卿御洲はもう限界だった

卿御洲はもう限界だった

 ど、どうしてこうなった?


 昨夜は興奮から眠りが浅く、日が上がる前から勇んでアマゾネスがいるキャンプに向かった……はずだった……。


「いいか! お前達の命はこのお方の気持ち一つだからな!」


「命が惜しければ、食糧、金品、全て差し出せ!」


 魔物に囲まれているのは普通の人間達だった。アマゾネスどころか亜人すら1人も居ない。

 ここはアマゾネスのキャンプだと知らされていたはずなのに、何がどうしてこうなったのかと混乱していた。


 メイド服を着た美少女も美女もおらず、ただただ素朴な人間の農民ばかりだった。


 しかもこんな方法ではなく普通に食糧を分けてもらうはずが、全身を甲冑で固めた3人の戦士が問答無用で攻撃をしてきたため、それを見たノールとオークが彼を護ろうと応戦したら興奮した魔物達が暴れ回り始め収拾が付かなくなった。


 3人の騎士をボコボコにしたことで、村人達が降参して一カ所に集めるまでは出来たが、その後どうして良いか分からず困っていた。


「ちょ! こら! 噛むな!」


 いきなり攻撃を加えてきた3人の騎士は、ボコボコにしたはずだが未だに話す元気が残っている。今は子トロルがガジガジと囓っているがよほど鎧が固いらしく全く噛み切れない。


 いきなり彼らが攻撃してくるからこうなったので、トロルに喰われようとも構わないので止めるつもりもない。


「良いか! このお方はケ偉大なるイオス様なるぞ!」


 オークとノールが集められた村人相手に吠えていた。


「えーっと、それでどうするんですかい?」


「予定通り食糧や金品の集めますか?」


「え? あ……」


 卿御洲が顔を上げると、怯えている村人達の顔が目に入った。

 彼は別に怖がらせるつもりはなかった。ただ亜人のメイドさんをテイムしたいだけだった。


 たしかに森の中の味気ない食事に飽きて何かしらの食材を分けてもらいたかったけど、何がどうして強奪に変わったんだろう。


「えっと、しょ、食糧……」


「へい、そうですね! おい食糧を全て出しやがれ!」


「え!? い、いや……」


「おらぁ! てめえらまずは食糧をよこせ!」


 二匹の声はよく通り、彼らを怖がらせるには十分だった。


「ら、乱暴は……よくないよ」


「おっと、すいやせんつい……」


 オークが卿御洲の制止に謝った。


「あっちに獣人も居るぞ!」


 何かに気付いたノールが指を差した。


「え、獣人?」


 獣人てもしかしてケモミミ!? そ、そうか、ケモミミ美少女なら、それも有り! と卿御洲は少し興奮気味に銃を懐から取り出すのだった。

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