第14話
結論から言えば、ビオの最後の晩餐がグレンに奢ってもらった高級料理になることはなかった。
しかし。
ビオの常識はあっさりと覆されることになった。
ミスタンテに住む誰もが疑いもしなかった日常は、その瞬間に儚くも消え去った。
●
昼。
その日は快晴で、どこまで広がる青い空の下に、薄く白い雲がちらほらと見えるだけだった。
ミスタンテという街では、それが当然というように、多くのヒトや物が行き交っていて。
そこにあるのは間違いなく、誰もが疑うことのない日常の光景だっただろう。
――最初に生じた変化は音だった。
それは蟲の羽音に近い、低く連なる濁音だった。
最初は気のせいかと思うほどに小さかったけれど、段々と、無視できないほどに大きくなっていった。
これまでになかった異音を耳にした街の人間は、次々に音源へと視線を向け始める。
それらの視線の先には、空があった。
――次に生じた変化は色だった。
異音の高鳴りが頂点に達したと同時に、空の色が黒へと一変した。
次の瞬間には、赤が混ざって縞模様を作り出した。
それが割れ目なのだと、誰かが気がついたときには最後の変化が訪れていた。
――甲高く、耳に痛い割れ砕けの音が響いた。
異音は消えた。
空の色は青に戻った。
それら全ての代わりというようにひとつの影が空から街へと落ちて、轟音を響かせた。
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