第37話 勇者と魔法使い、ゴブリンを殲滅する
ゴブリンの巣の入り口で柔軟体操をする勇者少女と装備の確認をする貴族妹。
「我と魔女は隠形の術にて背後からついていく、基本的に手助けはせぬので我らに期待はするでないぞ?」
「見えなくても、居てくれるってだけでほっとするからだいじょーぶ!」
姿を消す前の暗黒騎士達にVサインを返す勇者少女に暗黒騎士も無用な心配だったかと思いつつも進みだす彼女たちを見送る。
「では、我々も行こうか、術を頼む」
「はいはい、もう心配性ねぇ」
そうして二人も魔女の隠形の術でこっそりと見守り始める。
※以下、『』内は暗黒騎士と魔女の実況になります。
勇者たちが進み始めると、丁度分岐路に出くわした。
二人はその前で足を止め、どちらに進むか考えているようだ。
『魔女よ、分かっているか?』
『えぇ、左右にそれぞれ潜んでるわね』
少女二人には聞こえぬ様に術で声を消している暗黒騎士達は分岐路に潜むゴブリン達の気配に気づいている。
このまま無防備に進めば、左右どちらに進んだとしても奇襲を受ける羽目になる。
だが、少女達はそれに気づいているのかいないのか、無防備に右側の通路へと進みだして左側に潜んでいたゴブリンに背後から奇襲を
「ハイ、ドーン!」
背後へと飛び出してきたゴブリンを勇者少女は回し蹴りで蹴り落とした。
鈍い音を響かせて首が曲がってはいけない方向に曲がったゴブリンが絶命する。
「『
予想外の勇者の反撃に潜んでいたゴブリン達は身を竦ませてしまう。
そうして固まっていた進行方向に潜んでいたゴブリンには貴族妹が火球を浴びせて消し炭へと変えていく。
『ほぅ、敢えて誘い出したか』
『やるわねぇ、油断してると見せかけて逆に動揺を誘ったわね』
分岐路前の話し合いは、ゴブリン達をどうやって誘き出そうかの相談だったようだ。
「アッハハハハハハハ!!」
蹴る、殴る、叩き付ける、斬る。
左側のゴブリンを狂戦士…もとい勇者少女が楽しげに殺戮していく。
『ところであの大暴れしている貴方のお気に入りについてどうぞ』
『黙秘します』
そうやって、何の危うげもなく少女二人はゴブリンの巣を闊歩していく。
片や全身帰り血に染まった躁状態のバーサーカー少女と、
魔法を使う度にゴブリンを前屈みにさせる痴女魔法使い少女という可憐さの欠片もないコンビだという絵面の酷さの事を除けば。
『あの詠唱時のポールダンスみたいな動きは必要か?』
『アレは催淫と
残っているのはボス格のゴブリンとその取り巻きを含めた10体ほどだが、警戒してか、広い空洞内で周囲を警戒している。
『流石にこれを無策に突っ込むのは危険だな』
『えぇ、すぐに囲まれてしまうでしょうね』
『定石通りならば誘導からの各個撃破か、奇襲にて首魁を討ち、混乱を招くかだが』
流石に少女二人も空洞の前に身を潜ませて作戦を話し合っているようだが、中々上手く纏まらないようだ。
不意に勇者少女が何かに着目する。 その視線の先に気づいた貴族妹は露骨に嫌そうな顔をしているが勇者少女はずんずんとそちらへと歩み寄っていってしまう。
そして、
「アララララララーーーイ!」
この洞穴も元々は採掘用の坑道か何かだったのだろう、そこに放置されていた手引きの荷車に貴族妹を乗せて、さながら戦車の如く駆け出す勇者改め戦車少女。
「あー、もう!こうなりゃ自棄ですわ!」
荷台に乗せられた貴族妹もガタガタと揺らされながら砲台の如く魔法をぶちまけていく。
高速で動き回る移動砲台少女達に空洞内がゴブリン達の阿鼻叫喚で埋まっていく。
『……』
『……』
その光景に流石に何も言えない暗黒騎士と魔女の二人。
その後、空洞内を縦横無尽に走り回った後、車酔いした貴族妹が隅で吐いている間、一人で殆ど灰燼と化したその場所で生き残りに丁寧に止めを刺していく余念の無さにちょっと勇者の将来が不安になる二人だった。
勇者歴13年(冬):勇者、初戦でやりすぎる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます