女戦士族<Ⅱ>
「そういえばどうして単体で行動しているの?」
部族単位で傭兵集団として渡り歩いているって書いてあったが、見る限りアティウラは単体で動いているように思える。
「少し事情があって……」
まあ、聞くようなことじゃなかったな。一人で行動しているのはそれなりの理由があって当たり前だった。
「ごめんね、余計なこと聞いちゃって……、パーティは組まないの?」
話題を変えるつもりがそこにも事情があるらしくアティウラは表情こそ変わらないが、話しづらそうに言葉を詰めてしまう。
「あ、ごめん、無理に話さなくてもいいから」
「その……私はパーティに不和を生じさせてしまう」
ん、それはどういうこと?
「私もよく分からないんだけど……その、どうも人間の男性が……その……」
話し方から何か性的な雰囲気を感じた。
そういえば彼女たちは雌型のみって書いてあったが、もしかしてそこが問題なのだろうか。
「男なら誰とでもするって……勘違いされているみたいで」
あー……、全て分かった。美的感覚が俺とこの星の人間にずれがないのなら、これだけの美人がパーティに入ってきてしかもエッチして構わないと思ったらどうなるか。
言い寄ってきたならまだしも勝手な勘違いで奪い合い。そして同性からのバッシング、彼女に非はないのに、勝手にサークルクラッシャーみたいな……パーティクラッシャーになってしまうのだろう。
「軋轢で恨まれるなら、ソロの方が楽かなって……」
「余計なことを聞いたみたいでごめんね」
アティウラは気にしないでと少し困ったような笑顔で言う。
「ううん」
何故か頭を撫でてくるアティウラ。
どうも彼女と俺の関係は、姉と弟のようになっているようだった。
これだけの美人にそういう気持ちになるのは男として良く分かるが、自分に気があるって勝手にそう思っちゃうものなのか。
それとも“亜人”になら好きにしても良いって考えでもあるんだろうか。
普通の冒険者が勝てる相手とは思えないけどそんなのとパーティを組んでも、彼女だって落ち着かないだろう。
さっき俺が肩を貸すときとか少し躊躇っていたのは“亜人”であることに少し起因していたのかも。
「……そろそろ出発しよう」
「え、身体の方は大丈夫なの?」
「あまりのんびりもしていられないし」
そう言ってほんの少しだけ微笑むと彼女は立ち上がった。
まじか。さっきまでまともに歩けないほどの筋肉痛だったのに、そこまで回復しているのかよ。
「……うわ?」
不意にアティウラが背後から抱きついてきた。
「ごめん……やっぱりまだ脚が……」
アティウラの両腕は俺の肩の上を通して軽く巻き付くような形だった。
そうするとどうなるか……圧倒的な存在感を感じさせるものが俺の背中に当たることになる。もちろん全く柔らかくなくて固いんだけどね。
「無理しなくて良いよ」
「優しいんだね」
なんか頭撫でられているんだけど……。
もう完全に年下扱い……いや弟扱いになっていた。
ったく、本当はこっちの方が年上なんだろうけど……とはいえ男だったら一度はこんな美人のお姉ちゃんが欲しいって思うもの。
アティウラがそうしたいのであれば、しばらくの間付き合っておこう。
「でも……固いんだよなぁ」
「私ってゴツゴツしてるの?」
少し焦ったような声で回していた腕の固さを確かめ始めた。
「いや腕とか柔らかいけど胸は凄く硬い」
「胸? も、もう……ませた子」
これくらいの男子ならむしろそっち方面は真っ只中だと思うのだが。
「そういうのあまり感心しない」
全裸を恥ずかしげもなく見せていた人がいうセリフなのだろうか。
いやだから誤解するヤツが出てくるのか。なんかナチュラルにパーティークラッシュさせているのかもしれない。
「じゃあ進むよ」
「うん」
感心しないとか言った彼女だが、結局離れず俺に寄りかかって進むのだった。
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