あめふって
@wowo2
拝啓
あめふって
——綺麗に死ねるならなんでもいいかな。
あなたの口癖でしたね。
作戦の説明をしている時も、役割希望を聞いた時も、あなたはどうでもよさそうにこの台詞を吐いていました。
いつも気怠そうにして自分のことしか考えない。そんな人だったから周りのことなんてどうでもいいとか思っていそうだなんて実は思っていました。ごめんなさい。
けどあの時のあなたは自分のことなんてそっちのけで私たちのことを考えてくれましたね。あなたが人を思いやる……いいえ、あなたが人に興味を持つのを私は初めてみました。私はまだまだあなたのこと知れていなかったみたいです。
—あの時、
私たち全員が力を合わせても、作戦を練りに練っても、神に祈っても、絶対に勝てない相手でした。その相手から私たちを逃すために囮になってなってくれたんですよね。わかってましたよ。あんな言葉でしたけどね。最後まであなたはあなたでした。
けど私は知っているんです。あなたが最期に言った言葉。あなたが足元のみずたまりを見て呟いた言葉。大雨が降った直後でしたから大きいみずたまりでしたね。
——あーあ…きたねーなぁ。たった一つの夢だったのにな。
いつものあなたでなら絶対に言わないような言葉でした。
“たった一つの夢”というのは『綺麗に死にたい』ってことだったんですよね。
たしかにあなたのお顔は血にまみれていて傷だらけ、目は潰れて耳は無くなって髪は痛んでボサボサで…汚かったです。怒らないでくださいよ。
けどね、私は汚いなんて思いませんでしたよ。
あなたの笑顔、すごく綺麗でした。あなたの全てを表した様な笑顔でした。何かを企んでいそうで、少し怖い。だけどどこか純粋さを感じる。あの笑顔はあなたそのものでした。
はたから見たら全然綺麗じゃないし美しくもない最期。でも私の中では今でもあなたは美しさそのものです。安心してください。
また時間が経ったらそちらへ行きます。
それまでは待っててくださいね。
時間はたっぷりあると思うので私に話す事でも考えておいてください。
では、また。
あめふって @wowo2
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