第41話 キス
翌日。七海の誘いを受け、空哲、育枝、琴音、亜由美、そして陰の活躍者である水巻が部屋に呼ばれた。
「まぁ祝賀会というわけではないけど、これは私からのお礼よ。好きなだけ食べていいわよ」
七海は全員が集まったタイミングで皆の前にご馳走を用意してそう言った。
六人は長テーブルに向かい合ってそれぞれ座っている。
「これ? どうしたの」
「小町忘れたの? 鈴原さんが必要なら報酬を払うって。つまり全部疾風新聞持ちで出してくれたのよ。私はお金要らないし、なんだかんだ空哲君も断ったみたいだから、皆のご飯代だけやっぱり頂戴って言ったら「わかりました! なら来年もよろしくお願いしますね」と言って気前よくオッケーしてくれたわ」
それはつまり俺も来年も巻き込まれるのではと嫌な予感にかられたがまぁ来年には書けるようになっているだろうと未来の俺を勝手に信じて大丈夫だと自分に言い聞かせる事で納得した。
結果は最終的にユニークアクセス者で約四万人、評価で五千ポイント、ブックマークをポイント換算したポイント数でも数万ポイントの差をそれぞれつけて最終日だけでどんでん返しからの余裕の圧勝となった。
ネットは凄く良く出来ていて【奇跡の空】と白雪七海の熱愛疑惑で今話題はホットになっている。だけど七海は噂も四十五日って言うし放置でいいわと言って全く気にしていないが担当は良くないらしくその対応で今は忙しいらしい。と言う事を皆が集まる前に俺は七海から聞いた。
当然、育枝は良くない! の一点張りではあったが俺達にどうする事はできないので一旦それは時の流れに任せる事となった。
だが俺としては一つ気になる事があるのだ。それはなぜか女好きみたいな噂も流れ初めているということだ。
ホントマジで勘弁して欲しい。
俺学校にこのまま行ったら絶対誰かに何か余計な事を言われる自信しかないんだが。
「なら冷めないうちに食べましょ。いただきまーす!」
お腹空いていたのか琴音が目をキラキラさせて言った。
それに皆も続く。
「「「「「いただききまーす!」」」」」
俺達は目の前に置かれたフランクフルト、ポテト、ナゲット、フライドチキンをそれぞれ手に取り食べて行く。
「うぅー美味しい!」
「ほら亜由美ももっと食べた、食べた」
「う、うん」
琴音は幸せそうに食べ、マイペースに食べる亜由美をせかす。
少し迷惑そうだ。
「おっ! 琴音良く食べるね」
「そう?」
「ほら、こっちも美味しいよ!」
今度はそこに水巻も加わる。
あれ? と疑問に思い俺が視線をキョロキョロと動かすと珍しく育枝と七海が大人しくご飯を食べていた。と思ったのも束の間。なんか目に見えない火花がバチバチとぶつかっていた。触らぬ神に祟りなしとも言うし気づいていない振りをすることにした。
そして俺も近くにあったフライドチキンに被りつく。
「あっ! 美味しそう。そらにぃのそれ頂戴♪」
と言って育枝が俺の隣にヒョィと来たかと思いきや俺の食べかけのフライドチキンをパクっと一口食べた。
「美味しい」
「それは良かった」
「まぁ兄妹だしそんなに間接キス一つで気にしないでよ。って事で一緒に食べよ?」
おぉーーーーー!
ほら見たか! 今! 育枝が兄妹って自分から言ってくれたぞ。
つまりあれは全部本当に育枝の迫真の演技だったんじゃないか!
言い方を変えれば前の関係に戻れたと言う事だ。それに今は普通に話せる。俺の方は残念ながらいや嬉しくも悲しいながら少し心臓がドキドキしていて育枝を一人の女の子として見てしまっている部分もあるが、きっとそれもそのうち収まりがつくだろう。
「それにしてもわざわざこれを食べなくても。他にも沢山あるだろ?」
「う~ん。何か人が食べてるものの方が美味しく見えるというか……」
「なるほど。その気持ちは確かにわかるな」
俺も人が美味しそうに食べている物の方が自分が食べている物より美味しく見える時がよくあるからな。
「へぇー」
その時、寒気を感じた。
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