片思いなんて、そんなキレイなものじゃない

野口マッハ剛(ごう)

ボクの想い

 文芸部の部室にボクと純ちゃんは二人きりでいた。ボクは涙を流している。純ちゃんを好きになった理由なんてなかった。ボクは純ちゃんに告白をしていた。それでフラれる。涙を流しているのはそういうこと。ボクは純ちゃんの顔を見れなかった。純ちゃんは無言、ボクはボクの片思いに涙を流している。ボクは涙を止めて純ちゃんの顔を見てみる。純ちゃんの表情は普通に見える。特になんの感情もないような。ボクは文芸部の部室から出て、帰りのスクールバスをひとり待つ。ボクって失恋したのだな。ひとりスクールバスを待ちながら、ボクはまた涙が出そうになる。純ちゃんへの片思いは、ボクの心に残っているままだった。

 ボクは自宅の自分の部屋の中でひとり涙を流している。純ちゃんのことが好きだけどそれはボクの片思い。ひとりで涙を流していると気付けば夜中の0時だった。ボクはそうしてひとりで眠りにつこうとする。ボクは天井をこう考えて見つめている。純ちゃんへの想いは片思いだったのだな、と。それでもボクは純ちゃんに片思いをしていることに気付く。告白をしてフラれたのに? ボクは涙をまたまた流している。そうやって、いつの間にかボクは眠りについた。

 ボクは朝のスクールバスに乗る。ボクは片思いを続けている。純ちゃんへの片思い。ボクはひとりで不安でさびしかった。ボクは今日の授業中も純ちゃんのことを考えている。なんだか文芸部の部室に行くのが怖い気がする。純ちゃんはボクのことをどう思っているのだろう。ボクは段々と足が重たくなるような気がする。そうやって今日の授業を終えて、文芸部の部室に入った。純ちゃんが笑顔で席に座っている。すると、純ちゃんはボクにこう言った。

「おはよう!」

「お、おはよう」

 ボクはびっくりした。純ちゃんがいつも通りだから。ボクと純ちゃんはいつも通りに笑顔で小説について語り合う。それがボクにとって嬉しいような、つらいような、複雑だけど楽しい時間。他の文芸部員もやってくる。なんだかボクは片思いがいつの間にか消えるかのような気分になる。そうやって今日の文芸部の活動は進んだ。

 けれども、ボクは自宅の自分の部屋でひとり胸がキュウッとなって涙を流している。やっぱりボクは純ちゃんに片思いをしている。さびしい、不安でたまらなかった。ボクは片思いをどうしても消せない。ボクは純ちゃんのことが好きなのだ。ボクはこの想いをどうしたらいいのかわからない。

 ボクは心にひっそりとこう想う。純ちゃんと二人で下校することは出来ないのか? 文芸部が終わり、ボクと純ちゃんはスクールバスに別の席に座っている。帰りのスクールバスの中で、もしも純ちゃんと一緒に帰れたらなあとボクは考えている。いつも通りにスクールバスで駅前に着いた。ボクと純ちゃんはスクールバスから降りる。そこで、お互いに「バイバイ」と言って別れて帰る。ボクの想いは二人で歩いて帰りたい、それだけでいい、なんてね。純ちゃんの「バイバイ」という一言がボクの胸をキュウッとさせる。ボクはいつもどんな表情をして帰ったらいいのかわからない。ボクは純ちゃんのこと、片思いしている。

 ボクは純ちゃんと会えない日々は、自宅の自分の部屋でひとり涙を流している。ボクは純ちゃんへの片思いに酔っているのかもしれない。けれども、ボクは純ちゃんが好き。片思いって、こんなにも、つらいんだな。いま純ちゃんが何をしているのかはわからない。だから不安でひとり涙を流している。

 繰り返す日常。文芸部員たちと仲良く話している純ちゃん。ここは通信制高校だから、いろんな人がいる。大人から十代まで。いろんな事情を抱えている人がいる。純ちゃんは女子グループと今は話している。

「あの作品っていいよね~、純ちゃんはどう思う?」

「私もいいと思うよ!」

「そうだよね! 絶対にそう!」

 ボクはそんな純ちゃんに魅力を感じる。誰に対しても笑顔の純ちゃん。そんな純ちゃんの笑顔が可愛い。正直に言ってボクの片思いが燃え上がるようだ。ボクはというと、ひとりでひっそりと読書をしている。ボクは純ちゃん以外と話すのが苦手でもある。そんなボクは読書をしながら、チラチラと純ちゃんを見ている。ボクも純ちゃんみたいにいろんな人と話せたらなあ。そんなことを考えているボク。文芸部の部室は賑やかだ。

 ボクは小説を書き始めようかなと原稿用紙とペンを取り出す。けれども、ボクは何を書いたらいいのかわからない。ちょっとぼんやりとしてみる。気が付けば純ちゃんが笑顔で目の前に座っている。ボクはちょっとびっくりして笑顔を見せる。純ちゃんはこう言った。

「ねえねえ、何を書くの?」

「えーと、ボクは何かスゴいのを書きたいんだ」

「そうなんだ! どんなの?」

 ボクは言葉に迷う。本当は純ちゃんへの片思いについて書きたい。でも、ちょっと恥ずかしいボクがいる。ボクは適当にアハハと笑って誤魔化した。純ちゃんは笑顔のまま女子グループのところに戻っていく。はあ、純ちゃんへの想い、書きたいなあ。でも、恥ずかしい。そうして、今日の文芸部は終わり。ボクと純ちゃんはスクールバスに別の席に座っている。そうして帰っていく。ボクは純ちゃんと二人で下校がしたい。でも、この想いはどうせダメなんだろうな。

 今日もボクの目の前に笑顔の純ちゃんがいる。文芸部の部室に今は二人きりだ。ボクと純ちゃんは笑って話している。純ちゃんはボクのこと、今はどう思っているのかな? ボクは胸がキュウッとなる。どうして、片思いはこんなにもつらいのだろうか。ボクの頭の中にこんな考えが浮かぶ。純ちゃんは誰か好きな人がいるのだろうか。どうしよう、不安だな。ボクはそんな話をすることが当然出来ずに純ちゃんと小説の話をする。ボクは純ちゃんのこと、今でも好きだ。けれども、それはボクだけの感情。文芸部員たちがやってくる。ボクはひとりで読書を始める。純ちゃんは仲良しグループで笑顔で話している。ボクはこんな自分が情けないって思う。ボクは純ちゃんともっと仲良くなりたい。でも、それは恋愛感情が絡んでいる。だから、ダメなんだろうな。ボクは原稿用紙とペンを取り出す。純ちゃんへの片思いを書きたい。ボクは書き始めようかなと思って、やっぱりやめた。

 いつも通りに帰りのスクールバスを純ちゃんと待つボク。お互いに無言。ボクは腕時計を見る。そろそろスクールバスが来る5分前になろうとしている。ボクはひとりため息をつく。純ちゃんへの片思いはどうせダメ。純ちゃんと二人で歩いて帰りたいのもダメ。純ちゃんはボクのことはなんて思っているのだろうか。ボクは純ちゃんのことが好き。ボクは純ちゃんの気持ちがわからない。ボクは純ちゃんのとなりでひとり不安になる。純ちゃん、やっぱりボクじゃダメなんだろうな。そろそろスクールバスが来る5分前。

「今日は歩いて帰らなきゃ」

 純ちゃんはいきなりそう言ってひとり歩いていく。ボクは急いであとをついて純ちゃんの横に並んでいる。どうしたんだろう? しばらく無言で二人で歩いて下校している。ボクはこう理由を聞いた。

「どうしたの? 純ちゃん?」

「え? ついてきたの? 今日は帰り道の途中に寄りたい所があるから。スクールバスに乗ると途中で降りられないからね?」

 そうなんだ? って、あれ?

 ボクの想いは通じた? ボクは純ちゃんと二人で歩いて下校している。なんだろう。とても不思議な感じだ。

「ついてこなくても、いいのに」

 純ちゃんはそうボクに言った。

 ボクはこの感情を抑える。純ちゃんのことを好きだという感情を。けれども、嬉しいんだ。ボクは今、純ちゃんと二人で下校している。ボクの片思いだけど、ボクは嬉しいんだ。そして、ボクは思い切って純ちゃんにこう言った。

「これからはボクと二人で歩いて帰ってくれる?」

「えー? いいけど?」

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