最強キャラドリームデスマッチ!
東美桜
プロローグ
――気付いた時には、白いドーム状のホールの中にいた。先程までいた血まみれの神殿とは似ても似つかないその場所に、金髪のハーフアップツインテールが揺れる。その持ち主たる少女・シルヴィアは、金色の瞳をぱちぱちと瞬かせ、隣の黒髪の少年に問うた。
「……え、何、ここ? カレンドゥラ様は……」
「俺に聞くな。つか、あのクソ神……今度は何やらかしやがった」
黒髪黒マントの少年・ディアンが毒づく。周囲を見回すと、そこにいるは彼ら二人組を含めて九人の人間たち。弓使いとみられる小柄で金髪のエルフ、黒髪蒼眼の女顔の少年、真っ赤な髪と目に真っ赤なスーツの美女、果てはアラクネ。誰もが実力者の空気を纏っている――共通項としては、そのくらいだろう。
――と、空から誰かの声が響いた。刹那、二人の全身が震える。間違いない。神格だ。
『はーい☆ 神様だよー!』
「ざけんな。んなアホな神がいてたまるか。カレンドゥラと最高神に謝りやがれ」
思わず吐き捨てるディアンに、苦笑を漏らすシルヴィア。対し、『神様』を名乗る何者かの声はあっけらかんと無視し、続けた。
『ここは異次元のバトルフィールド。それぞれの世界の「最強」と見込んで、皆様を集めさせていただきました!』
「御託はいい。それで、お前は俺たちに何をさせたいんだ?」
黒髪蒼眼の少年が問う。対し、『神様』は不機嫌そうに黙り込んだ。だがその沈黙は短く、すぐに能天気に声が流れ出した。
『ざっくり言うと、殺し合い。私たちの世界の神王サマが「最強たちの戦いを見たい」っておっしゃってねー。かといって自分の世界の資源減らすわけにもいかないでしょ? だからそれぞれの世界の神様たちに掛け合って、皆さんを連れてきてもらったの』
あっけらかんとした声に、一瞬の沈黙。最初に口を開いたのは赤い美女だった。続き、黒髪蒼眼の少年も呆れ果てたように目を閉じる。
「……意味不明だな」
「だからって何で俺たちなんだ……」
「……つまり、これもカレンドゥラ様の気まぐれ、ってことかな」
「あのクソ神……」
「……これで優勝すれば、主様に褒めてもらえるでしょうか!?」
「なんでこんなことに……」
苦笑を漏らす少女、頭を抱える少年。周囲ではアラクネが目を輝かせ、金髪のエルフが困ったように俯く。混沌とし始める空気を知ってか知らずか、『神様』が手を叩く音が響く。同時、天井に巨大なトーナメント表が映し出された。
1回戦 白露vs霧島龍牙
夏目潤vsアリナ・イヴァノブナ・プラスコーヴィヤ
氷雨紫苑vsディアン&シルヴィア組
岡本真梨vs山吹さくら
そこに書かれているのは八組。天井の文字を凝視し、唯一名前がなかった男――真神零人が小さく呟きを響かせる。
「……は? 待てよ、俺は?」
『真神さんはシードです! というわけで第1戦! れでぃー……ふぁいつ☆』
そんな声と同時、小さな浮遊感を伴奏に、彼らの意識は掻き消えた――。
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