のいずぃー×さいれんと~中二女子が綴る『勇者』と『魔王』の観察記録!?~
叶ノ葉
プロローグ ある夏休みの出会い
第1話 宿題は計画的に!
「あ、宿題しないと!」
私-
その中でもっとも困難とされるのは-自由研究。別に入賞とか狙っているようなタチじゃないから、正直”デメクロちゃん観察日記!(デメクロちゃんは私が飼ってる意外と長生きな出目金)”みたいな感じでもいいのだろう。しかしそれはすでに去年やった。小学校から数えて7年間ずっとデメクロちゃんを研究し続けてきた私は8年目の夏にして、ネタが尽きてしまった。
だから今年はカブトムシにすることにした。いや、本当はなんでもいい。とりあえず捕まえたヤツを適当に調べて提出しよう。ワークの宿題だってまだまだ残ってるんだし。
そんなわけで、私は今日の早朝、前日に近所にある公園のいくつかの木に仕掛けておいた罠の調子を見に来たのだ。
朝日が出てきて間もない時間帯なのに、外はこんなにも暑い。対して動いていないのに汗が垂れてくる。まぁ、これでも昼間よりかはマシだろう。そうと思うと頑張って早起きした甲斐がある。
公園に到着すると、早速茂みの中に入って目当ての木を探す。辺りには全く人がいない。ただしきりにセミの鳴き声が聞こえてくるだけだ。
「あれ、この辺りだったような気がするんだけど?」
私はさっきから同じ場所をずっと行ったり来たりしていた。もしかしたら公園の管理人さんがイタズラだと思って外してしまったかもしれない。その時は仕方なくまたデメクロちゃんを愛でよう。
「……ねぇ、そこの人」
急にどこからともなく声がした。オカルトのように頭に直接-みたいなやつじゃない。だけど確かに聞こえたはずなのに、どこにも人らしい姿が見えない。
もしかして幻聴? 昨日(今日の深夜を含む)の対戦の疲れが残っているのだろうか。
「……どこ見てるの?」
もう一度声がした時、私はやっと目の前の男子の存在に気がついた。高校生ぐらいだろうか。なぜか木に抱きついたまま、視線だけを私に向ける。
その男子は怪しいマントで全身を覆っている。ちょうどそのマントが木の幹の色と同じだったため、同化して認識できなかったようだ。
それにしてもこの男子が一体何をしているのかは未だ不明だ。不審者だろうか。私は警戒して少し彼と距離をとった。
「……そんなに驚かないで欲しいんだけど。俺もちょっと状況が飲み込めないでいるから」
その男子はジト目でボソボソと独り言のように話す。それでもなお木に抱きついたままだった。
いわゆるコミュ障気味な彼を、私は、大人しいというか、内気な性格であるとみた。
「……この状況を生み出したヤツに仕返ししてやろうと思って待ってるんだけど、なかなか現れなくて、すごく困ってるんだよね」
前言撤回。陰キャのフリした暴力的なヤツだった。
そんなに彼の体格がいいとか、いかついとかそういう訳じゃないけれど、そういうことを真顔でサラッと言えることが何より”暴力的解決主義”っていう証拠だ(偏見)。
こういう危ない人からは早く離れた方がいい。彼の言う”この状況”というのはイマイチわからないけど、どうせ私には関係ないんだし。
「……ねぇ、ここにトリモチつけたの誰か知ってる?」
……………トリモチ? ああ、それね。私が付けた罠だね。
「……これに俺のマントがくっついて取れないんだよね」
彼は無表情で淡々と述べる。怒っているような素振りは全くしていないのに、彼のぼんやりとした視線は私に突き刺さった。
近づいてのぞいてみると、彼の腹部あたりに、ねばぁとスライムのような粘着性のあるヤツがへばりついていた。幸い(?)、彼はマントで体を覆っていたため、服の方には支障がないようだ。
私の心臓は何かを察したように早くなっていく。
もしかしてこれって…………。
「……これやったヤツ、知ってる?」
私の額に汗が垂れた。
……………………私だァァァ!!
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