第37話【終わらせるための物語】を褒める

終わらせるための物語

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883342944


 流し読みした自分を冷静にさせるために、一章ずつ読み解いて、幕間がそれぞれ効いてきてることを確認し、脱帽し一話ずつ読むことに決めて、読み進めた時。


 この物語を一気に終わらせようとした自分に後悔した。


 それぞれの章、そして幕間にしっかりと意味が乗せられて、全部効いてくるんだ、だから流し読みしたら、一個一個に理解が及ばず、断片的に見ただけになる。

 それはこの物語にとってハッピーエンドとは言い難い読書体験だ、実際、自分はその読み方をして一度は魔王や英雄たちの言葉を読み飛ばした。


 仕掛けだけ分かっても仕組みだけ分かってもダメなものは駄目である、きちんとひとつずつ積み重ねて理解していって細部に少しずつ命が宿る。

 そういった読書の基礎的な部分を割とすっ飛ばしてきた自分がいて、それを反省した上できちんと話そう。


 この物語は幼さやその時に起きた気持ちを大事に温めることで、明かされていく重みを伴った因果や決してぬぐえぬ狂信と暴虐の時代を、乗り越えていく、自分にとっての初めてを忘れなかった者たちの物語だ、はじめてを大切に思っているからこそ、その先に積み重ねられる互いを尊重できるものがある。 そこに狂信や過ちが伴うものはあったとしても、それぞれがひとつずつ意味を知っていく流れにあって、どれも欠けてはならないことだと思い知る。


 そして同時に欠けていることで初めて成立する、何故、神話の時代から引き継がれて今に至るまでずっと? その答えこそが欠けていたものこそが、長き時代を経て集っていくものだ、力だけではかなわない、未来に怯えるだけでは立ち向かえない、ひとりひとりが互いに出来るその時の精一杯で、向き合って、進んできたからこそ、欠けていても、足りないと思えるものでも自然とそこに集い、補い合おうとする。


 その様は人の子であるから、心がまだ完全に染まりきっていないから成り立つ道すがらであり、それぞれの章を経ていくことで、成長を変わらぬ心を見ることが出来るだろう、自分は人の子にあるからこの物語を、終わらせるための物語と出来たと思えて、何より人と人のつながりを尊いと、ただこの作品との出会いに感謝する。


 あ、うん、あとは好きなとこを言っていこう、何せこれファンタジーですよ! 好きなところが目白押しなんですよ!


 まず戦うことが必ずしも誰かを救うとは限らないものの、決してそれぞれが戦いにのぞんだことが無駄にならない構成になっていて、敗れたものを必要以上に下げず、力を持っているものが一方的にそれを振るうだけでないのが好き。


 またそれぞれが制約をある程度持っていることを示唆してるにも関わらず、敵が決して弱くない、というかすがすがしいまでに強い、だからひとつひとつに意味がある、そして乗り越えた先にあるものがまた大きい、器があるとは言い切れない状態で未知数の部分で生きてることが伝わってくる。


 英雄と魔王、典型的な物語のようであって、そこをうまく崩してもお話を持続させて飽きさせないように構成する手腕は驚きで、バランスブレイカーになり過ぎない理由も分かるので読んでいて世界観が染みてくる。


 最後に、セレネさん好きすぎるので、もうじっくり読んで、じっくり読み解いて、それぞれの重みをしっかり感じ取っていただきたい。


 分量としては程よい、潔さとつよさで、これは僕自身が持ってたカクヨムバトル半ば過ぎたなみたいな気持ちを吹き飛ばしてくれたので、これを機にライトユーザーとあっても、ヘビーなものもアリだ、アリです!


 ヘビー級のライトユーザーって格好良いですよ、ええ!

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