トロル再会
トロル再会
『ワレ等のコドモよ!』
巨大トロルは魔法をかけられて眠っている子供トロルの元に辿り着くと、抱え上げようとするがロープで固定していたため乱暴に引きちぎって荷馬車を半壊してしまう。
デルとアティウラは一足早く到着しているが、俺を待って臨戦状態のまま見ていた。
「はぁはぁ……くそっ、巨体のくせにえらく脚が速いな。はぁはぁ……って、なに荷馬車を壊してんだよ……はぁはぁ」
『キサマぁ!』
歯を剥き出しにして俺に向かって吠える巨大トロル。
うおう!? さすがにマジで怖かったが、下手に怖がると向こうはそこに付け込んでくる可能性が高いので必死になって平静を装う。
「お、落ち着けっ、暴れるから魔法で眠らせているだけだ。時間が経てば自然に目を覚ます」
どんなに大きくなってもそこはトロルだった。言葉さえ通じれば簡単にこちら話を聞き入れる。
『……本当カ?』
「起きていると俺達が喰われるから眠らせていたんだよ。こっちも扱いに困っているからそのまま持って帰ってくれ」
俺の提案にトロルは何も言わないでこちらを見ているだけだった。
『いいノか……』
色々と考えた結果なのだろうか。最終的に出た言葉がそれだった。
「構わないよ。二度と人里に降りてこないのならね」
『このコドモはワレ等にとって、数十年ブリに生まれたオンナノコ……』
どうやらトロルも日本と同じく少子化に悩んでいるらしい。
トロル達には申し訳ないが俺には全く女の子には見えないけどね。
「それは幸運だったな。人里に降りてきたトロルがたまたま倒されずに眠らされていたなんて」
『オマエ達がさらったンじゃないノカ?』
「人間がトロルの子供をさらって何をするっていうんだよ。どんな種族でも子供は大事なものだろ。だから出来ればこのまま穏便に山に帰ってくれないか?」
『………………』
グルグルグルと低い音をたてながら俺達を見下ろしている巨大トロル。
『……分かった。小さきモノよ……カンシャする』
え……!? トロルに感謝の気持ちとかあるのか。大変失礼ながらその様な感情を持ち合わせているとは思ってもいなかった。
さすがに成長しきったトロルはそれなりの知性があるらしい。
いや、らしいとかどんだけ上から目線だよ。
本気になれば俺なんて人差し指一つで潰されてもおかしくないってのに。
巨大トロルは眠っている子供を抱え上げると肩に乗せてゆっくりと森の中へと戻って行くのだった。
「……ふう、いやあ手に汗がびっしょりだよ」
巨体が見えなくなるまで俺達は何時気が変わるか分からないのでずっと身構えていた。
だが、サーチでも戻ってくる様子がないのを確認したあと安堵のため息をついた。
「はい。わたくしも背中辺りが凄いことになってます」
俺達は緊張感から解き放たれて気を許してしまった。
そこにまだ敵が残っていたにもかかわらず……。
「今だっ!」
「なに!?」
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