正規ルート再開

正規ルート再開<Ⅰ>

 脱線すること20分、やっと正規のルート進行を再開する。

 前を歩く4人は全体的に濡れたまま、今だに刺激臭を放っていた。


 しばらく通路に沿って歩くと正方形の広い場所に出た。

 一応周囲にモンスターは反応ないが、中央に微弱な魔力反応がある。


 そこにはポールとロープで囲われた場所があるのでそこからの反応であろう。その床には魔方陣らしきものが描かれていて誰がどう見ても怪しさ満点である。


「転送陣……? いやちょっと違うかな……でも触るとそれを切っ掛けに何か起こるタイプだと思う」


 デルが魔方陣らしき模様が分かるらしい。さすが紋様族、こういうことに博識で助かる。

 とりあえずこの怪しさ満点なこれは無視しておけば問題ないだろう。


 広場には更に奥に行く道があり、正規ルートの証である矢印が奥に向かうように指し示している。


 この場は指示通りに奥へ向かうと、同じような回廊でありそこから少し先にまた同じような部屋に出た。この部屋の中央にも同じような魔方陣が置いてあった。


 そして部屋は左右に道が分かれていて左はロープが張ってあり右には矢印が書いてある。

 当然ここは右に行くべきだが、ここに来ても盗賊と俺様男は懲りずに左側が気になりだしたらしく通路を覗いている。


「あのさ、あと少しなんだから、そこは無視して先に進もうよ」


 この奥は行き止まりで何もないので行くだけ無駄である。


「馬鹿野郎、俺達はアウトローなんだよ! それにこのまま帰れるかってんだ。このままじゃ俺は今夜野宿になるんだよ!」


 あーやっぱり、こいつは金に困っていたのか。


「今度は大丈夫だ。ちゃんと罠も調べるし、少しだけ、ほんの少しだけだから」


 ああ、どうして一度痛い目に遭っているのに懲りないのだろう。

 いや、懲りないから冒険者になれるのかもしれない。一度や二度の失敗で諦めていたらダンジョン攻略なんて出来ないし、お宝も発見出来ない。


 そう言う意味では向いているのかもしれないが出来れば俺の居ないときにお願いしたい。


「止めておけって」


 だが2人は少しだけ、少しだけだからとこっちの制止を聞かずにロープを超えて入っていった。


「ああもう、いっそ首根っこ掴んで連れて行こうか?」


「あれ触れるのならね」


「うっ……、それは……」


 デルと彼らの体格差からして首根っこ掴むのも無理そうだが、それ以上にあの臭い粘液が付いたままの身体に触れられたものではない。


「ひゃー!!」


【!!!警告!!!】


 俺の眼前に文字が浮かび上がる。って一体何がいるんだよ!?


 悲鳴を上げて野郎2人が出て来た。


「え、どうなってんだ!?」


 俺様男とバンダナ盗賊は着用していた装備や武具などが溶け出していた。


「ぼわー!!」


 低音の管楽器のような音がする。

 2人が出て来た通路から、巨大なプリンに触手が沢山生えたようなモノが出て来た。


 これは……生き物なのか?


「“ディテクト”目の前の物体!」


【分類不能生物:ローパー】


 何それ……、古いゲームにそういうのがいるって聞いたことがあったようななかったような?


【ぶよぶよな本体に複数の触手が生えた分類不明で生態不明の生物】


【未だよく分かっていない生物である。サーチなどで生物反応が出るため生物としてカテゴリーされているに過ぎない】


 まじか。


【洞窟やダンジョンでたまに見受けられるが、食性なども分かっておらず人間を襲う個体も居れば、岩などに擬態して数十年動かない個体も存在する】


 擬態していたから反応がなかったというのか? さすが分類不能生物。よく分からん。


【現状分かっているのは、彼らの興味の有るものが近づいたときに触手を使って捕食することだけである】


【彼らは特定の臭いに反応しやすいとは言われているが、それも不確実である】


 臭い? もしかして……あの穴の粘液がこの触手お化けの興味を惹いたってことか。


 でも、なんか金属とか溶かしているみたいなんだけど!?

 野郎2人は既に半裸状態である。俺様男など既に長剣の半分から先が溶けてなくなっている。


 肉体の方は無事っぽいので人体を溶かすことはないみたいだ。


「ぼわー!!」


 またあの低音をならす。かなりの音量で身体にビリビリと振動が伝わる。

 複数の触手がメチャクチャな動きをする。


 少し前にいたデルは慌ててそれを避ける。

 回避が苦手そうな魔術師に触手が擦るとローブの一部が溶けてなくなくなった。


 女戦士にも触手が襲いかかる。辛うじて防ぐが直ぐに盾が溶け出して駄目になってしまう。


「嘘でしょ!?」


 驚く女戦士、どうやらこのローパーはやはり粘液の臭いに向かって攻撃をしているっぽい。


「避けるんだ! 攻撃をしても駄目だ。って、おいおいおい、止めろ! そこに入るな!!」


「我が手に集まりし、猛狂う炎よ、激しき凶弾となって我が敵を撃て! “ファイアーショット”!」


「ばち」


 そこへ魔術師が炎の弾を撃ち出してローパーを攻撃するが小さな破裂音がしただけで、ほとんど効いている様子がない。


「ぐっ……」


 どうやらMPの使いすぎらしく魔術師が頭を押さえて辛そうにする。

 だからMPは用法用量を正しく守って使いましょうって言われなかったか!?


 動きの鈍くなったところにローパーの鋭い攻撃が魔術師を襲う。

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