を妨げる様に通路の奥から湧いて出てきたそれらは並の冒険者ならば苦戦してもおかしくない存在だが、既に大きな戦いをいくつか経験している勇者達の相手に成る程ではなかった。


「す、凄い…ただの変な集団じゃなかった…」

「いや、うん…そう思われるのも否定は出来ぬが…」


非戦闘員である学者の傍に来たゴーレムの対処だけしている暗黒騎士は、彼女にそういう目で見られていた事への羞恥心を感じていたりする。


「お師様、こちらも片付きましたの!」

「ほいほい、こっちもお終い!」


魔法使いと魔族娘が小型ゴーレムを掃討して戻ってくる、一方、勇者は何処かいつものキレがなく手間取っているようだったが無事に片づけて戻ってくる。


「どうしたのだ勇者よ? 具合でも悪いのか?」

「いやぁ、そういう訳じゃないんだけど…此処に入ってから凄く…」

「……? いや、別に何も聞こえんが?」


不快そうに片耳を抑えて眉を顰める勇者の様子に暗黒騎士が他の面子に振り返るが、全員同じ様に何も聞こえないと首を横に振る。


「まぁ、『蕃神』の声は適性者にしか聞こえませんからねぇ」

「女神であるお主にも分からんのか?」

「ハイ、全く!」


何故か胸を張る女神。


「何故に威張る…しかし、勇者が不調なのは厄介だな。

 どうにかならんのかそれは?」

「勇者に聞こえてるのは人口精霊の声でしょうから、具現化させれれば多少は緩和させれるでしょうけど」


深く考え込む女神に、現状での対処法は皆無なのが分かって頭を悩ませる暗黒騎士。


「皆さん、こちらに来てください!」


そんな中、大広間を調べていた学者が勇者一行に声をかけてくる。

何事かとそちらへと集まると、彼女は台座のようなものを調べているようだった。


「ここに古代語が刻まれているのですが、

 それに何やら適性者という文字があるんです。

 勇者さんが聞こえている声とやらにも関わりがあるのでは?」

「へぇ~、どれどれ? まぁ読めないんだけど」


台座を調べている学者の傍で勇者が特に何も考えずにその碑文が刻まれた台座に手を乗せてみる。

すると、それに合わせて台座に刻まれた碑文が輝きを放ちだした。


「ん? え、何ですこれ!? 何したんですか?」

「ナニモシテナイヨ」

「それは何かした人が言う言葉です!!」


慌てている学者の横で勇者は白を切っている。

そんな中でも輝きはどんどんと強さを増していき、

大広間全体に広がるほどの光が台座から放たれる。

光が収まり、全員が眩んでいた視界が元に戻ると、台座の上にが居た。


「よっしゃぁ~~、500年ぶりの解放じゃあ!

 お、嬢ちゃんがワイの契約者やな?」


手のひらサイズの獅子に羽の生えたような見た目の怪生物?が奇妙な言語で勇者へと近寄り呼び掛けてくる。

それを勇者は、冷めた目で叩き落とした。


「ぶべら!?」

「な、何やってますの勇者ちゃん!?」


台座に叩き付けられる怪生物?と勇者を交互に見て慌てる魔法使い。


「いや、これを許すと色々と怒られそうな気がするから最初に消しとこうかなと」

「過激!? 止めて、ワイは善良な精霊ちゃんやで!?」


台座の上でなよっとしたポーズを取る自称精霊。

勇者は無言で魔剣を抜こうとしている。


「コホンッ! 勇者よ、それは一応無害な存在で間違いありません!

 そうですね、?」


勇者が鞘から半ばまで魔剣を引き抜いている所で女神が咳払いして勇者を止める。

それよりも、女神が出した言葉に一同は目を見開く。


「お、何や。 オカンやんけ、500年ぶりやな!」


女神に『蕃神』と呼ばれた自称精霊は懐かしそうに女神に手を振っていた。


勇者歴16年(秋):勇者、怪生物と遭遇する。

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