第5話 視線の行く先

前書き(お知らせです。本編には関係ありません)


カクヨムコンの時期にこのままだと作品が増え同時に管理し更新ができないかもしれないのでまだ先の話しですが、カクヨムコンが始まる前に完結するように少しだけ更新頻度を調整していくことにしました。


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「違うって?」


「私はくうにぃの味方でもあるけど、もっと言えば私の大切な人の味方なの。だから私はお姉ちゃんやいくの味方でもあるの」


 本当に年下なのかと言いたくなるぐらいのこの包容力と言うか溢れ出る優しさ。


「やっぱり亜由美はすげぇな」


「そう?」


 亜由美はそう言って自分の頬に人差し指を当て、可愛いく言ってくる。

 わざとしているであろう所がまたとても可愛らしく見える。

 なんだろう。

 この何気ない時間と会話が歪みに歪んだ俺の心を少しだけ癒して元に戻してくれたような気分になれた。


「あぁ。てかそれわざとしてるだろう?」


「うん。くうにぃも男の子だしこうやって笑顔を向ける女の子見ると癒されるかなって思って」


 やっぱり。

 年下なのにこうやって相手の気持ちを考えて行動してくれて、それでいてとても素直な亜由美に俺は助けられた。何も話しを聞く、アドバイスを言う、側にいるだけが力になれる全てではないと言うかのように。

 まったく……亜由美には敵わない。

 一般的に精神年齢は男性より女性の方が早く成長すると言われているがこの場においてはそうだと認めるしかないだろう。


「ところでさっきから物音が聞こえるけどもしかして友達とかいるのか? もしそうだったら悪いなせっかくの時間を邪魔してしまって」


「ううん、別にいいよ。友達じゃないし」


「どうゆう意味?」


「知りたいの?」


 人間と言うのは『知りたい?』と聞かれれば知りたくなり、『聞きたい?』と言われれば聞きたくなり、『食べたい?』と聞かれれば食べたくなりやすい生き物だと俺は思っている。つまり俺の今の本音でもある。てかよくよく考えたらこの会話身内以外にも聞かれてたと考えるとなんかこう複雑になってしまった。せめて誰かいるなら先に言って欲しかった。


「うん」


「だってよ。ほら言い過ぎたと思っているならちゃんと謝ったらお姉ちゃん?」


 その言葉に俺が驚いていると、亜由美の横から顔を出してくる琴音。


「さっきはごめん。てかなんで亜由美とは普通に話してるのよ。このバカ!」


「バカってあのな……。今の俺にそれを言うか……琴音」


「言うわよ! もっと前を向いて生きなさい!」


 そう言って琴音は窓から姿を消した。


「ったく素直じゃないんだから……」


 亜由美が困ったようにため息を吐いてから言う。


「ごめんね。お姉ちゃんが無神経で」


「大丈夫。本当は俺、さっき琴音を怒らせた事で謝りたかったんだけど出来なかったから」


「へぇ~」


 亜由美はそう言って琴音が消えて行った方向に一瞬視線を飛ばす。


「きっとお姉ちゃんが聞いたら安心すると思うよ。まぁ、くうにぃの気持ちもよくわかるよ。傷ついている時にこう威圧的に言われるとかえって何も言いたくなくなるか、逆にカッとしてしまって言い返してしまいたくなるよね。でもお姉ちゃんの気持ちもわかってあげて欲しいな」


「琴音の気持ち?」


「うん。気になるなら仲直りのきっかけって意味でも今度自分から聞いてみるといいよ」


 相手の気持ちを考えた言葉を言える亜由美に俺は小さく頷いて返事をする。


「そうだな」


「実はお姉ちゃん、私がくうにぃと会話を始めてすぐに私の部屋に来てずっと隠れて話しを聞いていたんだよ。本当はあぁ見えて心配してるんだよ」


「悪い。心の整理が着くまでもう少し待って欲しい」


「うん。私その言葉ずっと待ってたんだよ。少しは前向けたね。ならまたね、くうにぃ」


 そう言って笑顔で手を振りながら窓を閉める亜由美。

 その後、窓から離れる一瞬――再び。

 亜由美の視線が部屋にまだいるであろう人物に向けられた事に俺は気付かなかった。



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