闇夜の月

三点提督

序章      

 仮面で隠した傷が痛い。そう思いながら、私は今宵もこの美しい満月の夜空を眺めていた。これ程までに美しい夜空を眺められるのが、或いはもう今夜限りなのだろうと思うと、ほんの少しばかり胸が苦しくなる。

 けれどもそれは叶わぬ願いで、私に残された時間はごく僅かだった。だからこそ、私は選ばなくてはならない。

 私に相応しい相手を。

 私が心から信頼できる相手を。

 そして何より、私を決して裏切らない相手を。

 さもなくば、私はまた薄汚れただけのただの屍人形となってしまう。

 千年前に命を授かり、多くの人間に弄ばれ、幾度も幾度も命を奪われてきた私は、

もう、我慢などは出来ないでいた。

 もしもまた失敗しようものなら、

 そう、

 私は二度と、元には戻れないかもしれない。

 だから、

 ――お願い。

「……早ク……助ケテ……」

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