ドームの復活

ドームの復活

 羽のない輸送機のような建物からドーム内に出ると、族長は仁王立ちになって立った。


「さてまずは……そうだな、とにかくドームを明るくするのが最初だな」


 族長の紋様が白く光り始めると手を上に突き出した。


「“サンライト”!」


「うわ! 眩し……」


 それまで薄暗かったドーム内がいきなり昼間のよう明るくなった。


「妾の力では最低限度しか出来んかったが、これが本来の光量で全く違うじゃろ」


 いきなり明るくなったことでドーム内の人達も騒ぎ始めた。

 それまでよく見なかったドームの全貌がよく見えるようになる。


「なるほど……」


 よく見えるようになって分かったが、ドームの壁や天井の一部に小さな亀裂がいくつも出来ているのが分かった。


「あそこから噴出してるのか」


「そうじゃ……ならば次はあれを補修するとしよう。“ストンウォール”!」


 吹き出し口と見られる亀裂に石の壁が隙間を埋めるように現れた。

 出現した壁は本来の壁と癒着して完全に穴が埋まる。


「おお、なかなか凄えな」


「そうじゃろ、まあ取り急ぎで見た目は悪いが、これでガスは防げるじゃろ」


 その後、族長は倒壊の可能性のある場所も壁や柱の魔法で補強をしていく。

 なかなか面白い光景だった。壁や柱を創造する魔法ではなく、特定の素材を変形させて柱や壁にする魔法で、そのため変形させても形はずっと変わらない。

 魔術としてはかなりレアな分類らしい。


「これが出来ればどれだけ楽じゃったか……、勇者殿にはやはり他の方法で感謝せねばのう」


 よほど嬉しいのか。族長の紋様が薄らと桃色になっていた。


「よし、こっちは一通り終わったか。後は入口じゃの」


 入口に行くと石像にMPを注入して動かし始めた。


「これ全部ゴーレムだったのか」


「そうじゃ、じゃが妾では起動させるためのMPが足りなくてのう……明日はこいつらを使って外壁の補修をしよう」


 族長はさらにポーションと魔法を併用して傷病者の治療も行った。

 MPがこれだけあれば、出し惜しみなくいけるとのこと。


「さすがに聖職者殿の奇跡には遠く及ばぬが、それでも治療が出来るだけありがたい」


 そして全てが終わる頃には外は夜になっていた。

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