Fly two the unknown

灯明 故雪

序章

冷たい風に運ばれて、またここに来る。

突き刺すような視線を縫って、おじいちゃんが大好きだった花を添えに。

でも来る度に腕の傷が痛くなる。

あの日、黒い服の人に後ろから貫かれた。

高い音と同時に腕に鋭い痛みが走った。

駆け寄る足音が怖くて、ここで死ぬんだと思った。

そうならなかった。

すぐに手当てしてくれて安全な場所まで運んでくれた。

「ここは戦場だぞ」とだけ言い残して霧の中に消えてしまった。

あの黒い髪と服の、私と年の変わらないような男の子は今どうしているんだろう。

…私の代わりにおじいちゃんがこの場所で死んじゃったね。

どうしておじいちゃんは助けてくれなかったんだろう。

もう会えないとしたら、誰に聞いたら答えてくれるの?

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