戦いを終えて<Ⅱ>
「お、どうしたんだい?」
道具屋に行くとおじさんは昨夜の一件で道具などが棚から落ちたらしくそれを片付けていた。
「なんか、申し訳ない……」
「なんのことで謝っているんだい? 何か悪いことでもしたのか」
「あのダンジョン、不活性化したはずだったんだけど……」
「その件か……あれは違う君はなにも悪くない。我々は見たんだ。最後だとボスの間でしみじみとしていたら、あいつらは天井に穴を開けて降りてきたんだ」
穴を開けて? あの地面から出てくるときに使っていた掃除機みたいなアイテムか……。
「それでさ、慌てて隠れて様子を伺っていたんだよ。そしたらそいつらは今度はボスの間の床にも穴を開けて降りていったんだ」
あの下には確か、ダンジョンを管理する魔導機などが置いてあったはず。
そんな方法で降りることが出来るのかよ。
「そうしたらいきなり爆発するアナウンスが流れて慌てて逃げたんだよ」
「まじっすか……」
「まあよく見る、攻略直後に出てくる盗掘共だと思うけど結構いい装備を持っていたみたいでな」
彼奴らは本当にただの盗掘集団なのだろうか。あれだけの装備を持っているのはただ者じゃない気がする。
一体どこまで知っているんだろうか。もしかしたらこの世界のことや宇宙人のおっさんのこととも分かっているのだろうか。
いや、分かっていたらあんな行動は取らない……それとも分かった上で動いているのか。うーん、さっぱり分からん。
「もし、あのときお前さんがもし止めてくれなかったら、あんな爆発に巻き込まれていたかと思うと今でも冷や汗ものだよ」
「でも……」
「一体何がそんな風に思わせているのかは私には分からないが、少なくとも私は助かったしあの勇者達も助かった。それに欲に目が眩んで逃げ遅れた冒険者もいたことだろう」
「それは……まあ、そうだと思いますけど」
「そんな連中を全て救ったのだから君は十分に命の恩人だと言えるさ。まさにりっぱな英雄であり本物の勇者だ」
そこまで面と向かって褒められると、本気でくすぐったい。
少しだけ顔の体温が上がっていく気がした。
「まあ、そんなわけで我々は予定通り故郷に戻るよ」
「そうですか」
こんなことになった以上、ここに居るなんて選択肢は無いよな。
「あ、そうだ。持って行くのも大変だし、これは君に上げるよ」
そういっておじさんはポーションの入った箱を差し出してきた。
「え、でもこれ、売って金に換えることも出来るんじゃ……」
「いいんだ。持って行ってくれ」
「そ、そうですか。それじゃあありがたくいただきます」
ほとんどはDポーションでCポーションが三本入っていた。
特にCポーションは勇者パーティで使ったので非常にありがたい。
「それは……?」
「これかい? 思い出深い代物ではあるんだけど、後でどこかに埋めるつもりだよ」
それはダンジョンマスターの杖、仮面、ローブであった。
「おいおい、そんなもの店の前で出すなよ」
他のおじさん達が店に来た。
「なんだ坊主気になるのか? 一応マジックアイテムらしいが、ほとんど衣装みたいなモノだけどな」
「前時代に“変態”の異名で馳せた魔術師が持つ杖らしいんだが、当然帰属が付いているから誰も使えない」
「変態っすか」
「ああ、なんでもオリジナルの魔法を様々な杖に入れ込んだと言われているんだ」
「へぇ……」
なんだろう妙に気になるな。
とりあえず、そっとディテクトをかけてみる。
【マジックスタッフ】
普通のことしか説明が無いので、もう少し深めに探ってみる。
【オリジナルの魔法、パージ、ダイアリア、スティンクフォグ】
なーんか嫌な単語が見え隠れしているが、やはり興味が沸いてきた。
「あの……これって俺が貰ってもいいですかね?」
「この杖をかい? なにか分かったのか。うーん、さすがに見つかるとヤバい気がするけど……まあこの杖を知っている連中なんてほとんどいないし分かることもないか」
どうせ捨てるだけだからと俺に杖を渡してくれたのだった。
「なあ坊主、その凄い力で戦争を止める方法とか思いつかないか?」
「え? さすがに戦争は機械とか魔法じゃなく人の心なんで簡単に止めるのは難しいかと……」
「おいおい、そんな若い子になんてことを言っているんだよ」
「おっと、それもそうだよな。いやあなんかさ、この坊主を見ているとなんとなくやってくれそうな気がしたんだけど……すまんな」
藁にもすがる気持ちだとは思うけど、なんか恐ろしいことを頼まれそうだったな。
「いやでも……そもそも戦争というのは……」
戦争ってのはトップが密室で決めるものだから、その彼らを何とかすればなんとかなるもの……なのか?
「ほら、彼はこういう子なんだから、考え込んじゃったじゃないか」
「勇者ってのは、力ずくで推し進めるのばかりだと思っていたけど、こういった坊主もいるんだな」
「あ、ごめんなさい……つい考えちゃって、その……まあ俺程度じゃ大したことは出来ないけど、期待されない程度で少し頑張ってみます」
「そうか? じゃあ、これは前払いだ」
「え、いやちょっと……」
「よし、じゃあ俺からも餞別だ」
おじさん達は、各々宝石だの宝飾品だのを出して俺に渡してきた。
「い、いやちょっと待ってくださいって……」
「気にするなって、なんかさ。俺が坊主から勝手に何かを感じただけだ」
「もちろん、これは俺達の勝手な願望だ。君が気負う必要は全くない」
「そう、でももし何かの切っ掛けになったらって思いたいだけさ」
「おっさん達が好き勝手言って話し相手になった結果儲けたって程度で考えな」
儲けたって……これって結構な額になっていないか?
いやまあ、貰えるものは貰うけどさ。
このことを3人に話したら、また呆れられそうだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます