そしてダンジョンへ<Ⅳ>

「何それ、だったら待ってればお金稼げるじゃない」


「確かにそうだけど、落ちているのは所詮くず鉄であって大した金額にはならないだろ。だから冒険者達はより深い階層に入ってより大きなリターンを求めてリスクを負うんだ」


「ふーん、そういうものなんだ」


 どうやらデルはトレジャーハンターにはあまり興味がないようだった。


 しかしこのダンジョンは一体どんな目的で存在しているんだ? やはり宇宙人のおっさんが言っていた通り勇者を飽きさせないためのものなんだろうか。


 いや、なんでも宇宙人の仕業と考えるのも短絡的かもしれない。もしかしたら前時代というオーバーテクノロジーの世界が生んだ何かなのかもしれない。


「いやあ、これなら今夜は少しは豪華に飯が食えそうだな!」


 大きな声が聞こえてくる。どうやら拾い終わった様子で新米の4人は大きな麻袋のようなものを抱えている。

 おいおい、そんなんでこの後の戦闘とか大丈夫なのか?


【!!!警告!!!】


「え、何事!?」


 レーダー画面を表示させると先ほどの微弱な魔力に反応が現れる。


「待て! 動くな!」


「は? 何を馬鹿なことを言ってんだ! 欲しかったら自分で拾ってこいよ!」


 全く俺の言葉に聞く耳を持たない4人は、そのまま無造作に歩いてくる。

 バンダナ盗賊は警戒すらしていない。


 ばたんっ!!


「うわっ!?」


 そして彼らの歩く通路いっぱいに大きな穴が開くと、そのまま4人揃って落ちていった。


「え、ちょ、嘘だろ!?」


 驚く俺とデルは慌ててロープを越えて穴のところまで向かう。


「た、助けてくれ!」


 穴の大きさはダンジョンの一辺と同じ長さでおおよそ4mくらいで中を覗き込むと深さは2mは超えている程度だが、上から見ると意外と深く見えた。


「え、なにこれ……うわ、臭!?」


 だが穴の底には嫌な臭いのする液体で満たされており、しかも粘性があるらしくバンダナ盗賊がベトベトになりながら壁を登ろうとしても滑って登れずにいる。


「あの微弱な魔力は罠の反応だったのか。怪我はない?」


「う、うるっさい! こんなのなんの問題もない!」


 なんかずっと突っかかってくる俺様男は滑って上手く立ち上がれないらしく座り込んでいて、他もメンツも同様に座り込んだり四つん這いになっている。

 どう見ても問題だらけなんだけど。


「ちょっと待ってろ! 今からそっちに戻るから!」


「いや無理しなくても……って危ないっ!」


 端によって壁伝いに立ち上がって、手を伸ばすがギリギリ手が届かず、そこから無理矢理跳び上がってなんとか手をかけたが、ヌルヌルの手はあっさりと滑らせてそのまま再度落ちていく。


「うわっ、うわああ!」


「ちょ、こ、こらぁ!」


 穴に再度落ちた俺様男はなんとか手を振り回して姿勢を保とうとしたが、結局足を滑らせてそのまま倒れ込むが狙ってなのか女戦士の胸元に顔をダイブした。


 ごんっ!


「痛ってぇ……」


 そりゃそうだろ。彼女はちゃんとした鎧を身に纏っているので柔らかいわけがない。


「は、離れなさいよ!」


「わ、分かってるんだが、なんか滑って上手く……」


「こ、こら、何処触ってんの!」


 嫌がる女戦士に俺様男はラッキースケベを装っているが、どうも触りまくっているようにも見える。


「魔法ぶっこんでもいい?」


「止めなさいって、そんなことしたら穴の中の人全員が黒焦げになるでしょ」


 よほど俺様男が嫌いなのだろう。イラつくデルが恐ろしいことを言い出す。


「お、お前いい加減に……うわぁ!!」


 いつまでも離れないので止めに入ろうとする魔術師だったが、同様に脚を取られて女性の大事な部分に滑り込んだ。


「ちょ、こらぁ! あなたまで何してんのよ!」


「す、済まない……」


 申し訳なさそうに謝る魔術師。


「やっぱ燃やしていい?」


「だから物騒なことを言うなって」


 デルの沸点が上がりきる前に何とかしないと。


「色々と大変な事になってるけど大丈夫?」


「あ、うん、大丈夫……じゃないけど、なんとか。あのやっぱり助けてくれないかな?」


 女戦士がばつが悪そうに助けを求めてきた。


「だから言ったのに、ちょっと待ってて」


 一応他に余計な反応がないか再度周りをサーチしてみるが、魔力的な反応も機械的な反応もない。

 地上と違いダンジョン内はサーチの効果がいまいちで警告が遅かったり罠反応もその都度掛け直さないと分からないみたいだった。今後は気をつけないといけないな。


 とりあえずこの場は大丈夫そうなので、万能雑嚢からロープを取り出す。

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