第28話
瓦礫の山に囲まれた無人の窓口。
そこに突如として現れた女は笑顔を浮かべながら言葉を続けようとして、
「竜を退治した話は既に聞いています。さすがグレンさ、ん――?」
続けられなかった。
目の前に立っていた人影、その仔細を確認した結果として、驚愕のあまり固まってしまったからだ。
なぜ驚いたのか?
その答えは簡単だ。
女の視線、その先に立っているのがグレンではなかったからだ。
「……誰ですか、あなたは」
驚きによる思考停止から復帰した女が、先ほどまで浮かべていた人懐っこい笑顔がまるで嘘であったかのように表情を消して問いかけた。
誰何の声を聞いて、ようやっと話しかける機会が掴めたというように、どこかほっとした表情を浮かべながら呼び鈴を鳴らした人間は言った。
「そのグレンさんから代理で報告をしておいてくれと頼まれた、ビオっていう地元の冒険者よ」
呼び鈴を鳴らした相手――ビオの返答を聞いた途端に、受付に現れた女はやられたといわんばかりに顔を歪めながら頭を抱えてうなり始めた。
ビオは女の反応を見て、何かに納得をしたように頷いて言う。
「……あー、その反応を見る限り、ミトラさん? で間違いなさそうね」
「……どうしてそう思うんですか」
「あの男が言った通りの反応をしてるもの」
「――全部わかっててやってるのかあの男!」
名前を呼ばれて頷いた女――ミトラはビオの言葉を聞いて悔しそうな表情を浮かべながら机を思いっきり叩いた。
●
「いたああああああああああい!」
ビオは自分で机に叩きつけた手をおさえながら喚くミトラを見て、この人に任せて本当に大丈夫なのかしら、と少し不安になった。
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